long time no see!
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「よお花道。…って何だよ、なんで朝からそんなキレて…」
「洋平ぃぃ!!てんめぇ許さねーーーー!!!」
廊下で会うなりドスドスと足音を立て、周囲を蹴散らしながら大柄な男が向かってくる。
朝のホームルーム前に会った花道は、なぜかすでに激怒していた。
洋平は戸惑うも、みるみる顔が青ざめていく。
「なんかあったのか?」
「さあ…」
大楠たちも顔を見合わせるが、心当たりがないといった表情だ。
「アレだよ!アレ!
アレのせいで俺がどんな目に遭ったか…」
「アレってなんだよ?」
「お前が昔、俺に貸したエロビデオの話だよ!!
あれのせいで昨日なあ…!!」
「わーわー!!お前そんなデケー声で…
ちょっと屋上で話そうぜ!!な!!」
廊下には当然女子もいて、怪訝そうな顔でこちらをチラチラ見ている。
まわりが見えなくなっている花道の口を塞ぎ、屋上へ連れ出したが、残された仲間達はますます意味が分からない。
「なんの話?エロビデオがどうとか…」
「それで何で怒るのかが分からん…」
しばし顔を見合わせたが、どうせくだらないことだろうと言って笑い合った。
「…で、何の話だよ花道。」
屋上の扉を閉め振り返った洋平の目は、花道を睨んでいた。
いつもは温厚そうな洋平だが、怒らせると怖いのはよく知っている。
意味の分からないことでキレられて、早く説明しろといわんばかりに顎をしゃくり上げる。
この道中で少しだけ冷静になった花道は、しょぼんとした犬のように目線を落とす。
「なぁ…前にちょっと話した、幼なじみの姉貴のこと、覚えてるか?」
「ああ、大学生のオネーサンだろ?」
以前の晴子とのデートのことを聞かれたとき、桜木軍団にもなりゆきで、美奈子のことを話していたのだ。
そして昨日の夜に、酔った美奈子と会ったこと、二人でベッドに横になったとき、美奈子に妙に緊張してしまったこと、その状況で例のビデオの事を思い出してしまい、とにかく大変だったこと等を洗いざらい話した。
誰かに聞いてもらいたかったというのもあるし、このおかしな気持ちを相談したかったのかもしれない。
一通り聞いてくれた洋平は、茶化すでもなく意外に淡々としていた。
「それでお前どうしたの?まさか襲ったとか?」
「襲う…?ば、馬鹿!そんなことするわけねぇだろ!!」
こんな厳つい見た目に反して、顔を赤くして反論する花道は、ギャップがありすぎると洋平は思う。
こういうウブなところがかわいい、と内心では思っているが、本人には言わないでいる。
「でもシャツをつかまれてたんだろ?そのまま生殺し状態で寝たのか?」
「…げた」
「は?」
「だから!…シャツだけ脱いで、そのまま逃げた。」
「ぶはっ」
一瞬ぽかんとしたが、その意味が分かった途端におかしくなり吹き出した。
要する、蛇のぬけがらのようにシャツだけを残して帰ったわけだ。
その姿を想像しただけで、十分面白い。
「ぐぬぬ笑うなあ!!天才の考えた最高の策だぞ!!」
「たしかに、その発想は普通ねえな!!こりゃ…まじでおもしれえわ!!!
花道、俺のビデオに逆ギレしようとしたことはこれでチャラにしてやるっ!」
ひーひーとひとしきり笑った後、洋平は小さく咳払いする。
そして、少し真面目な顔になって言う。
「…けどよ花道、お前は晴子ちゃんが好きなんだろ?
本気でそうなら、オネーサンとは2人で会わないほうがいいんじゃねえの?」
「俺はハルコさんが好きだ!!
けどなぜだ?俺は姉貴のことは別に女としてみてな…」
「みたんだろ?昨日。」
「ぐ…あれはただ、ちょっと驚いただけで…
次会ったら、普通に話す!なんにも感じねー。」
「そうか、ならいいけどよ。
でもその状況、もしオネーサンが起きてたんなら誘ってたんじゃねーの?
…ま、俺なら確実に手ェ出しちゃってると思うけど。」
洋平は冗談か本気かわからないような笑みを浮かべ、「行くぞ」といいながら先に階段を降りる。
「…マジ?」
普通に考えても、泥酔した相手を…というのは少々危ない思考な気がするが…。
一人残された花道は、邪念をふりきるようにぶんぶんと頭を振った。
そして空を見上げ、美奈子が目を覚ましたときどんな反応をしたかを想像していた。
自分が保てそうにないからという、そんなよこしまな理由で酔った彼女を放置して帰ってしまったことが気がかりで、昨日は家に帰ってもあまり眠れなかった。
寝不足に空の青が、チカチカと刺さる。
「姉貴…どうしてっかな。」
今日大学にいくなら、ちゃんと起きられたのだろうか。
もしかしたら「カガミ」が来て、起こしているかもしれないが、そうでなければ…と思うとどうしても心配を拭えないでいた。
部活の後に一度訪ねてみることを決め、洋平の後を追った。