long time no see!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
10年間一度も会うことが無かったのに、二度目の再会はすぐにやってきた。
「花?」
「お?姉貴じゃんか」
なんとなく日課になっている、朝練前の秘密特訓。
近所のバスケットコートで練習し、少し端のほうで休んでいた俺を呼ぶ声がする。
振り向くと、そこには私服姿の姉貴がいた。
早朝にもかかわらず、タイトめなワンピースにヒールのある靴。前回会ったときとはまるで違う姿に、少し戸惑った。
今から大学にでも行くところなんだろうか。
「こんな早くから練習してるの?すごいなあ早起きで。」
「いや早起きは姉貴もだろ。こんな時間から大学行くのか?」
何気なく聞いただけなのに、突然姉貴は戸惑ったように目線を泳がす。
「あ、うん、そうなの。今日はちょっと早く行く用事があって…」
「?おう、そっか。」
反応に違和感を感じたが、言葉のままに受け取る。
日は昇ったとはいえまだ早朝だ。きっと眠いんだろう。俺だって眠い。
雰囲気を変えたくて、姉貴に向かってボールを投げてみる。
驚きながらも、タイミングよくボールをキャッチした彼女は、昔と変わらず運動神経はいいらしい。
「わ、びっくりした!」
「バスケ部なんだろ?
ま、まあ俺は天才だから手本がひつよーとかそういうんじゃねーけどよ!
姉貴の実力だめしっつーかなんつーか…」
言い終わる前に、彼女は走り出していた。
なめらかなドリブルでゴール下に入っていき、ふわっと飛んだと思うと、手から離れたボールはするりとゴールに吸い込まれていった。
要するに、庶民ゴールってやつだ。
しかしその姿に、なぜか目が離せなかった。
初めてルカワのゴールに目を奪われたときのような、そんな感覚。
視線を反らせずにいると、振り返った姉貴がにっこり笑う。
「入ったあ!
うーん、でも、さすがにこの靴で走るのは難しいわ。
花、おしゃれしてる女の子のことはちゃんと気遣わないと、ハルコちゃんは振り向いてくんないよ?」
「…るっせーな!!
イヤなゴール決めやがるぜ姉貴!!!
おかげでどっかの狐ヤロウのこと思い出しちまった。」
「え?誰のこと?」
そのまま成り行きで姉貴に、ルカワのことを話した。
バスケをはじめたきっかけがハルコさんであったこと、そしてハルコさんがルカワのことが好きなこと。
それを知っていても、ハルコさんが好きなことも…
ふんふんと聞いてくれる姉貴は、昔の関係性もあってか話しやすい。
「そうだったんだ。
わたしから見ると…花とあの子はすごくお似合いだったけどな。
…だけど、その流川って子は女子から人気があるんでしょ?
ただの憧れっていう可能性もあるよ。
女の子ってそういう、芸能人のおっかけしたがるような気持ちと、恋愛とは別に考えてるところあるし。」
「いや、でもハルコさんにはっきり言われたンだよ。”片思いなの…”って」
ハルコさんの可愛い仕草と声まねで、いかに彼女が本気っぽいのかを伝えようとする。やっていて自分でも、ちょっと照れたのは秘密にしたい。
「そっかあ… その流川って子のことはわかんないけど、花も結構イケてると思うんだけどなあ?
まずその50回連続失恋?とか、信じられない。
…やっぱりこの髪型?」
うーんと小首をかしげながら、じっと俺の頭を見る。
…嫌な予感がする。
「こうしちゃえ!」
えいっと、俺が朝から丹精を込めてセットしたリーゼントをくしゃくしゃにする。
「ああ!!なにすんだ姉貴!!!」
「髪型変えてみたら?
今はちょっと長めのさらさらヘアーが流行ってるのよ!」
「げ、なんだソレ。男女みたいじゃねーか!
ぜってーやだ!!
しかもそんなん俺に似合うのかよ!!」
「えーと、似合わないかも…」
「ふぬーーーーーー!!!」
昔の姉貴なら、
「わたしが切ってあげるね?」
なんて命令口調で言いそうなものだが、今は軽やかに冗談をいって笑っている。
「ごめんごめん」
言いながら、俺の頭をペタペタと触り、元に戻そうとする。
そんな風に頭をいじられるのがなぜか心地よくて、自ら頭を差し出してみる。
「ん。…崩したんだから責任持って戻せよな。」
「え?無理!わたし男の子の髪のセットとかやったことない!」
「るせー。姉貴が悪い。
俺が朝から丹精込めてセットしたこの髪をよぅ…」
泣きそうなフリをして訴えると、困ったな、と眉をひそめてただただ戸惑っていた。
そして出した結論はこうだ。
「うーん、じゃあ、ちょっとうちに寄ってく?
うちに戻ればコームもあるし、スタイリング剤もあるから、直せるかも…」
おもむろに姉貴がコートの外のほうを指さす。
たしかにそちら側は住宅地になっていて、アパートやマンションもあったはずだ。
「姉貴この近くに住んでんのか?」
「うん、今はこっちで一人暮らししてるの。
あんまり片付いてない部屋で悪いけど…」