07.少女は様々な想いに混乱する
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「――っ!?」
鈍い音が二つ。ポットはカタカタと音を立てたまま。
私は振り返ったラックさんに思いっきり抱き付いて、体勢を崩したラックさんもろとも床に座り込んだ。
「なっ‥ユウ?突然ど‥」
「、やだ‥」
見上げると、驚いているラックさんが口を噤む。
拭ったはずなのにまた涙が落ちて、頬に線を作った。
「化け物なんて言わないで‥私はそんなこと思ってない!‥ただ、死ぬほどの痛みは、私には分からないから‥っ」
どんな激痛を伴っても死ぬことはない。‥否、死ねない。
「でも私‥本当はね、安心したの」
不謹慎かもしれないけど、それでも。
「私はラックさんが死なないって分かって、すごく安心した」
マフィアという職業は間近にいつも死がある。
お兄ちゃんに聞いてからは不安で、雨の日は特に‥帰って来なかったらどうしようって怖かった。
「あっ‥でも怪我は心配だし、ラックさんが痛いのはやだからね?絶対、無理しないでね?」
ラックさんの服を握って真剣に見上げれば、少しの間の後吹き出したラックさん。
クスクスと笑うラックさんは、床についていた両手のうち右手を口元に当てる。
「本当に、ユウには適いませんね」
「ほえ‥‥?」
優しく、ラックさんの大きな手が私の髪を梳く。
「ユウにそう思ってもらえるのなら、私は他人にどう思われても構いませんよ」
‥‥まただ
分からなくなる
それは、家族としての“特別”?
それとも‥――
「ああ、そういえば」
声にはっとして焦点を合わせる。
「兄たちに連絡したんですが‥明日はお説教らしいです」
「‥‥へっ?」
「私も電話口でキー兄に散々怒られたんですけどね‥明日は明日で‥あの無言の説教は重いんですよ」
ため息と共に首を振るラックさんはちらりと私を見て、立ち上がりながら私を起こしてくれた。
「ユウには明日、情報屋でのことも話してもらいますから」
「ひっ‥」
ラックさんの貼り付けた笑みとベルガさんのドスの効いた声、キースさんの無言の視線。
想像しただけで鳥肌が立って、急に明日が嫌になった。
「ラックさんも、敵‥?」
「敵って‥‥まあ内容にもよりますね」
「‥‥‥‥あっ、明日バイトが」
「ゆっくり休んでほしい、と。ユウは今週一杯休みにするとマスターからの伝言です。よかったですね、ユウ?」
逃げられない‥!
がっくりと肩を落とす私に、笑いながらキッチンに向かうラックさん。
私はソファーに腰を下ろして、膝に乗せたクッションに顔を埋めた。
***
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