第一章
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「ふぐゅ……ジルオさん助けてくれてありがとうございます……」
仄暗く、どこか黴臭いお仕置き部屋。
荒縄で縛られ吊るされたルトの身体をジルオがストンと床に降ろしてやれば、ルトは素直に礼を述べた。
「いや……あれは俺にも非があったからな……君とじゃれ合う前にきちんと不動卿へのお目通りを願うべきだった」
ルトを縛る荒縄は想像以上に結び目が固く、ほどく事を諦めたジルオは持っていたナイフで縄を手早く切断する。
まだ子どもとはいえ、裸体を直視するには抵抗があるのか、ジルオは目線を逸らしながら持ってきた着替えをルトへと手渡してやった。ルトは早速白いブラウスに腕を通し、ボタンを留めてゆく。
あの後、ジルオはオーゼンへと「すぐに挨拶する事ができず申し訳ありませんでした」と謝罪し、「不動卿、ルトの事を赦してやって頂けませんか?」と伺った。
それに対してオーゼンは軽々しくも何処か心のこもってない声音で「いいよー」と快諾してくれたのだが。
「でもなー、わざわざ仕置き部屋まで行っていちいちルトを床に降ろしてちまちま縄を解いてやるのが面倒だなー……あぁ、そうか。君がルトを赦して欲しいと願うのなら、君自身でルトの事を助けてくれたまえよ」
「え」
至極意地の悪い、それでいて愉悦に満ちた表情でオーゼンは言い放った。
……わざわざ服をひん剥いて縛り上げるのは面倒ではなかったのだろうか、などとジルオは暫し思案を巡らせたのだが、オーゼンは『不動卿』の名の如くどっかりと座り込んだまま、全く動く気配を見せず。……流石、動かざるオーゼンと言うべきか。
ジルオがどうしたものか、と悩み迷えば「どうしたんだい?ルトを助けたいなら早く行ってやりなよ、放っておいたら風邪を引くかもしれなかろう?」と口元をニンマリと歪めたオーゼンに煽られて……そして、今に至る。
「しかしなぁ、ルト。助けにきた俺に向かって開口一番『覗きにきたんですか?』はないだろう……!」
そんなジルオが気恥ずかしさやら気まずさやらを覚えつつもルトへの救出へと向かえば、真っ裸のルトが真顔で言い放ったこの言葉。
思わず「覗きの趣味なぞ俺にはない!!」とジルオは反射的に返したが、それに対する「えぇー……?」という若干不満気なルトの声は一体全体なんだったのか。
「……だって。男の人はみんな女性の裸が好きなんじゃないんですか?」
「誰から聞いた、そんな事」
「えーと。ノラさん……でしたかね?」
「……………ほぅ?」
ルトの口から出たのは、ジルオより三つ年上の兄貴分であるベルチェロ孤児院・蒼笛クラスリーダーの名前。
アイツはまだ幼いルトに何を言っているんだ、と眉間に皺を寄せてがくりと項垂れれば「ジルオさん、ジルオさん」とルトに小さく袖を引かれた。
「……ぱんつが、ないです」
「……………。」
ルトの言葉に顔を上げれば上半身はブラウスオンリー、下半身はありのままの股間を露呈しているルトの姿が。
もちろん、ここには露出した股間を都合良く隠してくれるような眩く光る修正エフェクトなど存在していない。
一瞬、一瞬だけ。ポカンとした表情でフリーズしたジルオだったが、すぐさまルトの霰もない姿からバッ!!と顔を逸らした。
お仕置き部屋が薄暗くて助かった。俺は『何も』見ていない……『何も』見えていない……!ジルオはそう心に必死に言い聞かせる。
「~~っ、っ!すまない!!い、今探して持ってきてやるから!少しの間だけ待っていてくれ!!」
そう声を荒らげてジルオはドタバタ、バタン!とルトのぱんつを探すべく慌ただしくお仕置き部屋を飛び出した。それはもう弾丸のように勢いよく飛び出して駆け出した。……そこまでは良かったのだが。
ジルオは、はたと気づいてしまった。
「しまった、ルトの居室がどこなのか……俺は知らないではないか……!」
何たる迂闊。何たる失態。
くそ……っ!とジルオは頭を抱え込んだが、すぐに解決策を思いついた。
「そ、そうだ……!物干し場に行けばそこに洗濯物として干してあるのでは?!!」
物干し場の場所なら記憶にある。ジルオはすぐさま全速力で物干し場へ向かった。
