long time no see!
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洋平には明日学食をおごることで商談成立し、三叉路で別れた。
歩き慣れた道を辿り、自宅へと向かう。
見慣れた古いアパートだが、なぜか自分の部屋の窓から明かりが漏れているのに気づく。
(電気消し忘れたのか…?いや、そんなはずねぇ。
でなきゃ…こんな時間に、ウチにくるヤツっていえば…)
はやく確かめたくて、急いでカギを開ける。
もう夜12時も回っている。
俺の家の合鍵を持っているのは、名義人の叔父と… 美奈子だけだ。
やはり、部屋の中に美奈子がぽつんと座っていた。
テレビもつけず、静かな空間で何かを考え込むように畳に視線を落としていたが、俺に気づいて顔を上げる。
「美奈子、なんでここに…」
「花!!どこにいってたの?」
涙声で言いながら、玄関先まで駆け寄ってくる。
「なんで…あれから待ってたのか?」
「うん…。わたし花がどこに行ったのか、わかった気がしたから、それで不安になって…。」
ドクン、と心臓がえぐられたように跳ねた。
美奈子は続ける。
「花、あの手紙を見たよね?それで、加々見さんのところに…行ったの?」
今にも泣きそうな顔で訴える美奈子に、さきほど芽生えた不安が現実味を帯びてくる。
美奈子は、もしかすると、カガミと寄りを戻したくて…それで捨てた手紙を探したのか…?
カガミに会ったことを認めてしまったら、この関係がどうなるのかが怖かった。
しかし、嘘をつき通す自信もなく、
「…会った。」
と短く自白した。
何を言われるかと身構えていると、美奈子の目にはたくさんの涙が溜っていた。
「え、あ、姉貴…ッ
どうしたんだよ?なんで泣いて…」
「ご、ごめん。だってわたし、花を不安にさせたよね。
加々見さんのこと、花に黙ってて…
…本当にごめんねぇ。」
ぽろぽろと大粒の涙を流す美奈子を、とまどいつつも抱きしめる。
小さな美奈子を抱いていると、どっちが年上かわからなくなる。
子どものように嗚咽する美奈子を、慰める力が俺にあるのだろうか。
「悪い…。手紙みて、カッとなって、居ても立っても居られなくなって…。
でも!殴ったり喧嘩はしてない。本当だ。…ただ、その…」
「その…?」
「ただ、姉貴がカガミと寄りを戻したかったっていうんなら、それはもう無理かもしれねェ…。
かなり強めに脅しちまったから。」
「え?寄りを戻す…?わたしが、加々見さんと?」
美奈子はぽかんとして聞き返す。
「え、だって…。
寄りを戻したいから手紙を元に戻そうとしたんじゃ…」
「そんなわけじゃん!!」
泣いていたと思ったら、今度は怒っている。
むろん、泣きながらだが。
「わたしは、…花が好きなの。
別れたばかりだし、信じられないかもしれないけど…。
信じてもらえるように頑張る。花が誰よりも好き。」
突然のストレートな告白に、つい顔が赤くなる。
こんな風にはっきりと言ってもらえたのは、正直初めてかもしれない。
「信じてなかったわけじゃねーけど…。
俺が勝手に不安になっちまったんだよ。
俺、こんなんだし…その…。
姉貴に男として見られてないんじゃないかって…。」
目を泳がせながらも本音をつづると、ちゅっと優しく美奈子の唇がふれる。
「…ちゃんとみてるよ、男として。」
「えっ…」
「姉貴じゃなくて美奈子って呼んで…」
目を赤くした美奈子が、薄暗い玄関先でまっすぐ俺だけを見つめている。