05.歯車は少女をまき込み加速する
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***
「っ‥‥ぅ‥」
頭がクラクラする‥
意識が浮上して、私はうっすらと目を開ける。
体を動かそうとして、私は手を背に柱に縛られていることに気がついた。
周りを見回すと大きな倉庫のような場所で、スコップやドラム缶が散乱している。
口もタオルで塞がれていて、私は今の状況を理解するのに必死だった。
「気がついたか」
びくりと肩が跳ねる。
数人を連れて現れたのは、私とそう歳の変わらなそうな男の人。
この人‥見覚えがある
喫茶店に何度か来てた人だ‥
「単刀直入に言うぜ、ユウ・スキアート」
その人は私の前に膝をついたと思うと、私の頬に手を滑らせた。
「俺の女になれ」
‥こんなことをしておいて、その言葉を理解しろなんていう方がおかしいと思う。
私はその手から逃げるように、顔を反対側へ逸らせた。
「俺はルノラータ・ファミリーに所属してる。ガンドールなんかより断然力だってあるんだぜ?」
‥‥この人‥私の名前だけじゃなくて、私がラックさんたちにお世話になってること知ってる‥
「お前が欲しいものは全部やるし、いい生活だってさせてやる。だから俺の女になれよ。今に俺は一気に幹部になんだからよ!」
「‥おいラグよぉ、本当に金手に入んだろうな?」
「あ゙?当たり前ェだろ。2日後こいつ引換にシマと金要求しといた。金はテメェらで分けろ。俺はシマで充分だしな?」
「お前最高だぜラグ!」
盛り上がるその人たちを前に、私はその内容に呆然とした。
ルノラータっていうファミリーがどれだけ力があるのか私は知らないけど‥
‥‥この人、ガンドールのシマをボスに渡して幹部になるつもりなんだ
こんな私でも分かるような考え、あの三人が分からないはずないのに
その人たちが話している間、私は必死に腕を動かした。
それでも紐が外れることはなくて、擦れた手首がヒリヒリと痛む。
「逃げる気でいんのか?」
肩を竦めて思わず顔を上げると、その人はニヤリと笑って私の前に腰を下ろした。
「あと2日‥お前にはじっとしててもらわなきゃならねェんだ。暇なら話し相手ぐらいにならなってやってもいいぜ?」
視線で指示したかと思うと口に巻かれた布が外される。
冷たい外気に触れて、私はきゅっと身を竦めた。
「はっ‥やっぱお前すげぇ好みだわ」
私はちらりとその人を見て、恐怖を振り払うように短く息を吸う。
「、どうして」
震える自分の声が倉庫に反響している。
「どうして‥私のこと、知ってるんですか‥?」
「そりゃそういうのを食いもんにしてる奴らがいんだよ。何でも知ったような面してんのが腹立つけどな」
舌打ちしながら煙草を銜えたその人は、煙を私に向かって吐く。
私が咽せると愉しそうに口端を上げてわざとらしく謝った。
「っ‥あの、お店に来た、他の人たちは‥?」
さっきから見当たらない‥
私が恐る恐る尋ねると、男の人は怪奇そうに眉を寄せる。
「あ゙ぁ?何の話だよ」
「え‥?」
仲間じゃ、ないの‥?
ならあの人たちは何?
私を狙ってたのは一つのグループじゃなかった――?
私は不安で震える体を小さくして、ぎゅっと唇を結んだ。
***
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