◇護衛チーム◆
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鮮やかな青空。朝の澄んだ空気が心地良い。
私は今ジョルノとアバッキオと三人でメルカートに来ている。カラフルで色鮮やかな野菜や果物、生ハムや様々な種類のチーズなども並んでいて目移りしそうだ。特に今朝採ったばかりだというレモンとオレンジがネアポリスの青空に良く映えて美しい。
「(今日のティータイムはオレンジのパウンドケーキとレモネードで決まりかな)」
「ねえ、このレモンとオレンジを使ってケーキとレモネードを作ろうと思うんだけど二人はどう思う?」
「良い香りですね。僕は賛成です」
「俺も賛成だ。あっちの店にブラッドオレンジもあったからそっちも見てみねえか?」
ブラッドオレンジは皮はオレンジをしているが果肉はその名の通り赤みが強く、味は甘さの中にほろ苦さがある。黄色いレモネードの差し色としてブラッドオレンジの赤い色が入ったらきっと綺麗だろう。私たちはレモンとオレンジをいくつか買ったあと、アバッキオの見つけたお店に向かいブラッドオレンジも少しだけ買うことにした。
「おい凪子、今日は珍しく鞄が膨れてるみたいだが何が入ってるんだ?」
「カメラだよ。せっかく早起きして出てきたから何か写真に残したいなと思って」
アバッキオに声をかけられていなければ危うくカメラの存在を忘れてしまうところであった。私は鞄の底に追いやられたそれを取り出すと、青空と市場のテントがフレームに収まるように調節しシャッターを切った。我ながら良く撮れていると思う。ジョルノとアバッキオにそれを見せると中々上手いじゃあないかと褒めてくれた。
天気も良いし景色も良いことなので皆で写真を撮りたいと思ったが、私たちはギャングだ。細心の注意を払うなら、顔写真等は残さない方が良いだろう。そう考えると一緒に写真を撮りたいなんてとてもじゃあないが言い出せなかった。
「凪子どうしたんです?」
「えっ?……ああ! 何にもないよ考えごとしてただけ」
「そう、それなら良いんですが」
切ない気持ちになったがここは我慢だ。今ある幸せを守るためにも我慢は必要だ。何たって今二人とこうして笑っていられるだけで、私にとって有り余るくらいの幸せなのだから。
「材料も揃ったしそろそろ帰ろう」
そう言おうとした時だった。
「おい凪子、手に持ってるそれちょっと貸せや」
「良いけど……何か撮るの? 」
「それから、二人とも並んでもう少し後ろに下がれ」
ジョルノに手を引かれ私は言われた通りに後ろに下がった。アバッキオは私のカメラを塀に置き、何か設定しているようだった。
「オラッ! てめーら! あと7秒だ!腑抜けたツラすんなよ!?」
「わああっ! セルフタイマー!?」
「落ちついて。いつもみたいに可愛く笑ってください」
カメラのボタンを押したアバッキオは素早くこちらへ移動し、私の左隣に立った。
3,2,1……ピピピピッ!タイマーの音と同時にシャッター音が鳴った。
「上手く撮れてると良いんだが……っと……大丈夫だな。ほらよ」
「アバッキオ……! ありがとう……!」
「撮影ありがとうございます。皆さん良い顔してますね」
カメラの画面にはいつも通りに澄ました顔のジョルノと右手をピースをして幸せそうに笑う私、少し照れ臭そうに目線を外すアバッキオの姿があった。
「本当にありがとう。こんな機能あったんだ!初めて知ったよ」
「ああ、テレビで見たときのを思い出してな」
「……テレビで見たやつなんですね」
嬉しい、嬉しいんだけれども……。どこか不安が芽生えた。もしかすると私がもやもやと思い悩んでいたことが顔に出ていて、彼らに気を使わせてしまったんじゃあないだろうか。そうだとすれば私はなんて子どもなんだろう……。しかし、そんなことを考えるとネガティブな気持ちがぐるぐる回るだけなので今はこれで良かったんだと気持ちを切り替える。せっかくアバッキオが私のためにセルフタイマーまで設定して撮影してくれたのだ、ジョルノの言うとおり皆良い顔をしているし。
「二人ともありがとう。宝物にするね!」
そう伝えると彼らは優しく微笑んだ。
「さあ、帰りましょうか。帰ってお茶の用意をしなくては」
「早く帰んねえとブチャラティのやつが凪子のことを探しに行くかもしれねえしな」
「ブチャラティ……気持ちは嬉しいけど……それはちょっと困ったなあ」
―――――――――――――――――――――――
アジトに帰還し、お茶の用意をしているとミスタがこちらにやって来た。
「良い香りがするなー。何作ってるんだ~~?」
「オレンジのパウンドケーキとレモネード。ただのレモネードじゃあないのよ? ブラッドオレンジも入ってるの! 綺麗でしょ? 」
「へえ。洒落てんなあ~! 出来上がりが楽しみだぜ」
良い香りがするので出来上がりはもうそろそろかと、オーブンの数字に目をやるとあと数分でケーキが焼き上がるようだ。
「ミスタ。 庭にいるフーゴとナランチャも呼んできてくれない?」
「おう、任せろ」
そして、私が2階で作業をしているというブチャラティを呼びに行こうとした時だった。
「おい! アバッキオ! ジョルノ!こいつはどういうことだ? 詳しく説明してもらおうか?
