04.それでも少女は嬉しそうに笑う
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「男の影‥‥!?」
アルヴェアーレで酒を囲み、私はやはり言わなければよかったと後悔した。
「男の方は明らかにユウに気があるようで、さすがのユウも気付いてるみたいです」
「まだ早ェんじゃねぇか?」
「いやベル兄‥ユウは17歳だし別に早くはないよ」
「ですがそんなどこの骨とも分からない男にユウを持っていかれるのは気に入りませんね」
「マイザーさんも溺愛ですね‥」
「そんなフィーロもだろぉ?」
「お、俺は別に‥っ」
なんだろうか、この会話は。
全員親バカすぎる‥‥というより、こんな極悪面ばかり集まってこの内容は端から見たら面白いを超えて怖いのではないだろうか。
ちらりとカウンターを見やると、ロニーさんと一緒に話しているユウがいる。
ユウがロニーさんをお兄ちゃん、と呼んだのを聞いたカモッラの皆は一斉に目を見開いて、私は笑いを耐えるのが大変だった。
‥‥何故だろう。
男のことを話たら気分が楽になった。
私も親心が男を拒否したのだろうか、それでは私も彼らを笑えたものではない。
ふと気がつくとロニーさんが煙草を手にテーブルを通り過ぎていくところだった。
代わりにランディさんとペッチョさんがユウと話しているようだ。
「ロニーはユウの前では煙草吸わないんですね」
「ユウいわく、自分が一人にならないような場所だと吸いに出るそうですよ」
「へぇ、ロニーさんも重症だな‥」
苦笑しながら呟くフィーロに、笑いながらグラスに口をつけた‥と同時に。
「ラックさんっ」
「っ‥!? ごほっ、ごほ!」
突然背中に重みが掛かって、反動で酒が一気に流れ込んできた。
後ろから抱きついたらしいユウは腕を解くと、咽せている私を覗き込む。
「な、んですか、お願いですから突然抱きつくのはやめてください」
「ん。もうらいじょぶ?」
‥‥‥今、何かおかしかったような。
隣に立つユウは、頬を上気させ目は涙で潤んでいる。
「ちょ‥ユウ!?まさか貴女酒飲んだんじゃ‥」
「ラックさん、」
遮られた言葉を飲み込むと、差し出された両手に私は首を傾げ。
続けて聞こえた言葉に耳を疑った。
「だっこ‥」
「‥‥‥‥‥‥は?」
隣でフィーロが机に顔を伏せて笑っている。
私はそれをひと睨みして、どうしようかとユウに向き直った。
完璧に酔っているユウ。
手を広げたまま待っているが一体どうしたものか‥
「悪ィなぁ、間違ってアルコール入ってるやつ渡しちまったぜ」
「悪ィ悪ィ!」
ランディさんたちが遠くで手を合わせ、私はため息をついた。
「とりあえず今日は帰ります。もう時間も遅いですし」
「じゃあ、俺も一緒に帰るよ」
「ユウ、少し待っててください」
自分がいた席に座らせて、別の席にいた兄たちに声をかける。
戻ってきたときには、ユウはうつらうつらと夢の世界へ片足を踏み込んでいた。
「ユウ、ほら」
傍らにしゃがんで促すと、目を擦ったユウは首を傾げながらも立ち上がる。
「だっこ‥」
「今回はおんぶで我慢してください。いいですか?」
首に腕が回されたの確認して、ぐっと足に力を入れた。
「じゃあ、先に上がります」
「ユウ、忘れるな」
ロニーさんがユウの腕に鞄をかけてやるのを横目に、フィーロは挨拶を済ませ戻ってくる。
「‥お兄ちゃん、おやすみなさい」
「ああ」
ユウはくるりと首を回し、私の背中に頭を預けながらカモッラの皆に手を振りながら破顔した。
初めて彼らに見せる緊張も警戒もない笑顔。
やっぱりユウに男なんてと再び始まった口論に笑いながら、私とフィーロは店を出たのだった。
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