ガラスの靴を捨てたなら。
あなたのお名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暗殺チームで最も背が高く、チームのリーダーである男。リゾット・ネエロ。
稼業が暗殺といってもその中身は極めて穏やかである。朝は他の者よりも早く起き、朝食の用意をする。いつまで経っても起きてこない者が居れば母親の様に起こしにいく。そんなリゾットだから暗殺チームのメンバー達からとても慕われている。
そんな彼には最近悩みがある。悩みといっても誰かに迂闊に話して良いような物ではないため、彼自身で考えるしかない。
「(やはりそうだ、プロシュートの様子がなんだかおかしい)」
同僚であるプロシュートの様子が最近おかしいのだ。おまけに他の者に話しては、プロシュートが弄られる可能性があるから話せない。それがリゾットの悩み、心配事である。
最近のプロシュートは部屋の何もないところにじっと佇んでいたり、カプチーノの入ったカップに手をつけたまま飲まずにぼーっとしたりしている。リゾートが声をかけても返事は気の抜けた声で驚いたように返ってくる始末だ。おまけに返事がくるのに数秒のタイムラグまである。今だってそう。ソファーの上で何かに耽っているようだ。
「(特段、任務に支障は無いようだから……放って置いても良いのだが……)」
もちろん、それでも良いかもしれないが彼のその優しい性格故に、プロシュートを放って置くことなど出来そうにはない。
「なあ、リゾットよ」
「ああっ!? 」
「なんだよ。その返事は、そんなにびっくりしやがって」
つい先程までハシビロコウの様に動かず、じっとしていたのに突然話しかられたらびっくりもする、とリゾットは言いかえした。
「こないだはありがとうな。料理、教えてくれて助かったぜ。お陰で食わせたやつに喜んでもらえた」
「礼など良い。また何かあったら言ってくれ。役に立てて良かった」
先日、凪子達と出掛けたときのランチの為にプロシュートはペッシと共にキッシュを焼いていったのだ。プロシュートはカクテルやちょっとした酒のつまみになるような物なんかは作れるけれど、リゾットの様に料理全般が得意なわけではない。
だからといってランチの時間に得意の酒のつまみばかり持っていくわけにはいかないので、リゾットに料理を教えてもらったというわけだ。
「それにしても、初めて作るにしたってお前ならレシピを見たら簡単に作れそうなのにな」
「ああ? 良いんだよ。絶対に喜ばせたいやつがいたからな。料理出来るやつに教えてもらった方が上手く行くだろ」
絶対に喜ばせたい相手、それは一体どんな人物なのだろうか。おそらくペッシと共に合いに行った人物であろう。ペッシに聞けばどんな人物かはわかるはずだが、こそこそ隠れて詮索するのもなんだか気が引ける。
リゾットはしばし頭を捻らせ考える内に、気がついたら口が開いていた。
「喜ばせたい相手っていうのは女なのか? 」
「ああ、そうだぜ」
「お前はその女のことが好きなのか? 」
「はあ!? いきなり何言いやがる! 」
プロシュートはモテるし、良く女性の方からも声をかけられている。そんなプロシュートが恋愛経験の少ない少年のような態度を取るなんて、やはり何かあるに違いないとリゾットは確信した。
「役に立てるかはわからないが、何かあったらいつでも頼ってくれ」
それだけ言い残すとリゾットは部屋から立ち去った。彼なりの親切ではあるものの、プロシュートからしてみると一見訳がわから無い感じになり頭に疑問符が浮かんでいる。
リゾットについて色々と考えているうちに、ピピピピと彼の携帯電話が鳴った。画面には凪子の名前が表示されている。嬉しい出来事に気分が高揚し、上手く動かせない指でなんとか電話に出た。
『もしもし? プロシュートかしら』
「ああ、俺だ。どうしたいきなり」
『今晩時間ある? 夕飯をひとりぼっちで食べなくちゃあならなくて……なんだか寂しいから付き合ってくれないかな』
「いいぜ。俺も夜は空いてたんだ」
18時に駅で待ち合わせる約束をし、電話を切った。プロシュートは女慣れしている。誰もが振り向くモデルの様な美女から可愛らしい顔の美少女まで。いろんな女性と関わって来た。
それでも、それなのに何故か子どもの時に感じたクリスマスの前の様なわくわくした気持ちや初めてデートする時の緊張感。それらを併せても足りないくらいに昂る気持ちがあった。
「なんでこんな気持ちになってるんだ? あんなどこにでもいるような女に……」
