03.走り出した列車で少女は怪物と出会う
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「落ち着いた?」
「‥‥はい」
シカゴユニオン駅に向かう車の中、別れ際号泣してしまうという醜態を晒した私は羞恥に身を縮めていた。
「ユウちゃんがそんなに馴染んでくれて私も嬉しいわ」
「誘ってくれてありがとうございました。すっごく楽しかったです」
本当に大切な思い出になった。
おじいさんとおばあさんの笑顔を思い浮かべて、ほっこりと胸が暖かくなる。
「そうだ、列車に乗ったら昨日の続き聞かせてもらうからね」
「えっ?」
「ラックさんとどこまでいったのって話」
その話は‥!昨日せっかく逃げ出したのに!
私が顔を真っ赤にするとシェリルさんは目に涙をためて大笑い。
拗ねたように視線を外に移した私の頭を撫でながらも、シェリルさんはしばらく名残で小さく体を震わせていた。
「シェリルさん、先に電話してきてもいいですか?」
駅に着いて、私はガンドールの事務所に電話をかけた。
『ユウ、旅行は楽しめましたか?』
久しぶり‥と言っても4日間だけど。聞こえてくる声に胸が高鳴る。
「うん、すっごく楽しかった!ラックさんは怪我とかしてない?」
『大丈夫ですよ。帰ってきたら沢山話を聞かせてください』
「うんっ。それでね、あと1時間くらいしたら列車に乗るから」
『確か‥ユウたちが乗るのは大陸横断鉄道フライングプッシーフットでしたよね?』
普通の列車とは違うらしい、とシェリルさんに聞いた。
『実は私たちの幼なじみがその車掌として乗り込むらしいんです。クレアと言うんですが、彼にもユウのことは話しておきましたから何かあれば‥』
「、男の人?」
車掌、彼。その言葉を聞く限りクレアさんというのは男の人らしい。
『少し変わった人ですが、まあ‥‥悪い人ではありませんから』
自分をしっかり持って話せば大丈夫だと付け加えられて、そんなに変わった人なのかと少し不安になった。
「、ラックさん」
『はい?』
「もう一回‥名前呼んで」
早く会いたい。さっきまで帰りたくないなんて思ってすらいたくせに、私は薄情なやつだ。
声を聴いたら早く会いたくてたまらなくなってしまった。
『ユウ』
「‥ん」
『愛してますよ、ユウ』
「そっ‥そこまで頼んでない~っ」
電話越しにクスクスと笑うのが分かって、またからかわれたのだと熱くなった頬を押さえる。
「‥‥帰ったらぎゅーってしてね」
『喜んで』
まだ笑っているラックさんに最後に一言残してから電話を切った。
緩んでしまう頬を両手で覆って、小さく首を振る。
「ラックさんと何話してたの?」
「へっ?」
「嬉しそうだし、ほら、ほっぺ赤くなってる」
「き、気のせいです!」
待っていてくれたシェリルさんに駆け寄り、私たちはホームに向かった。
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