09.物語は少女を終末へと誘う
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「少しでも具合が悪くなったら必ず来てください」
そう念を押されて私は病院を後にした。
念のためもう一日入院するように言われたものの、恐る恐る帰りたいと言ってみれば。
一通り診察した後、そんな条件付きで許可が出た。
「よかったですね、退院できて」
「病院に一人で残るのやだ‥」
「そんな理由かよ!」
運転しているラックさんが笑う。
助手席に座るフィーロさんが肩越しに振り返り、たまにラックさんも混じって車内は賑やかで。
車が止まって視線を移した私は、思わず首を傾げた。
「ここ‥?」
私の記憶が正しければ、ここは。
「、シェリルさんのお家?」
降りるように言われて外からアパートを見上げていれば、そのうち勢いよくドアが開く。
「ユウちゃん!」
飛び出て来たシェリルさんにぎゅうっと抱きしめられて、私は怖ず怖ずと背中に手を回した。
「よかった‥!」
「シェリルさん‥」
「‥‥‥ん、充電完了!時間ないのよね。ラックさん、30分待って!」
ラックさんが返事の変わりに手を上げる。意味が分からず視線を行き来していた私は、シェリルさんに引きずられるように部屋に入れられた。
「あの、待っ‥シェリルさん?」
「まず服脱いで!」
「へっ!?」
そんなこんなであれこれ指示され、今は椅子に座らされてされるがまま。
私の質問には答えてくれる気はないらしく、ことごとく流されてしまった。
「24分!ベストタイム‥!」
紺色の生地に黒のレースのあしらわれたドレスを着せられ、化粧や髪まで施され。
最後に腰にある大きなリボンを直して、鏡越しに大きく頷いた。
「完成!ほらほら、どうですか?」
再び背中を押されて車まで逆戻り。
私を前に差し出したシェリルさんは、満足げに三人に視線をやった。
「おーっ」
「ユウさん綺麗‥」
「‥‥‥‥‥‥」
‥‥ラックさん、無反応。
ほんの少し落ち込みながら一度視線を下げると、バシッと何か聞こえた。
「?」
「‥‥ユウ、とても綺麗ですよ」
顔を上げた時には微笑むラックさんと目があって、私は嬉しさにはにかむ。
さっきより髪の毛が少し乱れたような気がしたけど、すぐに掻き上げられてよく分からなかった。
「ユウちゃん、これあとで呼んでね」
「あとでですか?」
「うん。じゃあ、楽しんできて?」
ふわりと微笑み離れたシェリルさんが手を振る。
小さくなるシェリルさんに手を振り返して、皆に視線を向けても笑うだけ。
諦めて背もたれに寄りかかると、バックミラー越しに一瞬だけラックさんと目が合った。
「ギリギリ間に合いますね」
「だな。向こうは大丈夫か?」
「セーナさんが今日はいっそお店閉めようかって言ってましたよ」
「ははっ、まじかよ」
三人の会話に首を傾げ、次に車が止まった場所にただ瞬きを繰り返す。
「ユウ、あとでな!」
先に二人が降り、車を奥に駐車。
素早くドアを開けてくれたラックさんにの手を取って車を降りた。
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