01.目覚めた少女は幸せを実感する
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「‥‥っ」
本当にユウには参る。
あの様子からするに無意識なのだろうが‥潤んだ瞳であんな声を出されては堪らない。
あの来訪を告げるベルが救いに思えた。
一歩外に出ただけで冷たい空気が気管を通り白い息として吐き出される。
それが私の冷静さを取り戻させ、深いため息と共に髪を掻き上げた。
「‥‥何してるんですか?」
戻ればフィーロが顎に手を当てて真剣な顔でユウを凝視している。
ユウも理由は知らされていないのか、フィーロを見たり手元を見たりとそわそわ視線を巡らせていた。
「いや、考えてみたらユウと1歳しか違わないだろ?東洋人ってスゲェよな」
「はぁ‥凄いの意味がいまいち分かりませんが」
「だって想像してみろよ、18歳が皆こんななんだぞ?」
こんなってフィーロ‥
ユウはエニスさんと顔を見合わせ、自分の顔に触れている。
「あっ、でも私、日本でも幼く見られてた‥」
「そうなのか?」
「ん、2歳くらい」
なるほどそれなら初めて見た時低く見てしまったのも仕方ない。
「けどあれだよな。セーナさんとかも言ってたけど、ユウ前に比べて大人っぽくなったよな」
「本当っ?」
「おう、16か17には見える」
がっくりと肩を落としたユウにフィーロが笑う。
しかし本当に、最近ユウは“女性”の表情をするときがある。
私はその度に魅せられ、振り回されるのだ。
「ラックさんのおかげではないですか?女性は恋をすると綺麗になると、読んだ本に書いてありました」
「確かに良く言うよな」
「‥‥、」
ユウの頬が紅く染まっていく。居心地が悪そうに巡らせていた視線が合うと、ユウは慌てて目を伏せた。
「そういえばこれ、ケイト義姉さんから来てましたよ」
笑いを漏らしながら手紙を差し出す。
読んでいるユウを眺めて、フィーロが苦笑した。
「キースとラックは毎日顔合わせんのに手紙って。可笑しな話だよな」
「以前キー兄からケイト義姉さんからのメモをもらったことがあるんですが、銃弾が貫通して内容が分からなかったことがあって」
「ケイトさんは手紙にしたってことか」
ユウを眺めているとぱっと輝く表情に内容を尋ねる。
「泊まりにおいでって」
「それはいい。楽しんで来てください」
「“ラックと一緒に”って書いてあるよ?」
「‥‥え」
思わず頬が引きつる。決して嫌な訳ではないが‥あのキー兄の見守るような(鋭い)視線が苦手だ。
「‥イヤ?」
「いえ」
首を振って返事をユウに任せる。手紙を書くのが楽しいらしいユウは、用事がなくともケイト義姉さんに手紙を出していた。
「おなかすいた‥」
「食べにいきますか?」
「お、いいな」
「どこがいいでしょうか‥」
全員で席を立ち上着を羽織る。
最近ルノラータ・ファミリーの動きが活発化してきているがこのメンバーなら大丈夫だろう。
鍵を締めると待っていたユウに手を差し出すと、嬉しそうに小さな手が重なった。
***
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