ストロベリーブロンド

「ずっと言えなかったんですけど、俺、女の子と一緒に登下校するのが夢だったんですよ。」

「えっ、じゃあ最初にそれを提案したのって、それが目的だったとか?」

「いや!まさか!そんなつもりないっス!本当に反省してるってキモチはありましたよ!けど…」

「けど…?」

「嬉しかったです、正直…。」

ほんわーと顔を緩める桜木くんとお付き合いすることになったなんて、まだ少し信じられない。
保健室を出ていつもの自転車置き場につくと、もう日も暮れていくところだった。

「実は自転車、もう新しいのが届いたんだよね。」

「え!?そうなんですか!?」

ガックリと肩を落とす彼は、さっきからひとりでコロコロと表情を変えるのに忙しい。

「でもさ、もしよかったらなんだけど…明日も迎えに来てくれませんか?」

「行きます、絶対行きます!」

今度は目をキラリと光らせる。考えていることがすべて透けて見えるようで、わかりやすくて面白い。


「あともう敬語じゃなくていいよ。名前も…その、呼び捨てでいいよ。」

言っている途中で恥ずかしくなってくる。目の前にいる桜木くんの方が、緊張したように唇をぎゅっと一文字に結んでいるからだ。

「えっと、○○…      さん!」

「あ、また言った。」

「あー!もう!時間かけてちょっとずつ慣れるんで、もうちょっと待ってろ、よ、ください…。
 ん?」

はてなマークを浮かべる桜木くんについつい吹き出す。

「うん、だね!ゆっくりね。」

それを待っている時間は、きっととても素敵なものになるだろう。
いつか気楽な恋人同士になったわたしたちを想像して、とても胸があたたかくなるのを感じた。

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