20000打企画小説
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「‥‥‥あの丸まってるの‥ユウだよな?」
フィーロが目の前の光景に目を細める。
四人掛けのテーブルの片側、二人分のソファーに何かいる。
近付くにつれて正体は分かったものの、背もたれに体を向け丸くなり髪で隠れて顔も見えない。
「何つーか‥」
「負のオーラが見えるような‥」
フィーロと顔を見合わせていると、後ろからマイザーさんに呼ばれ三人肩を寄せた。
「明日、花火が上がるでしょう?」
「ああ‥毎年西でやる花火大会ですか」
「ガキの頃に良くラックとクレアの三人で行ったよな」
頷く私たちに、マイザーさんはちらりとユウに視線をやる。
「実は‥ロニーが連れて行ってやると約束したそうなんですが、仕事が入ってしまって」
「あー‥」
「拗ねてしまった、と‥」
聞けばユウは大層楽しみにしていたそうで、花火の話を聞いていた時の瞳の輝きはそれは眩しかったらしい。
「ラックを誘うっていう発想はなかったのか?」
「多分、一昨日今週は夜遅くなると言っていたので‥」
私は頭の中でスケジュールを組み直し、ぴくりとも動かないユウに苦笑した。
席に近づきユウの頭に手を乗せる。
「ユウ」
「‥‥‥‥ん」
「花火、見に行きましょう」
もぞもぞと顔が現れ黒い瞳がじっと私を見上げている。
「‥お仕事は?」
「大丈夫、終わらせます」
「、ほんとに?いいの?」
起き上がったユウが食い付き気味に私の袖を掴む。
頷くと彼女はとびきりの笑顔を浮かべ、振り返ると二人が私に拍手を向けていた。
「むっ‥」
今日はさすがにすごい人だ。
埋もれそうになっているユウの肩を抱いて、人波から庇いながら路地を曲がる。
「あれ‥どこ行くの?」
道を外れたことに不思議そうに見上げてくるユウに、私は人差し指を口元に当てた。
ひとつのビルに入り、入り口で一人の男に声をかける。
「坊!お久しぶりですなぁ!昨日お電話頂いた時は驚きましたよ。どうぞご遠慮なく」
「急にすみませんでした、ありがとうございます」
ユウが慌てて頭を下げ、二人でエレベーターに乗り込む。
階が上がるにつれてつい幼い頃を思い出して、笑みが零してしまった私にユウが首を傾げた。
「暗いので気を付けてください」
エレベーターを降りて扉を開くと明かりは月明かりのみ。
しかし時間が経っているとはいえ私には馴染みの場所であり、迷うことはない。
ユウには厳しいであろう段差を下りて、困惑している彼女に両手を差し伸べる。
「大丈夫、ちゃんと受け止めます。おいで」
怖ず怖ずと重なった手を支えに彼女を受け止め、下ろしたところで上がった花火にユウが目を輝かせた。
「始まってしまいましたね」
「‥すごい!綺麗!」
タンクにかかる鉄階段に腰を下ろす。ユウは花火に夢中のようで、花火に照らされた表情はイキイキしている。
思わず笑ってしまってから、不思議そうに振り返ったユウの手を取り引き寄せた。
「ひゃ、にゃ、ラックさ‥!?」
「ユウの席はここです。服が汚れてしまいますから」
腹部に腕を回して寄りかからせるように膝に乗せる。
恥ずかしいらしいユウの頬は花火のおかげで紅く染め上がっているのがよく分かった。
「ここは幼い頃フィーロたちと見つけた場所なんです。建物にも人にも邪魔されない、絶好のポイントでしょう?」
「‥じゃあ、今私は小さい頃のラックさんと同じ景色を見てるってことだね」
嬉しそうに見上げてくるユウ。
色とりどりの花火が次々に打ち上がる。それは懐かしくもあり、同時に初めての感覚でもあった。
「‥‥今まで見た花火の中で、今日が一番綺麗ですね」
「、そうなの?じゃあ私ラッキーだね」
一際大きな花火が上がる。それに比例するような音に、私は彼女の耳に口を寄せた。
「ユウと一緒に見るからですよ」
ビクリと肩を竦めたユウは、だんだんと小さくなっていく。
そんな様子が可愛くて、私は耐えきれずに笑った。
奏でる記憶
(ロニーさん落ち込んでません‥?)
(‥ユウが口を聞いてくれないらしいですよ)
((ラックこっちも何とかしてくれ‥!))
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