」
リビングの奥の方からブチャラティの大きな声が聞こえるので何事かと思うと、アバッキオが撮ってくれた写真を片手に彼とジョルノに怒っているではないか。
「全くお前たちときたら……俺のいない隙に凪子と一緒に写真を撮るなんて。羨ましいにも程があるぞ」
「まあまあ怒らないで、また皆で撮る機会があれば撮りましょうよ」
写真は他のメンバーに秘密にしておこうと思っていたのだが、どうやらブチャラティに見られてしまったらしい。
「ただ……忘れちゃあいけねえのが、俺達がギャングってことだけどな。顔写真みたいなもんが出回ったりすると任務に差し障りが出てくる可能性だってある」
当然のことかもしれないが、やはりアバッキオはちゃんと分かっていたのだ。分かった上で写真を撮ってくれたのだ。そう思うと急に目から涙が溢れそうになった。目頭がじんわりと熱い。泣くのはまずい、なんとか我慢しなくては。
「そうだ。アバッキオの言うとおりだ。ただ……」
「可愛くて可愛くて仕方の無いシニョリーナが望んでいるなら話は別、って言いたいんだろブチャラティ?」
「思い出の一枚くらい保存する権利はある筈ですからね」
ブチャラティは言いたいことは全て言われてしまったといった様な顔をして、フッと笑った。
「ああ、その通りだ。言いたいことはお前らが全て言ってくれたんでな。俺からは何も言うことはないさ」
そう言った彼の目はとても穏やかな色をしていた。
「おーい、フーゴたちを呼んできたぜえ~~~」
「ふぅ…庭仕事は疲れました……皆もう揃ってるんですね!お待たせしました 」
「凪子~~! 今日こそあーんって食べさせてくれよぉー!毎日ハーブの水やり頑張ってるからさー!」
ミスタがフーゴたちを連れて戻ってきたようだ。
「そうだね!バジルが大きくなったらピッツァを作ろうか。ナランチャの大好きなキノコがたくさん乗ってるやつ!」
「ほう、キノコか。ボルチーニ茸で頼む」
ああ。私は今間違いなく幸せだ。
ケーキとレモネードの甘い香りと大好きな人達の笑顔。
幸せに浸っているとオーブンの鳴る音がした。私はケーキが上手く焼けていることを願いながらキッチンへ戻ったのだった。
― Fin .
私は今ジョルノとアバッキオと三人でメルカートに来ている。カラフルで色鮮やかな野菜や果物、生ハムや様々な種類のチーズなども並んでいて目移りしそうだ。特に今朝採ったばかりだというレモンとオレンジがネアポリスの青空に良く映えて美しい。
「(今日のティータイムはオレンジのパウンドケーキとレモネードで決まりかな)」
「ねえ、このレモンとオレンジを使ってケーキとレモネードを作ろうと思うんだけど二人はどう思う?」
「良い香りですね。僕は賛成です」
「俺も賛成だ。あっちの店にブラッドオレンジもあったからそっちも見てみねえか?」
ブラッドオレンジは皮はオレンジをしているが果肉はその名の通り赤みが強く、味は甘さの中にほろ苦さがある。黄色いレモネードの差し色としてブラッドオレンジの赤い色が入ったらきっと綺麗だろう。私たちはレモンとオレンジをいくつか買ったあと、アバッキオの見つけたお店に向かいブラッドオレンジも少しだけ買うことにした。
「おい凪子、今日は珍しく鞄が膨れてるみたいだが何が入ってるんだ?」
「カメラだよ。せっかく早起きして出てきたから何か写真に残したいなと思って」
アバッキオに声をかけられていなければ危うくカメラの存在を忘れてしまうところであった。私は鞄の底に追いやられたそれを取り出すと、青空と市場のテントがフレームに収まるように調節しシャッターを切った。我ながら良く撮れていると思う。ジョルノとアバッキオにそれを見せると中々上手いじゃあないかと褒めてくれた。
天気も良いし景色も良いことなので皆で写真を撮りたいと思ったが、私たちはギャングだ。細心の注意を払うなら、顔写真等は残さない方が良いだろう。そう考えると一緒に写真を撮りたいなんてとてもじゃあないが言い出せなかった。
「凪子どうしたんです?」
「えっ?……ああ! 何にもないよ考えごとしてただけ」
「そう、それなら良いんですが」
切ない気持ちになったがここは我慢だ。今ある幸せを守るためにも我慢は必要だ。何たって今二人とこうして笑っていられるだけで、私にとって有り余るくらいの幸せなのだから。
「材料も揃ったしそろそろ帰ろう」
そう言おうとした時だった。
「おい凪子、手に持ってるそれちょっと貸せや」
「良いけど……何か撮るの? 」
「それから、二人とも並んでもう少し後ろに下がれ」
ジョルノに手を引かれ私は言われた通りに後ろに下がった。アバッキオは私のカメラを塀に置き、何か設定しているようだった。
「オラッ! てめーら! あと7秒だ!腑抜けたツラすんなよ!?」
