long time no see!
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「やっほー、花、頑張ってる?」
「ぬ?美奈子?」
夏休み。俺は10日間の強化合宿に挑んでいる。
美奈子に会えなくてうずうずしていた所だが、三日目に体育館に現れたのは、思い描いていたままの愛しい彼女だった。
「おお、オネーサン!!来てくれたんすか?」
「あえて嬉しいっす!花道はほっといて、お茶でもしましょう!!」
俺よりも先に、仲間たちが美奈子に群がる。
「オイオイ!!何ちょっかいだしてやがんだ!お前ら!」
シッシッと野犬を払うように野郎どもを追い返す。
「みんな、花に協力してくれてるんだよね。ありがとう。」
「いえいえ、こんなの暇つぶしですから…それにオネーサンにも会えると思ったんで。」
デレデレとする高宮のアタマをスパーンと叩く。
まったく、油断も隙もあったもんじゃない。
「美奈子、ここは危険だ。なにしろここは、もう3日もヤローどもで生活している、いわば欲望の巣窟だからな。」
「あはは…。まあ、みんなクールダウンして、アイスでも食べようよ。」
そう言って右手を挙げると、ビニール袋にコンビニで買ってきたアイスが大量に入っていた。
全員がオヤジ…安西コーチを見やると、
「では休憩にしましょうか。」
と言いながら、たぷたぷとした顎をさわった。
全員で円になって体育館の床に座り、美奈子の買ってきた棒アイスを食べる。
夏の気象のせいで、床からもムシムシとした暑さを感じる。
「ああー!生き返る!!」
「本当に良いタイミングっスね、オネーサン。」
暑い体育館の中で、口々に言う。
「10日間も合宿だなんて、すごい気合い入ってるね。
いいなあ、わたしももう一度高校生に戻りたいなあ…。」
「それって、もしかして花道ともっと一緒に居たいとかそんな可愛い理由だったりします?」
からかうような口調で、チュウが言う。
しかし美奈子は意外にも、
「うん、そうかも。」
と涼しげな顔で答えた。
「…ッ!」
そんな美奈子にドキドキさせられてしまう、俺はまだまだガキなのかもしれない。
「ひゅー!熱いねお二人さん!」
「オネーサン、本気で花道は辞めて、俺にしません?」
「えーと、考えとくね…?」
「あー!美奈子!コイツらの事は相手にしなくていーから!」
困り笑いを浮かべる美奈子を、手を引いて外へと連れ出した。
「え、ちょっと花?」
ずんずんと歩いて、体育館から離れた木の木陰に向かう。
蝉の声が聞こえ、すこし涼しい風が、汗ばんだ肌を撫でていく。
「…取られたくねーから、誰の目にも触れさせたくない…。」
チュッと唇を重ねた後、美奈子の大きな瞳を見つめる。
そんな独占欲も、彼女はすべて受け入れるかのようにやさしく俺を抱きしめて、言う。
「…わたしはとっくに、花しか見えないのに…?」
さっきまでみんなの前で見せていた、大学生らしい大人な姿とはうって変わり、少し高くて甘えたような口調になる。
二人きりのときに見せる美奈子の顔だ。
そんな美奈子が可愛くて、俺は絶対に誰にも見せまいと、小さな彼女の身体を抱きしめた。
まだまだ大人な余裕ってヤツはないけど、もう少し、待っていてほしいと、心の中でつぶやいた。
―END―