03.走り出した列車で少女は怪物と出会う
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切符を持ってウロウロしていると、車掌の制服を着たおじいさんに声をかけられた。
「お困りですかな?」
「あの、どこから乗ったらいいのか分からなくて‥」
おじいさんはにっこり笑うと若い車掌さんを呼んで私の切符を預ける。
「彼がご案内します。いい旅を」
優しそうなおじいさんだ。私は笑顔でお礼を言って頭を下げた。
「荷物お預かりします」
「あ、ありがとうございます」
赤い髪をした若い車掌さんはにこっと笑って私の鞄を軽く持ち上げる。
着いて行くと、三等車輛ではなく二等車輛に通された。
「あの‥?」
間違ってませんか?と聞きながら顔を上げると、真っ直ぐ降る視線に首を傾げる。
「お連れ様はどちらに?もうすぐ発車時刻ですが‥」
完全な予約制だから乗客名簿で見ていたのだろう。私は少し寂しくなって視線を落とした。
「それが、乗れなくなってしまって‥」
「そうでしたか‥部屋はこちらで間違いありません。何かあれば声かけてくださいね」
私はお礼を返して、ドアの閉まる音を聞きながら部屋を見回した。
外と違って中は暖かい。廊下は肌寒いけど、ストールがあれば上着を着なくても大丈夫だろう。
「二等車輛‥」
装飾も部屋の作りもすごい豪華だ。
私は寝台車に乗るのは今回の旅行が初めてだし元がどういうものか知らないけど、豪華だということだけは分かる。
「すごい、ぴかぴか!」
中世の貴族にでもなったような気分で、無自覚にテンションが上がってしまった。
上着をハンガーにかけながらカーテンに触ってみたり、設置された引き出しを引いてみたり。
一通り見て回っているうちに列車が走り出して、私はソファーに腰かけながら外を眺めた。
「日本とは全然違うなぁ‥」
景色はもちろん、食べ物も人も。
慣れて来たと思っても私が知っているのはあの街だけで。
日本でもそうだったように、少し移動しただけで当然話し方も外観も変わってしまうのだ。
まだ列車は走り始めたばかり。
ニューヨークに着くのは明日だ。私は荷物の中から本を取り出して膝に置いた。
そういえば‥クレアさんってどんな人なんだろう?
さっきの人かとも思ったけど、ラックさんの話だと私のことは伝えてくれているはずだし。
もしあの人ならそう声をかけてくれただろうから、多分他の人なんだろう。
「私も特徴聞いておけばよかったな」
ふっと息をついて思案に耽る。
おじいさんも心配だし、早くラックさんに会いたいし、クレアさんがどんな人かも気になるし、予想外の一人旅もなんだか楽しくなってきたし。
私はくあっと一度欠伸を漏らしてから、本に視線を落とした。
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