07.少女はまた渦中へと引き寄せられる
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「一度家に?一人でですか?」
「うん。着替えがもうなくなっちゃったから‥あとお兄ちゃんたちにお土産渡して来ようと思って。‥やっぱりだめ?」
思っていた通りいい顔はせず、眉を寄せているラックさん。
「今外に出るのは‥」
「ユウはボスの女って隠しておきたい割には目立ちすぎなんだよ」
後ろから聞こえた声に振り向けば戻って来たらしいクレアさんがドアに寄りかかっていた。
‥確かに、この辺で私の他に日本人の女の人なんて見かけないけれど。
「ルノラータの奴らに見られずに、シマから出られればいいんだろ?」
‥‥何か、嫌な予感がする。
じりじりと後ずされば、残像と共に伸びて来た腕に捕まった。
「ふぎゃっ‥」
再び脇に抱えられ、腹部の圧迫感に息を詰まらせる。
「‥まさか、」
「俺が担げば問題ないだろ」
上で会話が交わされる間も暴れてみたものの、手足が動くだけでびくともしない。
「これ嫌ですー‥」
ぶらりと手足を落としながら力なく抗議する。列車でのことを思い出すし、何よりも頭に血が上る。
「何だ、なら早く言えよ」
ぐるりと視界が回ったかと思えば今度は肩に担がれたらしい。
「‥もー!変わらないじゃないですかぁ‥」
お腹は苦しいままだし、視界が高くなっただけだ。
再びじたばたと手足を動かすと横からラックさんが地面に下ろしてくれた。
「適当なとこに置いてきてやるよ」
「‥まあ、それなら‥安全ではありますけど‥‥‥」
「嫌そうだなオイ」
じっと降る視線に首を傾げれば、ラックさんはため息をつく。
「ユウは何とも思ってないんですよね‥」
「? 運ばれ方はイヤだよ?せめておんぶとかがいいな‥」
「いえ、そういう問題では‥」
「俺に触らせるのが嫌なんだろ」
ラックさんを見れば、気まずそうに視線が逸らされる。
考えてみれば、私だってラックさんが女の人にベタベタ触られるのは嫌だ。
「じゃあ、うーん‥変装するとか?」
「変装、ですか?」
「‥ただの思い付きです」
言ってみただけ。パタパタと手を振れば、顎に手を置いていたクレアさんが指を鳴らした。
「いいな、それ」
「「‥はい?」」
「日本人の女って認識されてるなら、それ以外は監視から漏れるわけだ」
ちょっと待ってろ、とクレアさんがいなくなって15分。
「ほら、これ」
頭に被せられて驚いて手に取れば、金色の糸が指の間を流れる。
「もしかして買ってきたんですか!?」
「どうりで“ちょっと”と言うには待たせると思いましたよ‥」
被ってみろと促されて頭に乗せると、ラックさんが馴染ませるように髪を梳いてくれた。
視界に映る髪が金色で落ち着かない。
「でも、金髪に黒目って‥」
「別にそこまで見ないだろ」
まあ、そうかもしれないけど‥‥クレアさん、大ざっぱ‥
「文句あるのか?」
「い‥いひゃ‥!」
むにっと頬を摘まれ抵抗する私をやけにイキイキした表情で見下ろすクレアさん。
クレアさんって絶対いじめっ子だ‥!
「いじめすぎると嫌われますよ」
ラックさんの元に逃げ込むと苦笑しながら頬を撫でてくれる。
「ユウはいじめ甲斐があるからな」
「嬉しくない‥」
「まあとにかく、これなら大丈夫だろ。一人で行かせても」
ラックさんを見上げれば小さなため息の後、こくりと頷いてくれた。
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