「わああっ! セルフタイマー!?」
「落ちついて。いつもみたいに可愛く笑ってください」
カメラのボタンを押したアバッキオは素早くこちらへ移動し、私の左隣に立った。
3,2,1……ピピピピッ!タイマーの音と同時にシャッター音が鳴った。
「上手く撮れてると良いんだが……っと……大丈夫だな。ほらよ」
「アバッキオ……! ありがとう……!」
「撮影ありがとうございます。皆さん良い顔してますね」
カメラの画面にはいつも通りに澄ました顔のジョルノと右手をピースをして幸せそうに笑う私、少し照れ臭そうに目線を外すアバッキオの姿があった。
「本当にありがとう。こんな機能あったんだ!初めて知ったよ」
「ああ、テレビで見たときのを思い出してな」
「……テレビで見たやつなんですね」
嬉しい、嬉しいんだけれども……。どこか不安が芽生えた。もしかすると私がもやもやと思い悩んでいたことが顔に出ていて、彼らに気を使わせてしまったんじゃあないだろうか。そうだとすれば私はなんて子どもなんだろう……。しかし、そんなことを考えるとネガティブな気持ちがぐるぐる回るだけなので今はこれで良かったんだと気持ちを切り替える。せっかくアバッキオが私のためにセルフタイマーまで設定して撮影してくれたのだ、ジョルノの言うとおり皆良い顔をしているし。
「二人ともありがとう。宝物にするね!」
そう伝えると彼らは優しく微笑んだ。
「さあ、帰りましょうか。帰ってお茶の用意をしなくては」
「早く帰んねえとブチャラティのやつが凪子のことを探しに行くかもしれねえしな」
「ブチャラティ……気持ちは嬉しいけど……それはちょっと困ったなあ」
―――――――――――――――――――――――
アジトに帰還し、お茶の用意をしているとミスタがこちらにやって来た。
「良い香りがするなー。何作ってるんだ~~?」
「オレンジのパウンドケーキとレモネード。ただのレモネードじゃあないのよ? ブラッドオレンジも入ってるの! 綺麗でしょ? 」
「へえ。洒落てんなあ~! 出来上がりが楽しみだぜ」
良い香りがするので出来上がりはもうそろそろかと、オーブンの数字に目をやるとあと数分でケーキが焼き上がるようだ。
「ミスタ。 庭にいるフーゴとナランチャも呼んできてくれない?」
「おう、任せろ」
そして、私が2階で作業をしているというブチャラティを呼びに行こうとした時だった。
「おい! アバッキオ! ジョルノ!こいつはどういうことだ? 詳しく説明してもらおうか?
」
リビングの奥の方からブチャラティの大きな声が聞こえるので何事かと思うと、アバッキオが撮ってくれた写真を片手に彼とジョルノに怒っているではないか。
「全くお前たちときたら……俺のいない隙に凪子と一緒に写真を撮るなんて。羨ましいにも程があるぞ」
「まあまあ怒らないで、また皆で撮る機会があれば撮りましょうよ」
写真は他のメンバーに秘密にしておこうと思っていたのだが、どうやらブチャラティに見られてしまったらしい。
「ただ……忘れちゃあいけねえのが、俺達がギャングってことだけどな。顔写真みたいなもんが出回ったりすると任務に差し障りが出てくる可能性だってある」
当然のことかもしれないが、やはりアバッキオはちゃんと分かっていたのだ。分かった上で写真を撮ってくれたのだ。そう思うと急に目から涙が溢れそうになった。目頭がじんわりと熱い。泣くのはまずい、なんとか我慢しなくては。
「そうだ。アバッキオの言うとおりだ。ただ……」
「可愛くて可愛くて仕方の無いシニョリーナが望んでいるなら話は別、って言いたいんだろブチャラティ?」
「思い出の一枚くらい保存する権利はある筈ですからね」
ブチャラティは言いたいことは全て言われてしまったといった様な顔をして、フッと笑った。
「ああ、その通りだ。言いたいことはお前らが全て言ってくれたんでな。俺からは何も言うことはないさ」
そう言った彼の目はとても穏やかな色をしていた。
「おーい、フーゴたちを呼んできたぜえ~~~」
「ふぅ…庭仕事は疲れました……皆もう揃ってるんですね!お待たせしました 」
「凪子~~! 今日こそあーんって食べさせてくれよぉー!毎日ハーブの水やり頑張ってるからさー!」
ミスタがフーゴたちを連れて戻ってきたようだ。
「そうだね!バジルが大きくなったらピッツァを作ろうか。ナランチャの大好きなキノコがたくさん乗ってるやつ!」
「ほう、キノコか。ボルチーニ茸で頼む」
ああ。私は今間違いなく幸せだ。
ケーキとレモネードの甘い香りと大好きな人達の笑顔。
幸せに浸っているとオーブンの鳴る音がした。私はケーキが上手く焼けていることを願いながらキッチンへ戻ったのだった。
― Fin .