02.少女は無意識に人を魅了する
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「ルバニエファミリーですか‥」
「ああ、なんか最近ガンドールのことを嗅ぎ回ってる奴がいるってんでさ」
友人として報告に、と笑うフィーロに私は礼を返す。
「そういえば、カジノが一カ所潰されました。幸い怪我人だけだったので大事にはしなかったのですが‥」
あれもルバニエファミリーだったか‥
思案していると、フィーロが隣で小さく笑ったのに気がついて視線を上げた。
「ユウすげー懐いたな。たった1日で‥ロニーさんどんな手使ったんだ?」
その先には丁度部屋から出てきたらしいユウが、ロニーさんの話に熱心に頷いている。
「あ‥ラックさん!」
パタパタと走り寄ってきたかと思えば、ぽすりと胸に飛び込んでくるユウ。
「どうしました?やけに甘えん坊ですね」
「ん‥、迎えに来てくれたんですか?」
「ええ、もう陽も落ちますし」
しばらく動かずにいたが、ふいに腕の力が緩んで体が離れる。
ユウは照れたように前髪に触れて、おなかすいた、と呟いた。
「ははっ、なんだよ急に。今日はエニスが夕飯作ってるんだ。二人も来いよ!」
「いいんですか?」
「ああ」
ロニーさんに挨拶を済ませ店から出る。透き通るように青かった空は夕日も沈みかけていた。
「ラックさん、あの人何してるの?」
裾を引かれて振り返れば、裏路地のドアに張り付いてうずくまっている影。
「あれは‥」
たしかデイリー・デイズ新聞社のニコラスさんでは‥?
「‥‥彼はあれが仕事です。行きましょう」
‥‥見つからないうちに。
呟くとユウが首を傾げながら付いて来る。
彼に対して反対側にユウを置いて、更にユウを隠すように私の横にフィーロが立った。
「おや?ガンドール・ファミリーのラックさんにマルティージョ・ファミリーの若き幹部フィーロ・プロシェンツォさんではありませんか」
「げっ‥」
「‥どうも」
‥目敏い人。内心ため息を吐いてちらりとユウを見れば、私の上着を掴み隠れている。
最近気付いたことだがユウは周りの人間の様子や感情に敏感で、特に負の感情はすぐに感じ取ってしまうようだ。
私たちが彼を避けているのに気付いたのだろう。
「何かあったのですか?」
「いえ、ただの食事ですよ。では」
作り笑顔を返して歩き始めると、納得していないような表情のニコラスさんが目を細める。
「失礼‥そこのレディは?」
ぴくりと反応するユウ。私はため息のあと彼に振り返り、促すようにユウの背に手を添えた。
「あなたに説明して差し上げる必要が?私たちは急ぎますのでこれで」
心配そうに私とニコラスさんを見るユウは、彼に小さく頭を下げ背を向けた。
私の威圧に少し怖じ気づいたように身を引いたニコラスさんを置き去りに、私たちは路地を抜ける。
「知ってる人?」
「‥新聞社の人」
「あいつしつこいんだよなぁ‥」
不思議そうに見上げてくるユウに、どう説明しようかと上着のポケットに手を入れて空を仰ぐ。
とりあえず話を置いたまま、予定通りフィーロの家で夕食を済ませ家路についた。
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