1932 のみすぎちゅうい
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タオルを被ったままソファーの背もたれに頭を預けているラックさんの前に紅茶を置く。
濡れた髪からシャツに水滴が落ちて、それでも微動だにしないラックさんに苦笑した。
「二日酔いまだ続いてる?」
「いえ、もうすっかり。昨夜のことを思い出そうとしてたんですが‥無理そうなので諦めます」
ソファーに膝をついてラックさんの横に座りながら、身を乗り出して被っていたタオルで髪を掬う。
「お酒飲んでる時ってどんなお話してるの?」
「そうですね‥その時によって色々ですよ。私たちの場合穏やかじゃない話が多いですが」
「‥何となく分かるような」
思わず髪を拭っていた手を止めると、するりとタオルが手から抜かれた。
「もちろん陽気な会話も多いですよ。あのメンバーですからね」
「ふふ、それも想像できるかも」
「まあ昨夜は‥ある意味地獄でしたが」
首を傾げれば、ラックさんは紅茶を手にどこか遠い目をして湯気を眺める。
「彼らのユウ自慢から始まり、誰が一番懐かれているかという話になったことで矛先は私に向かい気が付いたら家でした」
「‥‥‥‥」
それは、何て言うか、申し訳ない‥
「原因、私‥?」
おずおずとラックさんを見上げれば、髪を梳いて頬が包まれる。
「私が‥ユウを独り占めしているのが悪いのでしょうね」
頬に熱が上がる。擦り寄るようにして頬を寄せれば、目尻が優しく撫でられた。
ぺたりとくっついて背中でシャツを握ると、頭を撫でてくれるラックさんを見上げる。
「私も‥ラックさん独り占めする」
「どうぞ、存分に」
ギューっと腕に力を込めれば抱き締め返してくれるからキュンとして。
ラックさんの胸の中はすごく落ち着くけど、何度こうして抱き締められてもドキドキする。
「‥早いですね」
「え?」
「鼓動が」
思っていたことを指摘されて熱が走る。そんな私に笑ったラックさんが不意に私の顎を掬った。
「‥キス、しても?」
「い、いつも聞いたりしないのに」
「貴女のその顔が見たくて。それで、返事は?」
断られないって分かってるくせに、その質問はずるい。なら私にだって考えがあるんだからね!
「‥‥だめ」
「だめ?」
「う、ん。だめったらだめっ」
「そうですか‥それは残念」
あれ?結構すぐに引き下がって――
「ん‥っ!?」
押し付けられ、ゆっくり離れた唇が弧を描く。
唖然とする私に楽しそうに笑ったラックさんは顎に手を添えたまま、鼻先が触れそうな距離で声を落とした。
「では‥奪うまでです」
「なっ――んんっ‥!」
抗議も飲み込まれ抵抗も虚しく入り込んできた舌に翻弄される。
本当に嫌だったわけじゃないけど‥‥何か悔しい!
「ふ‥‥っ~~んぅ‥!」
毎回思うことだけれど、一体ラックさんの肺活量どうなってるの。
私が苦しいと訴えなければいつ離されるのか‥考えるだけで恐ろしい。
「‥‥ラックさんのばか」
「ユウが素直じゃないからですよ?」
「ラックさんがいじわる言うからだよっ」
真っ赤になってぽすぽすとラックさんの胸を叩く私。
それを受け止めながらも反省の色がまったく見られない彼。
それでも数分後には二人でのほほんと紅茶を飲んでいる、そんな休日。
のみすぎちゅうい!
(‥‥何?)
(ラックさんいじめるなら、もうアルヴェアーレには来ません!)
(悪かった)
(もうしねぇからよ)
(怒るなよぉ、な?)
(駄目な男たちだねぇ‥)
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