02.少女は無意識に人を魅了する
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「ユウ、できましたか?」
カーテンからそっと顔を出す私に、ラックさんが目を丸くして小さく笑う。
その後ろにはキースさんとベルガさんがいて、私は恐る恐るカーテンを引いた。
「変、ですか…?」
あのあと、元々の予定だった買い物に行くという話をしたら二人も一緒に来てくれると言って。
「いいえ、よく似合いますよ」
「おう、悪くねえな!」
「………」
続いて小さく頷くキースさんに、私は恥ずかしさに前髪に触れる。
「お客様、よくお似合いですわ!こちらもどうです?」
「お客様は綺麗な黒髪ですから、こちらも似合うのでは?」
「まあ、可愛い!」
途中からは店員さんが代わる代わる服を私に当てて、私は着せ替え人形になった気分。
「ありがとうございました」
着ていく一着を残して、あとは送ってもらうことになった。
「大丈夫ですか?」
苦笑しながら私を覗き込むラックさんに、私は少し間を置いて頷く。
買い物でこんなに疲れたの初めて‥
だけど、普段は着れないヨーロッパの服はお人形さんの服みたいに可愛くて、胸が躍った。
前を歩く三人を追いかけてラックさんの服を掴むと、ラックさんにつられて二人も振り返る。
「、ありがとうございました」
嬉しくて自然と顔が綻ぶ。へらりと笑った私に三人は顔を見合わせて。
「どういたしまして」
ベルガさんが咳払いをしながら顔を逸らして、キースさんがほんの少し目を細めて笑う。
ラックさんは嬉しそうに笑みを浮かべて、私の頭を撫でた。
どうしてラックさんが嬉しそうだったのかは分からなかったけど。
私はその三人に、ただ魅入った。
――私は、この温かさを知ってる
これは、家族の温かさだ
この三人の間には切れない絆があって‥そこに私を受け入れようとしてくれてる
まだ会ったばかりだけど、恐いと思ったベルガさんは(まだ恐いけど)悪い人ではなさそうだし、
キースさんは無口だけど、私やラックさんたちを見る目はすごく優しい。
「どうしたんです?行きますよ」
キースさんとラックさんの間が少し空けられて、私はそこに駆け寄った。
「はい!」
―――このときの私はまだ、
マフィアというものがどういう存在なのか分かっていなかった
彼らは“ガンドールファミリーというマフィア”の“ボス”で
私の知る日常とはかけ離れた場所にいるのだということに‥
***
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