07.少女は様々な想いに混乱する
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***
「‥‥‥なんで俺まで‥」
「ユウたっての希望で」
「フィーロさんは味方してね?」
二人のスーツの裾を掴みながらキースさんの家の前に立つ。
ラックさんがベルを鳴らすと、ケイトさんが笑顔で迎えてくれた。
「ユウさん‥無事で良かったわ」
「‥‥ごめんなさい‥」
優しく抱き締めてくれるケイトさん。
私は慣れない温かさにどうしていいか分からず、小さく俯いた。
「さあ、皆さん中へどうぞ。二人も待ってるわ」
ぴたりとその場に足を止める。ラックさんとフィーロさんが顔を見合わせて、私の手を掴んだ。
「ユウ」
「諦めろ」
二人に手を引かれて体がプルプルと震える。それでも動かない私にフィーロさんが笑って肩を叩いた。
「フォローしてやるから。もう来ちまったんだからしょうがないだろ?」
「‥‥‥ん、」
二人の後に続いてついていく。リビングに入っていく二人の後ろに身を隠すようにして中へ進んだ。
「お、来たな。フィーロは‥何でいるんだ?」
「まあ‥弁護士ってとこか?」
「はあ?」
ラックさんがクスクスと笑う。
それから、ベルガさんにキースさん、テーブルを挟んでフィーロさん、私、ラックさんの順で腰を下ろした。
ラックさんが今回の一連の流れを話してくれて、コーヒーに口を付けたあと小さなため息を零す。
「馬鹿だろ、お前」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥うん、それは自分でも思ったよ。反省してる」
これから自分にそれが向かって来ることも忘れて、“ラックさんって末っ子なんだなぁ‥”としみじみ思ってしまう。
兄弟間だけ敬語が取れるラックさんが新鮮で、少し可愛い。
じっと見ていたからか、ラックさんがこっちを見て眉を寄せた。
「‥‥それで、ユウの方は?」
「へ‥?」
「犯人の目的は?」
あの人の目的は‥
ちらりとキースさんを見たけどもちろん話してくれるつもりはないらしい。
ベルガさんに至ってはなぜか何も知らないような顔。
「‥‥‥こ、恋人になれって、言われて」
「は‥‥」
「もしかして‥それ断ったら殴られたのか?」
少し違う。私が首を振ると、視線でフィーロさんが続きを促してくる。
「‥‥触られたの嫌で、拒否したら、叩かれたの‥」
こういう話は聞いていてもあまりいい気分にはならないだろうから。
怖ず怖ずとみんなを見れば、すごく怖い顔をしていて慌てて顔を下げた。
「‥‥それで、キースたちが助けに行ってその後は?」
「情報屋に行って‥どうしたんです?」
二人とも怖いっ‥声に感情がだだ漏れだ。両側からの質問に身を縮めて、順番に二人を見上げる。
弁護してくれるはずのフィーロさんはすっかり敵側になってるし‥
「お、怒らない‥?」
「内容によります」
「‥‥‥‥」
キースさんも私を見たままじっと待っている。
ラックさんが言っていた通り、キースさんの無言がいつもより重い。
「‥‥あの、ね、私はこの世界の人間じゃないって‥」
「言ったんですか!?」
肩を掴まれて反動で体がラックさんの方を向く。
「ん‥いっぱい考えて、そう決めたの」
「お前、それはそうかもしれねぇけどな‥」
「もしその情報が売られたら‥お前どうなるか分かってんのか?」
‥これを言ったら、ラックさんを傷つけるんじゃないかって思った
だってほら‥ラックさんはそうして自分のせいだと責めるでしょう?
「私は後悔してない、私が望んでしたことだよ」
私はまっすぐ見つめる。そのうち、先に目を逸らしたのはラックさんだった。
「‥‥つかそもそも、向こうは信じたのか?証拠ないだろ」
――ジリリリリ‥
電話のベルが会話を遮り、取ったケイトさんがキースさんを呼ぶ。
その間にケイトさんが紅茶を入れ直してくれたけど、ラックさんが目を合わせてくれることはなかった。
「ユウ」
電話を私に向けながら視線を向けてくるキースさんに、駆け寄って受け取る。
『急に申し訳ない、取り込み中だったかな?』
「あ、いえ‥」
この声、DD新聞社の社長さんだ‥
『事の次第は彼に説明済みだ。君のことは2年後、君の言った事が真実だった時までは伏せるから心配しなくていい。私たちも確実でない情報を売る訳にはいかないからね』
私が小さく返事を返すと、社長さんはクスリと笑って電話を切った。
隣で私を見ていたキースさんを見上げれば、キースさんは少しの間の後私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
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