ガラスの靴を捨てたなら。
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肌寒い夜風が吹き、街は街灯や店の灯りで照らされている。平日の夜にもかかわらず、小綺麗に着飾った人が所々に見られる。凪子とプロシュートもそのうちの一人だ。
「よお。今日はなんだかいつもと雰囲気が違う」
「浮かれちゃってちょっとお洒落しちゃった。変じゃあないかな? 」
ミントグリーンの色をした膝丈の長さのフレアスカートに、白の薄手のリブニットを併せている。Vネックの襟から控え目に露出した鎖骨にはきらりと一粒のダイヤが輝いている。
「変だと? そんなわけあるか。綺麗すぎてどうにかなりそうなくらいには綺麗だぜ? 」
その言葉を受けて、冗談はやめてほしいと言わんばかりに凪子はプロシュートの腕をぽんと軽く叩いた。プロシュートはすかさずその手を取ると、恋人繋ぎの形で指を絡めた。凪子は薄く艶の良い肌を耳まで赤らめ、緊張と恥ずかしさで全身が汗ばむのを感じる。
「どうした? いつもみたいに楽しくお喋りしようぜ? 」
プロシュートは悪戯っぽく問いかけるが、依然として彼女は紅潮させた顔を下に向け、プラム色に塗られた唇をきゅっととじたままであった。
会話は無い。いつもより少し小さい歩幅。だけれど、止まること無く進んで行く。
「……あの……! 」
焼きたてのメレンゲみたいに、壊れてしまいそうな繊細な声で凪子はようやく声を発した。
「私たち、友達でしょ? 恋人じゃあないじゃない? なのに ……」
まるで恋人同士であるかのように繋いだ手に凪子はぎゅっと力をこめた。
彼女の澱みの無い瞳で見つめられたプロシュートはこういった場面で普段はこうはならない筈なのに、珍しく動揺している。
おかしい。いつもなら適当に笑って言いくるめて上手にかわせるのに。どうしちまったっていうんだ。
……確かに……俺は目の前のこいつに、綺麗すぎてどうにかなりそうなくらいには綺麗だと言った。
しかしだな、慣れた手つきでいつもみたいに、その辺の女と手を繋ぐみたいに、何にも問題なかった。いつもどおりだぜ。
なのになんだ? どうしてこんなにも鼓動が早い?
どうしてこんなにも、指の先まで敏感に、血が巡り神経が張りつめるのを感じるんだ。
「……プロシュート? 」
ついこの間までは何の気もなしにその声を聞いていたが、今は違う。
「……悪いな! 今日の俺はどうにかしちまったらしい! 」
プロシュートはそう良い放つなり繋いでいた手をそっと放し、自分の顔を覆い隠すように手を当てた。細く長い指の隙間からは端整な顔が垣間見えており、その表情は激しく動揺しているように見える。
凪子はほどかれた手に冷たい夜の空気が触れ、掌に滲んだ汗が冷たく乾いていくのを感じた。二人の間に流れる冷たい空気は、気温のせいだけでは無さそうだ。
「ねえ、プロシュート? 私なんだか、急にジャンクな物が食べたくなっちゃった! 」
凪子はこの緊張した空気を何とかすべく動いたのであった。彼女の突然の発言により呆気に取られたプロシュートは、眉間に皺を寄せ、口を半開きにしながら彼女を見つめていた。
―――――――――――――――――――――――
「本当にこんなんで良かったのか? 」
「これが、良いのよ。ベンチに座って夜風を浴びながら食べるの 」
予定していた夕食とは全くの別物だが、凪子は先ほどプロシュートと共にテイクアウトしたサンドイッチを美味しそうに頬張っている。その様子はなんだか子供の様で、余程お腹を空かせていたのか空気を和ませるためなのかはわからない。
あんまり急いで食べるものだから噛みきれなかった生ハムがするするとパンの間から出てしまっている。メインの生ハムが無くなったら、クリームチーズとパプリカしか残らないではないか。
「(ギアッチョのやつならどうして生ハムだけ先に食べるんだ、とか言ってキレるんだろうな)」
プロシュートは一口だけ齧られたサンドイッチを持ったまま、じっと彼女を見つめている。
「なあ? この後俺のうちに来ないか?」
一瞬目を見開いてはっとした様な顔を見せた凪子だったが、透き通った声色で同意の返事を述べた。
