02.少女は迫る気配を無意識に感じ取る
名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
「おかえりなさい」
「ただいま」
「‥‥‥」
玄関までお迎えに出ると、一緒に帰ってきたラックさんとキースさんが順に頭を撫でてくれる。
「ごはんできてるから、早く着替えてきてね」
キースさんって本当に無口だ。
だけど怖いと思ったのは最初だけで、今は何だか黙々とごはんを食べている姿が可愛くさえ見えてきて。
ラックさんとベルガさんの三人でトランプゲームをしている姿は、様になっていてかっこよかった。
「ユウ、見すぎですって」
じっとキースさんを見つめてしまっていることに気がついてはっとする。
「ユウさんのマイブームはキースの観察かしら」
二人にクスクスと笑われて失態に顔を赤らめる。
「ユウは観察好きですよね。初めは私も良く視線を感じました」
「うっ‥」
「でもこっちが見ると視線を逸らすので目は合わなくて」
「ふふ、ユウさんらしいわ」
俯いてもぐもぐとサラダを食べる。
自分のことを話されるのは恥ずかしい。‥けど、こんなに温かい食卓は久しぶりだ。
ラックさんとの食事はもちろん楽しくて幸せだけど、人数が増えるだけでこんなにも変わるんだと思った。
次の日の朝、起きるともうラックさんたちはいなくなっていて、昨日と同じようにケイトさんがバイト先まで送ってくれた。
「はい、着いたわよ」
車を止めたケイトさんに、私は一度開いた口を噤む。
不思議そうに首を傾げるケイトさんに、ずっと思っていたことを言ってみることにした。
「私‥今のままじゃだめなんじゃないかって思うんです」
「どうして?」
「‥いつも守ってもらってばっかりで、今もケイトさんや色んな人に迷惑かけちゃって」
もし、私が武術の心得でもあれば少しは変わったんじゃないかとか。
もっと大人だったら、一人でも大丈夫だって信じてもらえたかもしれないとか。
そんなことばかり考えてしまって‥そう告げると、ケイトさんはエンジンを止めた。
「私は迷惑だなんて思っていないし、何よりも‥これはラックの我が儘でしょう?」
「‥わがまま?」
それはもしかして、昨日ラックさんが言っていたことを指しているのだろうか。
ラックさんは私がお兄ちゃんの傍にいるほうが安全だと分かっていて、それでも手放したくないと言ってくれた。
自分が守るから傍にいてほしい、と。
「わがまま‥」
そっか、あれはわがままだったんだ。
客観的に見ればすぐに気付けるものだったのに、全然気付かなかった。
じんわりと愛おしさが湧く。
ラックさんのわがままは愛を感じて、つい嬉しさに頬を染めてしまう。
「キースも喜んでるのよ。ラックが我が儘を言える相手を見つけられて」
「でもっ、それでも‥」
守られていることには変わりない。
やっぱり護身術程度できた方がいいのかな‥?
悶々と考えながらもケイトさんと別れを告げて店内に入る。
今日はエニスさんが迎えに来てくれて、久しぶりに家に帰る日。
「ユウちゃん、何かいいことあった?」
そう思ったらうずうずして、顔に出ていたらしくジルさんに笑われてしまった。
.