確かにそこに下着は有った。干してあった。
だが、ジルオの目に映るそれらは黒レースをふんだんに使った高級そうなモノや、紫色をしたサテン生地の色っぽいモノ、紅色をした紐状の……それは最早一体何をどう隠すんだ?!とツッコミを入れたくなるようなモノ……総じて豪華絢爛で淫靡な雰囲気を纏うモノばかり。
例えるならそれらは恐らく特級遺物。断じてルトが身につけるようなモノではない。
いや、だが、これだけたくさんの下着が干されているのなら一枚くらいルトが使用しているものがあるだろう、というか、特級遺物は沢山あるのに何故ルトが身につけるような四級遺物クラスが見つからないのだ?!とジルオが半ば錯乱状態に陥れば、背後から突然声を掛けられた。
「おや?ジルオじゃないか」
「おー、久しぶりじゃーん」
「元気にしとったかの?」
そこに居たのは黒笛である壮年男性のシムレドと、月笛である青年男性のイェルメ、そして、ザポ爺――オーゼンの探窟隊『地臥せり』の面々だった。
「み、皆さんお久しぶり、です……!」
挨拶を返しながら、ジルオの血の気がサーッと引いた。
これは、もしかしなくともとてつもなく怪しい姿を見られてしまったのでは……?!とジルオが狼狽すれば、シムレドが僅かに首を傾げる。
「ところでジルオ、真剣な顔で上を見上げて……一体何をしてたんだ?」
「なっ?!何を……と言います、か……っ!」
言いよどむジルオの頭上にはヒラヒラと風に揺られる華やかな『遺物』たち。
「あー……何っつーか。わかるわかる。……良い眺めだよなぁ?」
ニヤついたイェルメが馴れ馴れしくジルオの肩に腕を回せば、ザポ爺も「ひょっひょ、若いっていうのはいいことじゃのぉ」とウンウン頷いた。
これは……早く誤解を解かなければ……!と焦ったジルオは必死の思いで弁解する。
「ち、違うんです!!お、俺が求めているのは特級遺物ではなく四級遺物……っ、~~じゃなくって!俺はただルトのぱんつを取りにきただけでして……っ!」
「……え。まさかおまえルトちゃんのぱんつ、ちょろまかしにきたん?」
「ちょろ……っ?!」
……必死の弁解が余計な誤解を産んだ。
イェルメの言葉にジルオは顔を赤くして声を失っている。
普段のジルオは冷静沈着な男だ。
そんな彼がここまで取り乱す、というのは……中々に珍しく面白いものだな?と地臥せりたちはにんまりと顔を見合わせた。
「そっかー……ジルオってばこういった色っぽいんよりルトちゃんの素っ気ない白いぱんつの方がお好みかー……」
「まぁ……嗜好は人それぞれではあるがな。ただ……俺にとってルトは『娘』のような存在だ。そのルトの下着をちょろまかすような真似は……流石にちょっと……」
「そもそも『遺物』のちょろまかしは御法度じゃしのぉ?」
「ままままま待ってください誤解です!!」
地臥せりたちのからかい半分な言葉にジルオの声がひっくり返る。
と、そこに響いた「ジルオさーん、」という幼い呼び声。
ジルオが「な?!!」と振り返り、ルトの姿を確認すれば……彼女はきちんと茶色のサロペットを身につけていて。
その姿にジルオは心底ホッとして胸を撫で下ろした……のだが。
「ルト?!待て君!ぱんつはどうした!?」
「??安心してください、はいてますよ?」
「じゃなくてだ!……ルト、君は……まさか……!」
「えっと。ジルオさんがなかなか戻って来なかったので。自分で取りに行きました」
「あの格好でか?!」
「はい。私の部屋、お仕置き部屋の隣なので。……まぁ、仮に誰かに見られたとしても減るものでもないですし。別に良いかなーって」
「何も良くはないな?!」
真顔でのほほんと話す少女には所謂『羞恥心』というものが足りていないようで。
「なんだ、ルト。おまえもしかしてまたオーゼンさんに吊るされていたのか」
「はい。ジルオさんが来た事をすぐに伝えなかったら、怒られまして」
「オーゼンさんも大人気ないのぉ」
「あー、だからジルオはルトちゃんのぱんつを探してたってわけかー」
何が有ったか全てを察した地臥せりたちと、何事も無かったかのようであるルトは安穏と会話を交わしているが……。
(……何だか……どっと疲れた……)
ジルオはがっくりと肩を落としてため息を吐く。
