long time no see!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
姉貴の住むアパートは、バスケットコートから歩いて3分もかからなかった。
ワンルームに小さなキッチンのついたアパートはクラシカルな外装で、いかにも女性の一人暮らしといった雰囲気だった。
部屋のなかは閑散としていて、最低限のものしかないという印象だ。
座って、と小さなテーブルの前に案内される。
丸いテーブルには、いくつかの化粧品とコンパクトな鏡が置かれている。
姉貴はその鏡を俺の前に置くと、後ろに立って髪を梳かし始める。
すでに少しパーマをかけている髪を、見よう見まねで整えていく。
時折、
「こうかな?」
「こんな感じ?」
と、ひとりごとをいいながら変な方向に髪を持っていく姉貴に、気づかれないように笑いをこらえた。
しかしそんな不安そうな言葉とは裏腹に、気づくと髪型は元どおりになっていた。
最後にスタイリング剤を吹いて、
「できた!」
とうれしそうに声を上げた。
「どう?花!」
「おー…いいんじゃね。」
床屋以外の人間に頭を触られるのは初めてで、なんだか照れくさい。
プロの慣れた手つきと違い、素人の手つきはくすぐったくて、終始変な感じだった。
「あんがとよ。…まぁ元はといえば姉貴がやったんだから、直すのはトーゼンだけど?」
「素直じゃ無いなあ。おねーちゃんと床屋さん遊び出来て楽しかったクセに。」
「…ッチ。子ども扱いすんなよな。
じゃ、俺もう朝練いくわ。遅刻するとキソ練ばっかやらされるからよ!」
「ふふ、頑張ってね。」
そしてそのまま姉貴は、部屋の中で俺を見送った。
時間が押していたので、急いで部屋を出て走り出したのだが、走りながらふと思った。
なぜアイツは一緒に家を出なかったのだろう…。
これから大学に行くところを出会ったというのだから、一緒に家を出てもいいはずなのに。
さっき外で話した時からはずいぶん時間が経ってしまっている。
それなのに姉貴は、コーヒーを入れるためのお湯まで沸かしていた。
「なんなんだよ、この違和感は…」
再会してから、彼女の笑顔に何度も感じる違和感。
10年も経っているのだから、見た目が変わっているのは当然だ。
だけど一番違うのは…
あの元気で明るかった姉貴が、今は物憂げな表情ばかりしている。
笑顔ではいるけれど、なにかずっと隠し事をされているような、そんな少し寂しい気持ちにさせられるのはなぜだろう。
それを思い出すと、幼い姉貴が時折さみしげな顔をみせるときのように、胸がぎゅっとなるのだった。
ワンルームに小さなキッチンのついたアパートはクラシカルな外装で、いかにも女性の一人暮らしといった雰囲気だった。
部屋のなかは閑散としていて、最低限のものしかないという印象だ。
座って、と小さなテーブルの前に案内される。
丸いテーブルには、いくつかの化粧品とコンパクトな鏡が置かれている。
姉貴はその鏡を俺の前に置くと、後ろに立って髪を梳かし始める。
すでに少しパーマをかけている髪を、見よう見まねで整えていく。
時折、
「こうかな?」
「こんな感じ?」
と、ひとりごとをいいながら変な方向に髪を持っていく姉貴に、気づかれないように笑いをこらえた。
しかしそんな不安そうな言葉とは裏腹に、気づくと髪型は元どおりになっていた。
最後にスタイリング剤を吹いて、
「できた!」
とうれしそうに声を上げた。
「どう?花!」
「おー…いいんじゃね。」
床屋以外の人間に頭を触られるのは初めてで、なんだか照れくさい。
プロの慣れた手つきと違い、素人の手つきはくすぐったくて、終始変な感じだった。
「あんがとよ。…まぁ元はといえば姉貴がやったんだから、直すのはトーゼンだけど?」
「素直じゃ無いなあ。おねーちゃんと床屋さん遊び出来て楽しかったクセに。」
「…ッチ。子ども扱いすんなよな。
じゃ、俺もう朝練いくわ。遅刻するとキソ練ばっかやらされるからよ!」
「ふふ、頑張ってね。」
そしてそのまま姉貴は、部屋の中で俺を見送った。
時間が押していたので、急いで部屋を出て走り出したのだが、走りながらふと思った。
なぜアイツは一緒に家を出なかったのだろう…。
これから大学に行くところを出会ったというのだから、一緒に家を出てもいいはずなのに。
さっき外で話した時からはずいぶん時間が経ってしまっている。
それなのに姉貴は、コーヒーを入れるためのお湯まで沸かしていた。
「なんなんだよ、この違和感は…」
再会してから、彼女の笑顔に何度も感じる違和感。
10年も経っているのだから、見た目が変わっているのは当然だ。
だけど一番違うのは…
あの元気で明るかった姉貴が、今は物憂げな表情ばかりしている。
笑顔ではいるけれど、なにかずっと隠し事をされているような、そんな少し寂しい気持ちにさせられるのはなぜだろう。
それを思い出すと、幼い姉貴が時折さみしげな顔をみせるときのように、胸がぎゅっとなるのだった。