07.少女は様々な想いに混乱する
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雨は容赦なく降り注ぎ、服の色はすっかり変わってしまった。
屋根のある場所で足を止めて乱れた息を整える。
廃工場の連なる辺りは静寂に包まれ、雨音だけが不安を煽る。
「ラックさん‥」
私がここに来たところで何が出来るわけでもないのに‥
じっとなんてしていられなかった。
全身ずぶ濡れで張り付いた服が気持ち悪い。
そっと辺りを窺いながら足を進める。胸元の服を握りながら、私は恐怖を振り払うように首を振った。
――ダァン‥!
貫くような破裂音に反射的に身を竦める。
「今、の‥」
走り出していた。右へ曲がり左へ曲がり、通り過ぎようとしたところで聞こえた怒声と銃声。
ドアの隙間からそっと中を覗く。
そこに見えたのは、縄の絡みついた左手をだらりと下げたまま銃を構えているラックさんだった。
地面には手を伝って血だまりができていて、縄にも赤く色がついている。
「ッ‥‥」
壁に背を付けてぎゅうっと両手を握り締めた。
いろんな感情が入り混じって浮かんでくる涙を無理矢理止める。
「私がいつまでもやられているとでも?‥笑わせないでください」
ラックさんの声だ
聞いたことのない冷たい声
「殺し足りねぇ‥‥まだ殺し足りねぇんだよ‥」
「やれやれ‥貴方が足りなくても私はもう死ぬのは御免ですよ」
どういう意味‥?
思った矢先耳をつんざく銃声に声を上げそうになって口を塞いだ。
ほんの少し漏れてしまった悲鳴は雨音にかき消されて中には聞こえなかったらしい。
「逃げられると思ってんのか?」
「貴方を含め三人‥他の部下は下がらせてここにはいないのでしょう?」
緊迫した空気に足が竦む。
私がいるドアとは反対‥部屋の奥に二人、中心にラックさん、そして手前にもう一人。
「‥襲撃された三カ所のカジノ、負傷した仲間の治療費、私のスーツ代、喫茶店のカウンター破壊及び食器の弁償、彼女たちへの暴力と暴言の謝罪」
「あ゙ぁ!?」
「私が貴方に求めているものですよ」
一発の銃声の後、カシャンと何かが落ちた音。
中を見れば手を押さえた人の視線の先には拳銃が落ちていて。
「っ‥テメェ!」
そのリーダーらしき人以外の二人はナイフを手にしていて、今銃を持っているのはラックさんだけ。
手前の人がナイフからベルトに挟んだ拳銃に持ち変えようとするのを見て、私は飛び出した。
ただ無我夢中で、
その姿だけを目に宿して。
「ラックさんっ‥!」
***
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