09.物語は少女を終末へと誘う
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目蓋がぴくりと動く。重くてなかなか上がらないそれに、意識が浮上していくのを感じながら悪戦苦闘。
ゆっくりと目を開けると写った天井は見覚えのないもので、独特な匂いからここは病院なのだろうと悟った。
体を起こすと、事故に遭ったはずなのにこの世界に来た時と同じく傷はなかった。
ただ、なんとなく体が重いだけ。
パラ‥と紙の捲れる音に視線を移せば、ベッド横の椅子で本を手に眠っているラックさんがいて。
近くに書類やペンが置いてあるから、もしかしたら長い間ついててくれたのかもしれない。
‥そう思ったら、たまらなく触れたくなった。
‥‥手だけなら、いいかな?
もそもそと布団を足元に寄せて、座った体勢でそっとラックさんの手に触れようと手を伸ばす。
あと少し。そう思ったと同時に、ラックさんが私の手首を取って胸ポケットへ手を入れた。
その時間約2秒。もちろん、胸ポケットに入っているのは拳銃だ。
「‥‥‥‥‥ユウ‥?」
ぽかんとする貴重なラックさんの姿に思わず小さく笑う。
そうして私が声をかけようとした瞬間、私の視界には色素の薄いブラウンが入り込んだ。
「、あの、ラックさん‥?」
突然抱きしめられて肩口に埋まったまま、私はラックさんの様子を窺う。
ラックさんはただ無言で抱きしめる腕の力を強めた。
「‥‥ユウ、ですよね」
「?‥うん」
質問の意味に首を傾げると、ゆっくりと離すラックさんは。
「、消えてしまうかと思いました」
そのままベッドに腰を下ろして、落としてしまったらしい本を拾う。
「消える?」
「‥何度か貴女の体が透けてしまうことがあったんです」
「あ‥」
――私が、世界に帰りかけていたから。
「‥ロニーさんに聞きました。最近異変が起きていた‥と。貴女があの朝隠していたのはこれでしょう?」
「う‥」
「なぜ‥隠したんです?」
まっすぐ下りてくる視線に、逃げられずに自白する。
深くなっていく眉間の皺に、話し終える頃にはすっかり萎縮していた。
「‥‥ユウは、世界に帰れば私が楽になると言いましたね?」
指で皺を延ばしながらラックさんは深いため息をついた。
「そんな訳ないでしょう。ユウを必要としてるのは‥私の方です」
トクン、と胸が跳ねる。
優しく目を細めて頭を撫でてくれるラックさん。
早くなっていく鼓動がやけに耳について、浮かんできた涙を耐えるように眉を寄せる。
そんな私の様子にラックさんが気づいた時。私の口から出たのは。
「っ‥それは、家族として‥?」
「‥‥‥、今の――」
コンコン、とノックのあと扉が開く。
張本人であるフィーロさんは目を見開いて、すごい勢いで近寄ってきて私の肩を掴んだ。
「ユウ!大丈夫か?透けてないか?具合は!?」
「フィーロ‥」
続いて入ってきたエニスさんに宥められてフィーロさんがほっと息を吐く。
よかったと呟くフィーロさんと笑顔をくれるエニスさんに、心が温かくなった。
「‥ドクターを呼んできます。それとユウが目覚めたと各事務所に連絡を入れて来るので少し遅くなります」
「ああ、頼む」
あの時‥フィーロさんたちが来てくれてよかったと思った
だって、私はとんでもないことを口走ってしまった
ラックさんの顔がまともに見れなくて、ずっと二人を見るようにしていて。
立ち上がったその後ろ姿を追ってぼんやり見つめていたのを二人が見ていたなんて、私は知る由もなかった。
まだ抱きしめられたあの腕の温もりが残ってる。
包まれたあの香りも。
お兄ちゃんの条件をのんだ時、決心したはずなのに。
いざとなると逃げたくなってしまう自分に、叱責を入れるように両手で頬を叩いた。
「うわっ!?急に何やってんだよ!」
「ユウさんっ?」
「っ‥‥痛い‥」
涙目になった私の頬は真っ赤になっていたらしく、二人が顔を見合わせて笑った。
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