08.少女は自分の在り方を語る
名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
『さっきね、ケイトさんが来てそのままユウちゃんも一緒に帰ったよー』
『そうでしたか。キー兄、今年も帰れなかったね』
『去年の年末年始も仕事だったしな』
『‥‥‥』
ガンドールの事務所である地下。こちらでの会話は幾分穏やかだと小さく笑う。
フィルムを替えるように場面を切り替えると、闇の中で耳障りな悲鳴が届いた。
『さて、他に聞きたい事は?』
血の気が引き青ざめた顔をしているのは確かヘンリーとかいうDDに勤めている情報屋だ。
男をそうさせているのはクレア・スタンフィールド。見物対象としてはこいつはかなり面白い。
『は?ガンドールんとこの日本人の女?知ってるかってそりゃ‥ユウだろ?』
『そ、そうだ、し、知ってるのか!』
『まあ‥でもそれは俺の立場もあるから遠慮してくれ。じゃ、次は俺が質問する番だな』
『ま、待て!それは彼女はお前とも繋がりがあると‥』
『俺が知りたいのはある女に関する情報。それともう一つは‥』
クレアの一方的な性格は嫌いではない。対峙するとなれば別だろうが。
しかしヘンリーはユウに目を付けたか。抜け目のない男だ‥‥まあいい。
フィルムを入れ替える。威勢だけがいい怒声を発している男に無意識に眉間にシワが寄った。
『ロイの野郎、イブ・ジェノアードと一緒にいた少女ごとガンドールの事務所まで連れて行きました。そこで浚っちまおうかとも思ったんですが、事務所から出て来た女の車に乗ってそのまま縄張り外の一軒家に』
『このグズが!なんでガンドールの縄張りに入った時点でぶち殺さねぇんだ!そのイブと一緒にいた女の身元は』
『分かりません。レストランから出て来た所で姿を見ましたが、金髪の若い女でした。イブとそう変わらないかと。それと車に乗り込む前に事務所にも入っていたので関係者ではあるかと』
『チッ‥早急に調べろ!おい、死んだ三男の女はどうなってる!』
『はっ、事務所から出た気配はありません』
ルノラータの幹部、グスターヴォ・バジェッタ。奴ほど滑稽だと思う人間はなかなかにいない。
俺の推測から見て金髪の女はユウで間違いないわけだが‥まあいい。
プツリとフィルムが終わりを迎えたように暗闇だけが残される。
「ふむ‥ユウは無事らしいな」
再びドミノの牌を並べていく。
「ロニー、そこ曲がってますよ」
「‥‥お前もやったらどうだ」
「私はデザイン、指示出し担当ですから」
眼鏡を上げるマイザーに睨みを据えてから、指摘箇所を直す。
これからどうなって行くのか‥見ものだな。
ユウは関係のないところから気付けば事の中心に立っている。時には流れで、時には自分の足で。
今すでにユウは片足を踏み込んでいる状態だ。これからどうなるのか‥あいつはたまに予想外の動きを見せる。
「未来はこのドミノと一緒だ。少しの軌道の変化でいくつもの道標が開かれる。あいつがどう軌道を変化させるのか‥俺は楽しみで仕方ないのだがなマイザー」
これだからユウの観察は止められない。
クツクツと笑いを漏らせば、後ろから複数の声が聞こえた。
「ロニーは何を言ってるんだ?」
「ドミニスト並みの理論だねっ!」
「かっこつけてるだけですよ」
「‥‥‥マイザー」
とりあえず今は、未来は見ずに大人しく待っているとしよう。
***
.