孤児院で悪戯ばかりを繰り返す子どもたちを叱りつける時とはまた違う、何とも言えない疲労感を味わった……そんな気がした。
仄暗く、どこか黴臭いお仕置き部屋。
荒縄で縛られ吊るされたルトの身体をジルオがストンと床に降ろしてやれば、ルトは素直に礼を述べた。
「いや……あれは俺にも非があったからな……君とじゃれ合う前にきちんと不動卿へのお目通りを願うべきだった」
ルトを縛る荒縄は想像以上に結び目が固く、ほどく事を諦めたジルオは持っていたナイフで縄を手早く切断する。
まだ子どもとはいえ、裸体を直視するには抵抗があるのか、ジルオは目線を逸らしながら持ってきた着替えをルトへと手渡してやった。ルトは早速白いブラウスに腕を通し、ボタンを留めてゆく。
あの後、ジルオはオーゼンへと「すぐに挨拶する事ができず申し訳ありませんでした」と謝罪し、「不動卿、ルトの事を赦してやって頂けませんか?」と伺った。
それに対してオーゼンは軽々しくも何処か心のこもってない声音で「いいよー」と快諾してくれたのだが。
「でもなー、わざわざ仕置き部屋まで行っていちいちルトを床に降ろしてちまちま縄を解いてやるのが面倒だなー……あぁ、そうか。君がルトを赦して欲しいと願うのなら、君自身でルトの事を助けてくれたまえよ」
「え」
至極意地の悪い、それでいて愉悦に満ちた表情でオーゼンは言い放った。
……わざわざ服をひん剥いて縛り上げるのは面倒ではなかったのだろうか、などとジルオは暫し思案を巡らせたのだが、オーゼンは『不動卿』の名の如くどっかりと座り込んだまま、全く動く気配を見せず。……流石、動かざるオーゼンと言うべきか。
ジルオがどうしたものか、と悩み迷えば「どうしたんだい?ルトを助けたいなら早く行ってやりなよ、放っておいたら風邪を引くかもしれなかろう?」と口元をニンマリと歪めたオーゼンに煽られて……そして、今に至る。
「しかしなぁ、ルト。助けにきた俺に向かって開口一番『覗きにきたんですか?』はないだろう……!」
そんなジルオが気恥ずかしさやら気まずさやらを覚えつつもルトへの救出へと向かえば、真っ裸のルトが真顔で言い放ったこの言葉。
思わず「覗きの趣味なぞ俺にはない!!」とジルオは反射的に返したが、それに対する「えぇー……?」という若干不満気なルトの声は一体全体なんだったのか。
「……だって。男の人はみんな女性の裸が好きなんじゃないんですか?」
「誰から聞いた、そんな事」
「えーと。ノラさん……でしたかね?」
「……………ほぅ?」
ルトの口から出たのは、ジルオより三つ年上の兄貴分であるベルチェロ孤児院・蒼笛クラスリーダーの名前。
アイツはまだ幼いルトに何を言っているんだ、と眉間に皺を寄せてがくりと項垂れれば「ジルオさん、ジルオさん」とルトに小さく袖を引かれた。
「……ぱんつが、ないです」
「……………。」
ルトの言葉に顔を上げれば上半身はブラウスオンリー、下半身はありのままの股間を露呈しているルトの姿が。
もちろん、ここには露出した股間を都合良く隠してくれるような眩く光る修正エフェクトなど存在していない。
一瞬、一瞬だけ。ポカンとした表情でフリーズしたジルオだったが、すぐさまルトの霰もない姿からバッ!!と顔を逸らした。
お仕置き部屋が薄暗くて助かった。俺は『何も』見ていない……『何も』見えていない……!ジルオはそう心に必死に言い聞かせる。
「~~っ、っ!すまない!!い、今探して持ってきてやるから!少しの間だけ待っていてくれ!!」
そう声を荒らげてジルオはドタバタ、バタン!とルトのぱんつを探すべく慌ただしくお仕置き部屋を飛び出した。それはもう弾丸のように勢いよく飛び出して駆け出した。……そこまでは良かったのだが。
ジルオは、はたと気づいてしまった。
「しまった、ルトの居室がどこなのか……俺は知らないではないか……!」
何たる迂闊。何たる失態。
くそ……っ!とジルオは頭を抱え込んだが、すぐに解決策を思いついた。
「そ、そうだ……!物干し場に行けばそこに洗濯物として干してあるのでは?!!」
物干し場の場所なら記憶にある。ジルオはすぐさま全速力で物干し場へ向かった。
確かにそこに下着は有った。干してあった。
