02.少女は迫る気配を無意識に感じ取る
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「もしかして‥昨日見てたんですか?」
壁一面の本棚に所狭しと本が並べられ、ベッドまであるこの部屋はラックさんしか滅多に使わないらしい。
ベッドもしばらく使われていないのか、資料の束やら本が置かれ本来の役目を失っていた。
テーブルにカップが置かれる音を背に本棚を見上げていた私は、その問いにぴくりと肩を跳ねさせる。
そっと振り返ると、ラックさんが呆れたようにふっと息を吐いた。
「それで不安になったと‥‥ユウの中で私はそんなに甲斐性なしなんですか?」
「違っ‥そうじゃなくて‥」
俯く私に、ラックさんの足音が近づき影を降らせる。
「ラックさんはモテるんだよ。外国の人は皆積極的だし、私なんかより大人っぽくて綺麗な人いっぱいいるし‥」
恥ずかしい‥けど、止まらない。
「誰にもラックさんに触ってほしくないとか、いつかラックさん取られちゃうかもしれないとか、そんなこと考えてる自分が子供みたい、で‥」
尻つぼみに消えていく言葉をそのまま飲み込む。
伸びてきた手につられるように顔を上げると、額を小突かれて。
「み゙っ‥」
「馬鹿ですねぇ‥貴女は」
額を押さえながら涙目で見上げる。
ラックさんは小さく笑って、私の腕を取った。
「他の女性が近付いて来たとして‥私の意思は?貴女がどんなに不安がっても、私はユウを愛していて手放す気はありませんよ」
「‥でも」
「貴女はよく子供だと言いますが‥」
綺麗な瞳と視線が重なって逸らせない。
「私にはどんな女性より、女性らしく見えます」
顔に熱が集まっていく。
恥ずかしくなって目を伏せると、するりと頬が包まれて。
「ほらその顔‥キスしたくなる」
反対の手は私を挟むようにして本棚につき、逃げ場もない。
唇が触れそうな距離で、ラックさんの唇が弧を描いた。
「ユウからはキス‥してくれないんですか?」
「へっ‥!?」
もう少し、背伸びをすれば触れられる。
私は視線を巡らせて、きつく目を瞑って背伸びをした。
「‥よくできました」
「んっ‥」
一度離れた唇を強く押し付けられる。
角度を変えて交わされる深いキスは私の思考を奪って、息苦しさに口を開けた。
その隙間さえ塞ぐように重ねられては、頬を染めずにはいられない。
「今どんなに色っぽい表情をしているか‥気付いてますか?」
ぼんやりと霞んだ思考がその言葉を理解する前に、開いた隙間から舌が入り込んで。
初めての感覚に身を強ばらせると、まるで安心させるように髪を梳いて後頭部に手が回された。
「んぅ‥‥はっ‥あ‥」
顔が熱くて、それなのにラックさんの舌が一番熱くて、なんだかもうのぼせてしまいそうだ。
歯列をなぞり舌を絡め取られ、今までのキスとはまるで違う。
背中に回した手でギュッとスーツを掴む。
もう自分の力だけでは立っていられず、ラックさんの腕がなければ崩れてしまうだろう。
「‥可愛い」
ゆっくりと離された唇に、私は肩で息を繰り返す。
なのにラックさんはやっぱりけろりとしていて、それでも今は反撃できる力は残ってなくて。
すっかり腰が砕けて立っていられない私の背中をポンポンと叩きながら、ラックさんが笑っているのを私は見逃さなかった。
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