08.少女の失敗は成功に終わる
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「、なーに?」
「! いえ‥‥ゴミがついていたので」
「、ありがとう」
触れていた髪を梳くように離す。
ユウは髪を持ち上げて、他についていないか確認している。
「‥‥‥‥まずい」
「ん?」
ぽつりと洩らした言葉を聞き取れなかったのか、首を傾げるユウに笑顔を返す。
「ユウ、少しいいか」
ロニーさんに呼ばれ離れていく後ろ姿を見送り、私はグラスを煽った。
「‥‥何がまずいんだ?」
「っ‥ごほっ、ごほっ!‥‥聞こえてたんですか?」
隣にいたフィーロが呆れたように目を細める。
「お前さ‥自覚したんだろ」
「‥‥‥」
「ユウの、自分の中での存在を」
返事も返せず、ただじっとグラスに視線を落とす。
しばらくして、フィーロが私の肩を強く叩いた。
「っ‥!」
「無言は肯定の証、って言うだろ?珍しくバカだなーラック」
「‥‥悪かったですね」
肩を押さえながら眉を寄せる。
フィーロは楽しそうに酒を煽っていたが、その内何かを思い出したらしく本気で笑い出した。
「お前がそこまで乱されるなんて‥ユウすげぇ‥!」
「‥‥‥」
大方、この間のユウの“可愛い”発言を思い出したのだろう。
「で‥言わないのか?」
自分を棚に上げて完全に面白がっているフィーロを睨む。
「フィーロに言われたくありませんよ」
「なっ‥俺はいいんだよ!今はお前の話だろ」
カラン、と指で氷を弾く。私は深いため息をついて、グラスを置いた。
「‥‥彼女は人間です」
「‥‥‥‥」
「彼女は数年すれば‥私の年齢を超えます。‥今の関係を崩すことは、私にはできません」
フィーロたちの言葉を借りるなら。ユウは私に懐いている。
それはユウの言動や表情から明らかで私自身自覚もある。
ユウは独りになることに怯えているし、例えば私の思いを告げたところで気まずさを与えるだけだ。
‥そんなことをするくらいなら。
「ふーん‥‥ま、お前がいいって言うならいいけど。‥大丈夫かよ?」
「‥‥‥」
先程のことを言っているのだろう。
“気がつくと触れている”
最近のそんな自分に呆れて、私はまたため息を零した。
「‥無防備すぎるんですよ‥ユウは」
「あー‥それは分かるかも」
カタン、とした音に視線をやれば、転びそうになったのかユウを支えているマイザーさん。
ユウはぱたぱたと手を振り大丈夫だと示していたが、マイザーさんは何故か納得していないような表情だ。
「何話してたの?」
私たちの傍まで来て首を傾げるユウに、フィーロがぐしゃぐしゃと頭を撫でる。
「ユウは童顔だよなーって話」
「‥‥フィーロも言えませんけどね」
「言いやがったな‥?それにしてもこれで17だろ?東洋人っつーのは恐ろしいな」
「む、私だってもうすぐ‥‥あっ?」
何かを思い出したようにぱちぱちと瞬きするユウ。
私たちが黙ると、ユウは指折り何かを数えて。
「私、あと1ヵ月で18歳だ」
「「‥‥‥‥‥‥は!?」」
‥私たちの声に、他のメンバーが眉を寄せたのは言うまでもない。
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