02.少女は迫る気配を無意識に感じ取る
名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「‥‥‥」
勢い良く後ろを振り返る。
いつもと変わらない街をしばらくじっと見つめて、歩き始めながら首を傾げた。
何か‥視線を感じるような気がする。
数日前は途中でそんな感覚もなくなって気のせいだと思ってたけど、なんとなく‥このまま家に帰るのはいけないと思った。
まっすぐ行くはずの道を右に曲がり、そのままアルヴェアーレを目指す。
もしラックさん絡みなら、マルティージョ・ファミリーのシマに入ってしまえば多分大丈夫だから。
狙っている相手がそのシマにいる内はまだしも、他のシマに入ってしまえば手は出せないのだとお兄ちゃんに教えてもらったことがある。
マルティージョのシマに入ったとは言え早歩きで角を曲がると、出会い頭に人にぶつかってしまった。
「わっ‥」
「っと‥大丈夫ですか‥って、ユウ?」
声にはっとして顔を上げれば、驚いているマイザーさん。
「どうしたんですか?今日はロニーは外に出ていて‥」
「違うんですっ、その‥家に帰ろうとしたら、何か視線を感じて‥」
鋭い視線で辺りを見回したマイザーさんは私の背中に手を添えて中に促す。
「どうやらマルティージョのシマに入ってユウを追うのは止めたようですね」
ほっと息を吐く。
室内の暖かさもあって、冷たくなっていた指先が温かくなっていくのが分かった。
「いい判断でした。ですが今はまだ彷徨いている可能性があるので、しばらくここにいた方がいいですね」
小さく頷くと頭が撫でられる。
「あの‥ラックさんたちに伝えた方がいいんでしょうか‥?」
「そうですね‥連絡ついでに話してみては?」
マイザーさんに言われた通り電話を借りて連絡すると、少し考えるようにしてラックさんが言った。
『ユウにまで‥』
「、ラックさん?」
『実は今日問題が起きて‥帰れそうにないんです』
電話越しにラックさんの心配が伝わってくる。
「私、一人で大丈夫だよ?」
『駄目です。詳しいことは話せませんが‥今少し面倒なことになっているので』
一拍置いて、ラックさんは小さくすみませんと謝った。
「ううん‥じゃあ今日はお兄ちゃんに泊めてもらえるか頼んでみるね」
『‥‥‥‥はい』
ん?なんか間が長かったような‥
浮かんだ疑問も被せられる言葉に答えている間に忘れてしまった。
『明日アルヴェアーレに迎えに行きますから』
「ん‥‥怪我しないでね」
『ありがとうございます』
電話を切ってふっと息をつく。
‥ラックさん、少しピリピリしてた、かも。
ラックさんの言う“面倒なこと”は直接的な意味で危険を指すことが多い。
心配と共に、不意にあることが頭に浮かんだ。
「‥‥クリスマス、なんて場合じゃないよね」
私は首を振って、出て来たわがままを心に押し込める。
「ユウ来てるって?」
「あ、フィーロさん、エニスさん」
「ロニーさんに会いに来たんですか?」
「皆さんコーヒー入れましたよ。こちらで話してはどうです?」
少し雑談をしてから、皆お仕事に戻って行って。
マイザーさんのいる部屋で大人しく本を読みながら、お兄ちゃんの帰りを待った。
.