05.歯車は少女をまき込み加速する
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***
「‥‥ライトさん、また本反対になってる」
カウンターから見えたそれに小さく呟くと、聞こえたらしいジルさんが盛大なため息をつく。
「ライト」
こっちを向いたライトさんにジルさんが指を差すと慌てて直すライトさんに。
「今日、何かあるんですか?」
ジルさんに聞いてみると、そうみたいだね、と苦笑した。
「ユウちゃん、休憩交代ね」
シェリルさんに肩を掴まれて、私は二人に頭を下げながら奥に下がる。
エプロンを外しながら腰を下ろして、私はシェリルさんの用意してくれたらしいココアに口をつけた。
――パリーン!
ガラスの割れる音に身を竦めて、私は慌ててホウキとちりとりを持つ。
コップを割るなんて珍しいな――そう思ったときだった。
「だから、今日は休みだって言ってるじゃない!」
シェリルさんの叫び声。
店内がやけに静かで、私は自然と息を潜める。
「分かってんだよ‥あの東洋人がここで働いてんのは。怪我したくねぇならさっさとよこせ!」
――え‥‥わたし‥?
乾いた音と鈍い音がしたと思うと、ジルさんとマスターがシェリルさんを呼ぶ声が聞こえた。
「なぁ、いんだろ‥?出て来ねぇならこの女みたく一人一人殴ってもいいんだぜ?」
シェリルさんが殴られた
私を庇ったせいで‥
‥‥私の、せいで――?
「な、なんなんだよあんたら‥あの子に何の用だよ」
「あァ‥?」
聞こえたのはライトさんの声。
‥だめ、早く出て行かないと
私のせいで、シェリルさんだけじゃなくライトさんまで怪我しちゃう‥!
「っ‥」
私は震える手をぎゅうっと握りしめて、勢いよく半開きだったドアを開けた。
「ガイルさん!あの女です!」
「ユウちゃん‥!」
気を失っているシェリルさんを見て泣きそうになる。
私を庇ってくれていたマスターたちは、私が出てきたことに苦虫を噛み潰したような顔をした。
私はそのまま種を返して、裏口に走った。
「追え!」
怒号を背に、私は裏口から飛び出す。
後ろを振り返りながら角を曲がった途端、前から誰かに腕を掴まれて。
「やっ、んっ‥んぅ‥!?」
「待ちやがれ!」
路地から響く声。突然口に何か押し当てられたと思うと意識が遠退いて、その声は酷く小さくなっていく。
「ラッ‥ク‥さ‥――」
「よし、出せ」
最後に聞こえたのは、男の人の声と車のエンジン音。
私は浮かんだラックさんの姿を最後に、意識を手放した。
***
「チィッ!どこに逃げやがった!」
「ガイルさん!女が何者かに連れて行かれました!」
「何!?」
男が拾ったのは一足の靴。
何かを思いついたのか男は歪めていた口元に弧を描いた。
「借りたら返す‥‥ああ、返してやるよ。ラック・ガンドール‥もちろん、倍返しでなァ‥?」
***
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