03.情報屋は少女の影に惑わされる
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「お帰りなさい」
ドアの音に玄関まで出るとラックさんが頭を撫でてくれる。
「なんだかいい匂いがしますね?」
「‥私、これぐらいしかできないから」
ラックさんは丸くした目を細めて、優しく私を促した。
「では、いただきましょうか。準備してもらえますか?」
「うん!」
キッチンから料理を運ぶ間。私はお昼にあったことを思い出す。
今は少し腫れて青く痣になっているけど、服を着ていれば分からない。
それに触れると痛いけど、動かす分には多少痛むだけで支障はないから。
ラックさんには黙ってよう‥
エニスさんにもバレなかったし大丈夫。内心頷きながら、お皿を取ろうと振り返ると。
いつの間にかキッチンに来ていたラックさんにトンッと肩が触れて、私は痛みに肩を押さえた。
「すみません、‥‥ユウ?」
「! あ‥大丈夫ですっ」
ぱっと笑顔を作ったけど、ラックさんは納得していないように眉を寄せている。
「何か‥隠してますね」
ぶんぶんと首を振る。だけどラックさんは私の頭を鷲掴みにして、にっこりと笑った。
「隠してますね?」
‥‥‥目が、笑ってない。
それでも黙っている私に、ラックさんはじっと左肩を見て。
すみません、そう言ったかと思えば、私が止める間もなくボタンを外して服を肘までずり下げられた。
「ひゃあっ‥!?」
「‥‥これは、」
中にキャミソールを着ていたことに安堵しながら、突然のことに心臓がドクドクと鳴る。
逃げようと背中を向けると腕を掴まれて、ふわりと体が浮いたと思えばキッチンのカウンターに座らされた。
「あ、のっ、ラックさ‥」
包帯を解かれて表れたのは、自分でも驚いてしまう程の濃い痣。
あの時より時間が経ったから、色味が増したんだ。
「‥‥何ですか、これ」
愕然とするラックさんからこぼれた言葉。
私はどう説明しようかとあたふたして、ラックさんの射抜くような瞳に身を小さくした。
「親子を、庇って‥」
「庇った?」
「‥女の子が男の人にぶつかったんです。そしたら、男の人が『機嫌が悪いから蹴らせろ』って‥」
「‥‥周りの大人は」
ラックさんの眉間にどんどん皺が寄って、私は怖ず怖ずと見上げながら続けた。
「『オレはルバニエファミリーの傘下だ』って言ったら、みんな黙っちゃって‥」
「! またルバニエですか‥‥それで、代わりに蹴られたと?」
「‥ん」
盛大にため息をついて、悲しそうに眉を下げるラックさん。
「‥あなたは女の子なんですから‥無茶はやめてください」
きゅん、と胸が高鳴る。私は俯いて小さく頷くのが精一杯で、ごめんなさいとだけ呟いた。
頬に手が添えられて見上げればラックさんと目が合って、少しの間のあとバツが悪そうに逸らされる。
「、ところで」
小さく咳払いをして、ラックさんがほどいた包帯を手に取る。
「これは誰がやってくれたんです?その母親ですか?」
「にっ?あ、えっと、‥‥はい」
「‥‥‥嘘なんですね?」
またバレた‥‥!
呆れ顔のラックさん。私はどうしようかと考えて、とりあえず逃げ出すことを試みる。
「っと‥どこ行くんですか、逃がしませんよ?」
けどラックさんが私を閉じ込めるようにカウンターに手をついて、私は逃げ遅れ。
行き場を失って、涙目で見上げた。
「‥‥‥‥それは反則でしょう‥」
「はえ?」
なんて言ったか聞こえなかった。
首を傾げるとラックさんはまたため息をついて、包帯をまき直してくれる。
「‥それで?誰がやってくれたんです?」
「うっ‥」
どうしよう‥
言ったら絶対怒られる。でも逃げられないし‥
私は綺麗に巻かれた包帯を見て、観念したようにうなだれた。
***
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