本編
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「ほら!こっちこっち!!はやくしないと、先生にみつかっちゃう!!」
「……ま、まってよ!ら、らむだくん……」
時は過ぎて、すっかり日の傾いた夕方のこと。僕は麻子の手を引いて、保育園から少し離れたところの道路を走っていた。麻子は運動神経が悪くて、しょっちゅう転びそうになっているけれど、僕に導かれるままに走っている。怯えてはいるが、彼女もこの非日常のドキドキを楽しんでいるのだろう。僕を見るきらきらとした瞳がたまに目に入ると、何だか僕も楽しくなってきた。ぱたぱたと走って、たまに保育園を抜け出すときに寄る公園へと向かう。
「ついた!ここだよ、麻子ちゃん!」
「はぁ、ちょっと、らむだくん、はやい…………うわぁ……」
麻子が顔を上げると、障害物のない広い空に沈む夕日で、上から地面までが一面オレンジ色に染まっている光景が広がっていた。麻子は目を大きく見開いて、何も言わず目の前に広がる絶景に感動しているようだった。ここまで喜ばれると、こちらも連れてきたかいがあるというものだ。思わず素の顔で笑顔がこぼれる。
「……ねっ、キレイでしょ?ここ、僕の特等席なんだー♪」
「ほんとうだね……ありがとう、らむだくん……」
ようやく彼女の視線が夕陽からこちらへと移ったと思ったら、その目にはうっすらと涙が滲んでいた。まさか泣いているとは思わず、少しだけ戸惑うが、おくびにも出さない。「……もー、麻子ちゃんったら泣き虫!」といつもの調子で茶化して、涙を拭うと、彼女は頬をやんわりと綻ばせて、嬉しそうに笑った。夕陽に照らされる、その濡れた瞳を目に映して、僕は初めて、人間に対して美しいという感情を抱いた。まるで、胸が柔らかく締め付けられるような、その感覚が恋だと知るのは、もう少し先の話。そしてそれが、自分でも制御できないほどに、膨らんでいくことになるのも──もう少し先のお話。
「……ま、まってよ!ら、らむだくん……」
時は過ぎて、すっかり日の傾いた夕方のこと。僕は麻子の手を引いて、保育園から少し離れたところの道路を走っていた。麻子は運動神経が悪くて、しょっちゅう転びそうになっているけれど、僕に導かれるままに走っている。怯えてはいるが、彼女もこの非日常のドキドキを楽しんでいるのだろう。僕を見るきらきらとした瞳がたまに目に入ると、何だか僕も楽しくなってきた。ぱたぱたと走って、たまに保育園を抜け出すときに寄る公園へと向かう。
「ついた!ここだよ、麻子ちゃん!」
「はぁ、ちょっと、らむだくん、はやい…………うわぁ……」
麻子が顔を上げると、障害物のない広い空に沈む夕日で、上から地面までが一面オレンジ色に染まっている光景が広がっていた。麻子は目を大きく見開いて、何も言わず目の前に広がる絶景に感動しているようだった。ここまで喜ばれると、こちらも連れてきたかいがあるというものだ。思わず素の顔で笑顔がこぼれる。
「……ねっ、キレイでしょ?ここ、僕の特等席なんだー♪」
「ほんとうだね……ありがとう、らむだくん……」
ようやく彼女の視線が夕陽からこちらへと移ったと思ったら、その目にはうっすらと涙が滲んでいた。まさか泣いているとは思わず、少しだけ戸惑うが、おくびにも出さない。「……もー、麻子ちゃんったら泣き虫!」といつもの調子で茶化して、涙を拭うと、彼女は頬をやんわりと綻ばせて、嬉しそうに笑った。夕陽に照らされる、その濡れた瞳を目に映して、僕は初めて、人間に対して美しいという感情を抱いた。まるで、胸が柔らかく締め付けられるような、その感覚が恋だと知るのは、もう少し先の話。そしてそれが、自分でも制御できないほどに、膨らんでいくことになるのも──もう少し先のお話。