03.情報屋は少女の影に惑わされる
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***
「ここなんだけど‥‥って、どうかした?」
レイチェルさんについてきた私は、看板に書いてある文字に思わず目を疑った。
私が読んだ文字で間違いがないのなら。
ここは‥‥
「デイリー・デイズ新聞社‥」
ど‥どうしよう‥!
ここってこの間ラックさんが言ってた情報屋じゃ‥
「、おや‥レイチェルくん。今日は列車には乗らな‥い‥‥」
出てきた男の人は、レイチェルさんから隣の私に視線を移してぴたりと動きを止める。
この人、この間の‥
「キミはこの間の!こんなところで会えるとは」
弾んだ声に身を竦めて、レイチェルさんの後ろに隠れる。
この人はだめ。
じっと睨みながら威嚇すると、ニコラスさんは両手を上げてひらひらと振る。
すると目の前に腕が出されて、レイチェルさんが一歩前に出た。
「なんか悪者の気分ですねぇ‥」
「‥嫌がってる」
この二人って元々あんまり仲良くないのかもしれない。
思っているとまた扉が開いて、中から眼鏡の人が出てきた。
「‥‥社長が、中へどうぞと。」
何か食べながら私たちに言うと、今度はニコラスさんの方を向く。
「‥‥‥仕事に行きなさい、だそうです。」
「‥はいはい分かりましたよ。ではお嬢さん、また。」
首を振りながらため息をついたニコラスさんは私にウィンクをすると、街に消えていった。
眼鏡の人は正方形のそれを食べながら、ちらりと私の方を見やると箱を差し出して。
「‥食べます?」
レイチェルさんと顔を見合わせる。
私たちはふるふると首を振った。
***
「‥‥‥‥、」
予想外の真実に絶句した。
まさか‥新聞社に行ったとは‥
ユウのせいではないのだが、思わず頭を抱える。
「ご、ごめんなさい‥」
「いえ、ユウが謝ることはありません。ですが‥」
話を聞くに、やはり社長はすでにユウの存在を掴んでいたようだ。
「社長は‥どこまで知ってましたか?」
あの人は侮れない。
一体何をどこまで知っているのか‥全く奥が掴めない。
「私がロニーさんの義妹で‥ラックさんの家にいるっていうとこまで‥」
「‥‥何か聞かれたりは?」
ユウは首を振って、少しの間のあと思い出したように私を見上げる。
「、幸せですか?って」
何を思ってそんなことを‥
私が眉間に寄った皺を指で押さえると同時に、ユウがむつけたように唇を尖らせた。
「はいって言ったら、社長さんに笑われちゃった」
「‥‥‥、」
呆けてしまった私に、ユウが首を傾げて覗き込んで来る。
「幸せ‥なんですか?」
「? うん。だってラックさんたちがいるから」
屈託なく笑うユウ。
予想外の言葉に私は何も言えず、彼女には振り回されてばかりだとふと思う。
彼女の純粋さに振り回される
無自覚に破られる少女の殻は危険で‥
顔を覗かせては私を揺さぶるのだ
いつから‥こんなにも彼女の存在は大きくなったのだろう?
認めざるを得ない感情に戸惑いながら、私はそれを奥へ押しやった。
***
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