01.目覚めた少女は幸せを実感する
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ケイトさんへの手紙を出してから、お昼を食べてアルバイトに向かった。
「ユウちゃん、これ買い出しのメモ。よろしくね」
「はい」
材料が足りなくなり急遽買いに出ることになって、バタバタとお店を出る。
ビュウっと風が通り抜けて、体を震わせてマフラーに口元を埋めた。
「お、ユウちゃんいらっしゃい!マスターから電話はもらってるよ」
「急にすみません、ありがとうございます」
「お得意様だからね。はいこれ、少し重いけど」
買い物を済ませて小走りでお店への道を進んでいると、道路を挟んだ向かい側にラックさんを見つけた。
「あっ」
思わず漏れてしまった声に一度辺りを見回してから、弛む頬を抑えきれずに視線を戻す。
一週間の間に二度も街で偶然会うなんて初めてのことだ。
「あれ‥?」
誰か一緒にいる‥?
足を止め雑踏の中でその姿を見留る。
金髪の綺麗な女の人と向かい合って話しているその姿は絵になって、無意識に腕に抱く袋に力を入れた。
何か話していたかと思うと、女の人がラックさんの胸に体を寄せて。
「っ‥」
女の人の手が背中に回っていくのを最後に、私は逃げるようその場から去った。
‥いやだ、見ていられない
ラックさんを疑うとかそういう訳じゃなくて
誰かがラックさんに触れるのが嫌で、どうしようもなく心がざわついて‥
一瞬にして焼き付いてしまったあの光景が頭から離れず、私は息が切れるまで走ってお店に戻った。
「おかえり‥ってユウちゃん!?そんなに急いで帰って来なくても大丈夫だったのに‥」
「ぁ‥いえ、外が寒かったから、早く戻りたくて」
「ほっぺ真っ赤!こっち来て少し暖まってからおいで?」
シェリルさんが袋を持って、私は笑顔とお礼を返した。
その後いつものように仕事をしたけど、意識が集中しなくて話した内容はあまり覚えていない。
その日ラックさんは帰りが遅くて、私は先に眠っていたから顔を合わせることはなく。
‥本当は朝まで眠れなかったから、ラックさんが眠る前に私の頭を撫でたことには気付いていたけど。
今はなぜかそれさえも、私の心を曇らせた。
私は多分、この世界に来て一番最初に信頼したのがラックさんだったから‥
ラックさんは家族と同じくらいの存在で、尚且つ今は恋人で。
“家族のような存在”から“恋人”として傍にいてくれるラックさんが‥取られてしまったらって‥
そう思ったらどうしようもなく不安になって、忘れられなくなってしまった。
「(私にとってラックさんの存在が大きすぎるんだ‥)」
「‥ちゃん、ユウちゃん?」
「、はいっ!」
目の前にシェリルさんの顔があって後ろに飛び退く。
最近ラックさんは忙しいのか、今日の朝も顔を合わせることなく仕事に行って、私もアルバイトに来た。
心配そうに覗き込んでくるシェリルさんに大丈夫だと首を振って内心ため息をつく。
‥そして、偶然というのは重なるもので。
チリンとなったベルと共に一瞬冷たい空気が店内に入り込む。
「すみません、道をお尋ねしたいのですが‥」
長い金髪がサラリと揺れる。
顔を上げた先には、見間違うはずのない‥あの時の女の人が立っていた。
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