ブチャラティ達が彼女の帰りを心配しているなんてことは、彼らの頭には微塵も無いのだった。
「よお。今日はなんだかいつもと雰囲気が違う」
「浮かれちゃってちょっとお洒落しちゃった。変じゃあないかな? 」
ミントグリーンの色をした膝丈の長さのフレアスカートに、白の薄手のリブニットを併せている。Vネックの襟から控え目に露出した鎖骨にはきらりと一粒のダイヤが輝いている。
「変だと? そんなわけあるか。綺麗すぎてどうにかなりそうなくらいには綺麗だぜ? 」
その言葉を受けて、冗談はやめてほしいと言わんばかりに凪子はプロシュートの腕をぽんと軽く叩いた。プロシュートはすかさずその手を取ると、恋人繋ぎの形で指を絡めた。凪子は薄く艶の良い肌を耳まで赤らめ、緊張と恥ずかしさで全身が汗ばむのを感じる。
「どうした? いつもみたいに楽しくお喋りしようぜ? 」
プロシュートは悪戯っぽく問いかけるが、依然として彼女は紅潮させた顔を下に向け、プラム色に塗られた唇をきゅっととじたままであった。
会話は無い。いつもより少し小さい歩幅。だけれど、止まること無く進んで行く。
「……あの……! 」
焼きたてのメレンゲみたいに、壊れてしまいそうな繊細な声で凪子はようやく声を発した。
「私たち、友達でしょ? 恋人じゃあないじゃない? なのに ……」
まるで恋人同士であるかのように繋いだ手に凪子はぎゅっと力をこめた。
彼女の澱みの無い瞳で見つめられたプロシュートはこういった場面で普段はこうはならない筈なのに、珍しく動揺している。
おかしい。いつもなら適当に笑って言いくるめて上手にかわせるのに。どうしちまったっていうんだ。
……確かに……俺は目の前のこいつに、綺麗すぎてどうにかなりそうなくらいには綺麗だと言った。
しかしだな、慣れた手つきでいつもみたいに、その辺の女と手を繋ぐみたいに、何にも問題なかった。いつもどおりだぜ。
なのになんだ? どうしてこんなにも鼓動が早い?
どうしてこんなにも、指の先まで敏感に、血が巡り神経が張りつめるのを感じるんだ。
「……プロシュート? 」
ついこの間までは何の気もなしにその声を聞いていたが、今は違う。
「……悪いな! 今日の俺はどうにかしちまったらしい! 」
プロシュートはそう良い放つなり繋いでいた手をそっと放し、自分の顔を覆い隠すように手を当てた。細く長い指の隙間からは端整な顔が垣間見えており、その表情は激しく動揺しているように見える。
凪子はほどかれた手に冷たい夜の空気が触れ、掌に滲んだ汗が冷たく乾いていくのを感じた。二人の間に流れる冷たい空気は、気温のせいだけでは無さそうだ。
「ねえ、プロシュート? 私なんだか、急にジャンクな物が食べたくなっちゃった! 」
凪子はこの緊張した空気を何とかすべく動いたのであった。彼女の突然の発言により呆気に取られたプロシュートは、眉間に皺を寄せ、口を半開きにしながら彼女を見つめていた。
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「本当にこんなんで良かったのか? 」
「これが、良いのよ。ベンチに座って夜風を浴びながら食べるの 」
予定していた夕食とは全くの別物だが、凪子は先ほどプロシュートと共にテイクアウトしたサンドイッチを美味しそうに頬張っている。その様子はなんだか子供の様で、余程お腹を空かせていたのか空気を和ませるためなのかはわからない。
あんまり急いで食べるものだから噛みきれなかった生ハムがするするとパンの間から出てしまっている。メインの生ハムが無くなったら、クリームチーズとパプリカしか残らないではないか。
「(ギアッチョのやつならどうして生ハムだけ先に食べるんだ、とか言ってキレるんだろうな)」
プロシュートは一口だけ齧られたサンドイッチを持ったまま、じっと彼女を見つめている。
「なあ? この後俺のうちに来ないか?」
一瞬目を見開いてはっとした様な顔を見せた凪子だったが、透き通った声色で同意の返事を述べた。
ブチャラティ達が彼女の帰りを心配しているなんてことは、彼らの頭には微塵も無いのだった。