long time no see!
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美奈子の家で夕食を取り、くっついてテレビを見る。
いつもは気にしないようにしているが、今日はやけに美奈子とふれあっている部分が気になる。
雑誌には、家でのデートで自然に…とか書いてあったが、その”自然に”がいつまでもわからず、タイミングがつかめない。
いままでもこうして美奈子といても、全然そういう雰囲気にならなかったからだ。
(恥を忍んでも洋平に聞いときゃ良かったか…?)
しかし、自分からきっかけを作らなければ、永遠にいい雰囲気になることはないだろう。
それだけは嫌だ、絶対に。
「美奈子…!」
「え、どうかした花?」
思いのほか大きな声が出て、彼女は少し驚いている。
「えっと、ちょいトイレ…。」
「あ、いってらっしゃい。」
寄りかかっていた肩から美奈子が離れる。
(ああ、馬鹿…っ 俺!!)
俺は別に行きたいわけじゃなかったが、バツが悪くなりトイレに立った。
美奈子の部屋はよくあるワンルームの形状。
トイレとバスルームがあるのは、リビングを出てすぐの、キッチンと玄関が一緒になったような空間だ。
キッチンのそばにはゴミ箱が置かれているが、その近くに、捨て損ねたゴミが落ちているのが気になった。
美奈子への邪念を払うような気持ちで、なんとなくそのゴミを手に取り、捨てたときだった。
クシャクシャにされた紙がゴミ箱に捨てられているのが見えた。
そんな風に捨てるにはもったいないような、上質そうな紙が、必要以上に丸められていることに違和感があり、つい好奇心でその紙を開く。
そこにはボールペンで、丁寧な字が綴られていた。
『美奈子。
この前の電話の事だけど、考えてくれた?
僕はやっぱり、美奈子のことが忘れられそうにないんだ。
美奈子も高校生の彼のことは忘れて、もう一度僕と付き合ってほしい。
離婚の話も進めるよ。
とにかく、一度会いたい。』
内容を見ただけで、手紙の主がカガミだということがわかった。
一度封じていた怒りが、こみ上げてくる。
美奈子には既婚だということを言わずに付き合っていたくせに、ばれたら今度は離婚するから寄りを戻せという。
自分よりもずっと大人であろう男が、学生である彼女の心を弄んでいるようで、カガミという人間が酷く自分勝手に思える。
捨ててあるのだから、美奈子にカガミへの気持ちがないのは明白だろう。
しかし、俺に心配させまいと、一人で抱え込んでいる美奈子を思うと、いてもたっても居られなくなった。
俺はその手紙を、ポケットに突っ込む。
「美奈子、ごめん、俺用事思い出したから帰るわ。」
そう告げる声は、思いのほか低くなる。
「え、そう…なの?わかった。」
こんな態度では美奈子に怪しまれそうだが、俺は演技が苦手だ。すぐ顔に出てしまう。
美奈子も、何かを疑うように、不安げにこちらを見上げている。
「…また連絡する。」
顔を見ないまま玄関ドアに手をかけると、
「花、喧嘩はダメだよ。」
と制された。
…そうだよな、喧嘩はしない。話し合うだけだ。俺は美奈子と対等でいるためにも、大人にならなきゃいけない―…。
「おう、大丈夫だ!これでも今は、スポーツマンだからよ!」
できる限り明るく言うと、美奈子も安堵の表情を浮かべて見送ってくれた。