◇護衛チーム◆
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洗濯機が大きな音を立てて動いている。
少し緩んだ蛇口からぽたりと滴が落ち、彼女のお気に入りのサラダボウルにできた湖を揺らす。
繊細な花模様の入ったとびきり上等のやつだ。
テーブルの上には水の干上がった花瓶と潤いを無くし虚ろな姿になった花。
低く鳴り響く洗濯機の音も、滴で揺れる小さな湖も、生気を無くし萎れた花も
「 凪子………」
おそらくもう会うことのない、会うことが叶わなであろう彼女のことを想う
ぐちゃぐちゃにかき混ぜた蜂蜜みたいなどろどろの後悔とほんの少しの安堵が混じった自分の心みたいで
ざわざわしている癖に穏やかな、そんな自分でも理解し難い気持ちだ。
「 ……僕は間違ってない………」
僕はボートに乗ることが出来なかった。
そうするしかなかったのだ。
「 君は……凪子は僕と一緒に残ってくれると思っていたよ」
フーゴは細い指がすらりと伸びた手で萎れた花を握り締める。水分の完全に無くなった花弁がクシャリと音をたててパラパラと塵になっていく。
洗濯機が止まりアラームが鳴る。
フーゴは握り潰したかつて花だった物ををゴミ箱に捨てると、蛇口を捻り手を洗う。小さな湖は崩壊した。手についていた花弁の破片が溢れた水流に飲まれて暗い排水溝へ消えていった。
彼女もそうなるのだろうか。
そんなことを思いながら彼は不快な音を奏でる洗濯機に向かって歩いて行く。
取り出したのはじめじめと湿った凪子のお気に入りのナイトウエア。優しいミルクティーの色、レースやリボンが沢山付いて素敵だ。ローズの香りの柔軟剤はフーゴが彼女の為に選んできた物で仄かに妖艶な香りを漂わせている。
これは僕なりのおまじないなんだよ。
君が帰ってくるようにと、願をかけて。
もう何回洗ったか数えきれなくなってしまったけれど。
懐かしい足音が聞こえた気がした。
気のせいか。
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