5000打企画小説
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「残念、ここはeではなくaです。あとここ、wが抜けてます」
ある休みの日の午後、私は英語の勉強に使うノートを膝に乗せてうなだれた。
ソファーに体育座りした状態で、パタパタと足を動かす。
「うー‥難しい‥」
「ですが最初より間違わなくなりましたね」
隣に座るラックさんは小さい子を褒めるように私の頭を撫でて、少し休憩しましょうか、とソファーを立ち上がった。
戻ってきたラックさんからカップを受け取ってふうっと息を吐く。
一口飲むと舌がびりっとなって、慌ててカップを離した。
「火傷した‥」
涙目になりながら舌を出して空気に触れさせる。
私は猫舌だから気を付けてたのに‥
「大丈夫ですか?」
すっと差し込まれた指が耳を包むように顔に触れて、ラックさんの方を向かされた。
「ああ‥少し赤くなってますね」
「わ、わっ」
近い‥!
離れようとしたら力が強められて動けず、私はそっとラックさんを見上げる。
「あ、のっ」
「どうしました?‥‥耳まで真っ赤になってますよ」
からかうように声を低くして、私の髪を耳にかけるラックさん。
私はじたばたと暴れて、なんとかその腕から脱出した。
ラックさんと距離を取るように離れて座ると、ラックさんは小さく笑って何かを取り出す。
「そういえば‥昨日エニスさんに頂いたんですが食べますか?」
袋から取り出したのは一口大のチョコ。
一粒取って見せるそれに私は目を輝かせて、はっとラックさんを見る。
「いらないんですか?」
なら仕方ありません、と食べようとしたラックさんに、私は慌ててラックさんの手を取ってチョコをはむっと口に入れた。
ふわりとチョコの甘さが広がって、私は幸せに目を細める。
「、もういっこ」
見上げたらさっきの体勢のまま固まっているラックさん。
私が首を傾げると、ラックさんはぽつりと言葉を漏らした。
「‥‥‥無防備にも程があります」
「?」
「まさか他の男にもこんなことしてませんよね?」
こんなこと?
益々首を傾げる私に、ラックさんは眉を寄せて大きなため息をつく。
「例えば‥」
腕を取られたと思うとそのまま背もたれに押し付けられて、視界に影が降った。
ぐるりと体を反転させたラックさんは私の横に膝をついていて。
私は何が起きたのか分からず、状況を理解するのに時間がかかった。
「‥こうされても、文句は言えないってことですよ」
「‥!!」
一気に頬に熱が集まるのを感じながら、私は掴まれている腕に力を入れてみる。
当然力に適うはずもなく、ラックさんの腕はびくともしなかった。
「それで?私の質問への答えは?」
ぎゅっと目を瞑って私は思いっきり首を振る。
「だって、あのっ、ラックさんだったから‥無意識で‥‥ご、ごめんなさい」
怖ず怖ずと見上げるとまた驚いた顔をしていたラックさんは。
「‥‥無意識、ですか」
「、あのっ」
「ユウ」
ギシッとソファーが軋む。
ラックさんの体が近付いてきたと思うと、低い声が耳に触れた。
「‥私も、男ですよ?」
「!!」
真っ赤になって固まっている私に笑いながら、何事もなかったかのように隣に腰を下ろすラックさん。
カップに口を付けながら私を見たラックさんはもう一粒チョコを口元に差し出した。
「どうぞ」
恐る恐るチョコを食べると、また笑われてしまって。
「本当に可愛いですね、ユウは」
からかわれたと気付いた時には既にいつものラックさんに戻っていて、私はふてくされたようにカップに口を付けた。
「‥‥ラックさんのいじめっこ」
「そうですか?初めて言われました」
「今日ごはん作ってあげないっ」
「おや、それは困りましたね」
触れていた手首はじんじんと熱く、真っ赤になっているであろう耳は髪で隠す。
だけどきっと。ラックさんは私が真っ赤になっていることだって分かっているんだろう。
曖昧な日曜日に
(ユウ、顔赤くないですか?)
(きっ、気のせいです‥)
(耳も真っ赤ですよ?)
(っ‥‥気のせいなのーっ!)
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