だが、ジルオの目に映るそれらは黒レースをふんだんに使った高級そうなモノや、紫色をしたサテン生地の色っぽいモノ、紅色をした紐状の……それは最早一体何をどう隠すんだ?!とツッコミを入れたくなるようなモノ……総じて豪華絢爛で淫靡な雰囲気を纏うモノばかり。
例えるならそれらは恐らく特級遺物。断じてルトが身につけるようなモノではない。
いや、だが、これだけたくさんの下着が干されているのなら一枚くらいルトが使用しているものがあるだろう、というか、特級遺物は沢山あるのに何故ルトが身につけるような四級遺物クラスが見つからないのだ?!とジルオが半ば錯乱状態に陥れば、背後から突然声を掛けられた。
「おや?ジルオじゃないか」
「おー、久しぶりじゃーん」
「元気にしとったかの?」
そこに居たのは黒笛である壮年男性のシムレドと、月笛である青年男性のイェルメ、そして、ザポ爺――オーゼンの探窟隊『地臥せり』の面々だった。
「み、皆さんお久しぶり、です……!」
挨拶を返しながら、ジルオの血の気がサーッと引いた。
これは、もしかしなくともとてつもなく怪しい姿を見られてしまったのでは……?!とジルオが狼狽すれば、シムレドが僅かに首を傾げる。
「ところでジルオ、真剣な顔で上を見上げて……一体何をしてたんだ?」
「なっ?!何を……と言います、か……っ!」
言いよどむジルオの頭上にはヒラヒラと風に揺られる華やかな『遺物』たち。
「あー……何っつーか。わかるわかる。……良い眺めだよなぁ?」
ニヤついたイェルメが馴れ馴れしくジルオの肩に腕を回せば、ザポ爺も「ひょっひょ、若いっていうのはいいことじゃのぉ」とウンウン頷いた。
これは……早く誤解を解かなければ……!と焦ったジルオは必死の思いで弁解する。
「ち、違うんです!!お、俺が求めているのは特級遺物ではなく四級遺物……っ、~~じゃなくって!俺はただルトのぱんつを取りにきただけでして……っ!」
「……え。まさかおまえルトちゃんのぱんつ、ちょろまかしにきたん?」
「ちょろ……っ?!」
……必死の弁解が余計な誤解を産んだ。
イェルメの言葉にジルオは顔を赤くして声を失っている。
普段のジルオは冷静沈着な男だ。
そんな彼がここまで取り乱す、というのは……中々に珍しく面白いものだな?と地臥せりたちはにんまりと顔を見合わせた。
「そっかー……ジルオってばこういった色っぽいんよりルトちゃんの素っ気ない白いぱんつの方がお好みかー……」
「まぁ……嗜好は人それぞれではあるがな。ただ……俺にとってルトは『娘』のような存在だ。そのルトの下着をちょろまかすような真似は……流石にちょっと……」
「そもそも『遺物』のちょろまかしは御法度じゃしのぉ?」
「ままままま待ってください誤解です!!」
地臥せりたちのからかい半分な言葉にジルオの声がひっくり返る。
と、そこに響いた「ジルオさーん、」という幼い呼び声。
ジルオが「な?!!」と振り返り、ルトの姿を確認すれば……彼女はきちんと茶色のサロペットを身につけていて。
その姿にジルオは心底ホッとして胸を撫で下ろした……のだが。
「ルト?!待て君!ぱんつはどうした!?」
「??安心してください、はいてますよ?」
「じゃなくてだ!……ルト、君は……まさか……!」
「えっと。ジルオさんがなかなか戻って来なかったので。自分で取りに行きました」
「あの格好でか?!」
「はい。私の部屋、お仕置き部屋の隣なので。……まぁ、仮に誰かに見られたとしても減るものでもないですし。別に良いかなーって」
「何も良くはないな?!」
真顔でのほほんと話す少女には所謂『羞恥心』というものが足りていないようで。
「なんだ、ルト。おまえもしかしてまたオーゼンさんに吊るされていたのか」
「はい。ジルオさんが来た事をすぐに伝えなかったら、怒られまして」
「オーゼンさんも大人気ないのぉ」
「あー、だからジルオはルトちゃんのぱんつを探してたってわけかー」
何が有ったか全てを察した地臥せりたちと、何事も無かったかのようであるルトは安穏と会話を交わしているが……。
(……何だか……どっと疲れた……)
ジルオはがっくりと肩を落としてため息を吐く。
孤児院で悪戯ばかりを繰り返す子どもたちを叱りつける時とはまた違う、何とも言えない疲労感を味わった……そんな気がした。