そんなことをぼやきながらも、凪子とのおそらく「デート」と呼ぶのにふさわしい会の為に何を着ていくか浮かれ気分で考えるプロシュートであった。
→ to be continued
稼業が暗殺といってもその中身は極めて穏やかである。朝は他の者よりも早く起き、朝食の用意をする。いつまで経っても起きてこない者が居れば母親の様に起こしにいく。そんなリゾットだから暗殺チームのメンバー達からとても慕われている。
そんな彼には最近悩みがある。悩みといっても誰かに迂闊に話して良いような物ではないため、彼自身で考えるしかない。
「(やはりそうだ、プロシュートの様子がなんだかおかしい)」
同僚であるプロシュートの様子が最近おかしいのだ。おまけに他の者に話しては、プロシュートが弄られる可能性があるから話せない。それがリゾットの悩み、心配事である。
最近のプロシュートは部屋の何もないところにじっと佇んでいたり、カプチーノの入ったカップに手をつけたまま飲まずにぼーっとしたりしている。リゾートが声をかけても返事は気の抜けた声で驚いたように返ってくる始末だ。おまけに返事がくるのに数秒のタイムラグまである。今だってそう。ソファーの上で何かに耽っているようだ。
「(特段、任務に支障は無いようだから……放って置いても良いのだが……)」
もちろん、それでも良いかもしれないが彼のその優しい性格故に、プロシュートを放って置くことなど出来そうにはない。
「なあ、リゾットよ」
「ああっ!? 」
「なんだよ。その返事は、そんなにびっくりしやがって」
つい先程までハシビロコウの様に動かず、じっとしていたのに突然話しかられたらびっくりもする、とリゾットは言いかえした。
「こないだはありがとうな。料理、教えてくれて助かったぜ。お陰で食わせたやつに喜んでもらえた」
「礼など良い。また何かあったら言ってくれ。役に立てて良かった」
先日、凪子達と出掛けたときのランチの為にプロシュートはペッシと共にキッシュを焼いていったのだ。プロシュートはカクテルやちょっとした酒のつまみになるような物なんかは作れるけれど、リゾットの様に料理全般が得意なわけではない。
だからといってランチの時間に得意の酒のつまみばかり持っていくわけにはいかないので、リゾットに料理を教えてもらったというわけだ。
「それにしても、初めて作るにしたってお前ならレシピを見たら簡単に作れそうなのにな」
「ああ? 良いんだよ。絶対に喜ばせたいやつがいたからな。料理出来るやつに教えてもらった方が上手く行くだろ」
絶対に喜ばせたい相手、それは一体どんな人物なのだろうか。おそらくペッシと共に合いに行った人物であろう。ペッシに聞けばどんな人物かはわかるはずだが、こそこそ隠れて詮索するのもなんだか気が引ける。
リゾットはしばし頭を捻らせ考える内に、気がついたら口が開いていた。
「喜ばせたい相手っていうのは女なのか? 」
「ああ、そうだぜ」
「お前はその女のことが好きなのか? 」
「はあ!? いきなり何言いやがる! 」
プロシュートはモテるし、良く女性の方からも声をかけられている。そんなプロシュートが恋愛経験の少ない少年のような態度を取るなんて、やはり何かあるに違いないとリゾットは確信した。
「役に立てるかはわからないが、何かあったらいつでも頼ってくれ」
それだけ言い残すとリゾットは部屋から立ち去った。彼なりの親切ではあるものの、プロシュートからしてみると一見訳がわから無い感じになり頭に疑問符が浮かんでいる。
リゾットについて色々と考えているうちに、ピピピピと彼の携帯電話が鳴った。画面には凪子の名前が表示されている。嬉しい出来事に気分が高揚し、上手く動かせない指でなんとか電話に出た。
『もしもし? プロシュートかしら』
「ああ、俺だ。どうしたいきなり」
『今晩時間ある? 夕飯をひとりぼっちで食べなくちゃあならなくて……なんだか寂しいから付き合ってくれないかな』
「いいぜ。俺も夜は空いてたんだ」
18時に駅で待ち合わせる約束をし、電話を切った。プロシュートは女慣れしている。誰もが振り向くモデルの様な美女から可愛らしい顔の美少女まで。いろんな女性と関わって来た。
それでも、それなのに何故か子どもの時に感じたクリスマスの前の様なわくわくした気持ちや初めてデートする時の緊張感。それらを併せても足りないくらいに昂る気持ちがあった。
「なんでこんな気持ちになってるんだ? あんなどこにでもいるような女に……」
そんなことをぼやきながらも、凪子とのおそらく「デート」と呼ぶのにふさわしい会の為に何を着ていくか浮かれ気分で考えるプロシュートであった。
→ to be continued