07.少女はまた渦中へと引き寄せられる
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「は?‥‥金髪の少女?」
「ハイ。ジャズホールの裏口から出てきたそうデス」
DD新聞社、社長室。報告を行っていたニコラスの元に部下が訪れ、新たな情報を告げた。
「‥それは、」
「ふむ‥ユウ嬢かな」
ニコラスの予想と同じ答えが社長の口から紡がれる。
「ガンドール・ファミリーは抗争の真っ只中だからね。監視の目からのがれるには彼女を“アメリカ人”に変装させるのはいい考えだ」
「しかし‥あの彼が彼女にそんな危険なことを?」
「発案者はクレア・スタンフィールドだよ。きっとね」
クレア・スタンフィールドがどんな人間かニコラスは知らないが、社長の確信を持った声に納得する。
「ユウ嬢と言えば‥彼女もフライングプッシーフットの乗客だったそうだ」
「彼女もですか?」
ニコラスは黙り込み、不意に思ったことを口にした。
「彼女はいつも渦中にいますね」
「彼女に自覚はないと思うけどね。ユウ嬢にも話を聞きたいところだけど‥ガードが固いから」
確かに、とニコラスは苦笑する。
彼女に手を出せばガンドールとマルティージョの二つの組織を敵に回すようなものだ。
「それに俺もエレアンも彼女にかなり警戒されてますしね」
「まあ我々の正体を知って尚、あの身の上で警戒しない人間はいないだろうね」
ひとしきり笑うと、とにかく‥と社長が空気を引き締める。
「情報は刻一刻と変わる。今回の抗争がどうなるか、我々は見守るとしよう」
「はい」
「‥と、話しているところでお客様だ。ニコラスくん、しっかり頼むよ」
ニコラスが聞き返す間もなく、ノックが響き部下が顔を出す。
「ガンドールの皆さんガいらっしゃいまシタ」
「あ、ああ。では失礼――‥そうでした、社長。最後に一つだけ」
「うん」
「ヘンリーの奴、彼女の存在に興味を持ち始めてます」
当時別口の情報を追っていたヘンリーとユウがDDで出会うことはなかった。
そのためユウの存在に気付かずにいたのだが‥事件の情報を追えばニコラスの言う通り事件の渦中にいる彼女は自然と浮かび上がって来る。
「そうか‥分かった。行っていいよ」
「失礼します」
ヘンリーは仕事――情報に対して熱心が故に自分の欲に忠実な男だ。
誠実さを感じさせない、時には故意に情報を利用し人を危険に陥れる彼には困ったものである。
「ふむ‥」
一人になった部屋で、カチャリとカップの擦れる音が響く。
「いつも渦中に‥か。ユウ嬢もうちで働いてくれないかな?」
情報は刻一刻と変わる。
“ロイ・マードックが二人の少女を連れてレストランに入った”と新聞社に新たな情報がもたらされるのは、それから一時間程後のことである。
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