04.それでも少女は嬉しそうに笑う
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「ユウちゃんって‥‥もしかしてラックさんが好きなの?」
ドサドサッ‥
袋詰めされた珈琲豆をカウンターに落として、私は慌ててそれを拾った。
「ど、どうしてですか‥?」
「ふふ、女の感よ」
頬が熱くなるのを感じながらシェリルさんを見る。
シェリルさんは楽しそうに笑っていて、カウンターに肘を立てると頬杖をついた。
「ユウちゃんラックさんといるとふわふわしてて可愛いんだから」
「ふわふわ?」
「そう。ユウちゃん元々雰囲気柔らかいけど、ラックさんがそばにいるときはもっとね」
‥よく分からないけど、なんだかすごく恥ずかしい。
そんなに分かり易かったら、本人にもバレてるんじゃ‥
考え込む私に、シェリルさんは思考を先回りしたみたいに大丈夫と私の頭を撫でる。
「さっきも言ったでしょ?女の感は鋭いの。それに男は簡単に気づく生き物じゃないから」
「‥‥本当に?」
「ええ。証拠にほら」
シェリルさんはにっこり笑って丁度休憩から戻ったマスターの甥、ジルさんに投げキッスをする。
ジルさんは面食らったように目を瞬かせて、いつものようにふわりと笑った。
「どうしたの?びっくりした。次シェリルが休憩だよね?」
「不意打ちは最大の武器よってユウちゃんに話してたの。休憩入らせてもらうわね」
すれ違い様に私の耳に顔を近づけて「直接的なアピールにも気付かない鈍感だっているのよ?」と肩を竦めたシェリルさん。
私はそれに笑顔で返して、奥に入っていく後ろ姿を見送った。
カランカラン、とドアにつけたベルが鳴って新たなお客さんが入ってくる。
強面の男の人2人。奥のテーブルに腰を下ろしたのを確認して、ジルさんが注文を取りに行った。
「ユウちゃん。グラスとカップ一個ずつ出してくれるかな」
「はい」
最近、周りが強面の人ばかりだからかあんまり意識しなくなったような気がする。
それをラックさんに言ったら、意識して見極めてくださいと心配されてしまったけど。
ベルがなって新たなお客さんが顔を出す。
ちょうど私が働き始めた頃に来るようになった女の子と、そのおじいちゃんである常連さん。
「いらっしゃい」
「マスター、いつもの頼むよ」
「ユウお姉ちゃん、私ミルクねっ」
「かしこまりました」
頭を撫でると嬉しそうにはにかむその姿に思わず頬が弛む。
「しかしチコはすっかりユウちゃんに懐いたなぁ」
「きっと子供は分かるんだよ、その人の本質がね」
「あらマスター、それ私への当てつけ?」
奥から顔を覗かせるシェリルさんに肩を竦めてみせるマスター。
私はチコちゃんと顔を見合わせて、声を抑えて笑った。
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