long time no see!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
姉貴とおふくろはよく似ている…と、幼い俺は思っていた。
俺は7歳まで、こことは少し離れたところに住んでいた。
今住んでいる部屋よりも広くて、家族連れが多く住んでいるアパ―ト。そこに親父とおふくろと俺の3人で住んでいた。
そして、姉貴は隣に住む5つ上の小学生だった。
俺が物心ついたころには、もう姉貴がそばにいた。
姉貴の親は、いつも遅くまで仕事をしていて、いつも一人で留守番をしていたので、おふくろはよくウチに姉貴を招いていたのだ。
男ばかりの家族ではつまらなかったのもあってか、姉貴をよくかわいがっていたし、俺も姉弟同然に思っていた。
見た目はかわいい女の子。しかしそれとは裏腹に、彼女にはやんちゃな一面もあった。
一緒に公園にいくと、俺が倒れそうになるまでサッカーに付き合わされたり、鬼ごっこでいつまでも鬼をさせられたりしたのを覚えている。
「おねーちゃん、もうつかれたって!もうかえろう!」
「ばか花!まだまだやる気が足りない!!そんなんじゃ小学生になれないよ!!」
「おねーちゃん」
「おねえちゃーん」
「ねえ…かえろうよ」
「美奈子おねえちゃーん!もうかえろうよお」
「っっ!!もー!お姉ちゃんじゃない!
今日からわたしのことは…そう!姉貴って呼ぶこと!」
「あ、あねき??」
「そう!男の子はもっと強そうな言葉遣いしなきゃだめ!
花のお母さんもいつも言ってるでしょ?ぐずぐずしてたらだめって」
「ことば…ずかい??」
「なんでもいいの!とにかく、お姉ちゃんは禁止ね!」
姉貴は5つ上だったこともあり、遠くの公園に連れて行ってくれたり、知らない遊びや言葉を教えてくれた。
スパルタな遊び方は気に食わなかったが、なんでも知っている彼女に憧れていた。
そしてそんな一面は、少しおふくろと似ていた。
「花道。これからはお母さんじゃなくて、お父さんのいうことをよーく聞くのよ。
男の子なんだから、いつまでも泣いたりせずに、きちんと学校の勉強もして、スポーツも頑張って…」
ある日、いつも厳しく冷静なおふくろが、その日はなぜか言葉をつまらせていた。
今考えると、顔をうしろに向けて泣いていたのかもしれない。
幼い俺はそれがわからず、ただただニコニコとうなずいていた。
その翌日、俺は湘南に引っ越した。
当時すでに通っていた小学校も転校したが、小1だったこともあり新しい学校にはすぐ慣れることができた。
しかし、いつまでたっても慣れなかったことが一つ。
新しい家には…なぜかおふくろはいなかった。
結局、姉貴と別れの挨拶はできなかった。
俺は引っ越しの意味がよくわかっていなかったし、その日は平日だったのか、姉貴は家にいなかった。
それに昨日まで毎日遊んでいた相手と会えなくなるなんて、幼い俺には考えもしないことだった。
「さみしい」とか「会いたい」とか、考えたことはない。
しかし、姉貴の言葉はたまに頭によぎった。
「こら花!泣いてないでボール蹴って!
あっまたお姉ちゃんとか言って甘えてる!びしっとしなさいよ!もう!」
「おんぶはしない!ちゃんと自分の足で歩いて帰らなきゃ!」
「あきらめるな!」
そうやって俺に向けられた言葉。
『諦めるな!』という、ケンカで負けそうなとき、幾度となく思い出していた言葉…。
もう誰に言われたのかもあいまいになっていたが、あれは姉貴のものだったのか。
今考えると、小1の俺をつかまえて毎日あそぶ小6女子という姿には少々笑えるが、あの性格では友達よりも年下に構っているほうが、心地よかったのかもしれない。
だからこそ、用品店で再会した彼女には驚いた。
俺の記憶のなかでは、姉貴はガサツでガキ大将みたいな女だったはずだ。
髪も短かったし、外遊びのせいで日焼けもしていた。
しかし、今の姉貴は…
自分でも言ったことだが、本当に美人って感じだった。
そこらへんの街ですれ違う、ブランドもののバックを持ってミニスカを履いている、大学生のイメージそのものだったのだ。
バイト中だから服装こそ、ラフな格好だったが…
言葉遣いも、なんとなく昔より上品だったような気がする。