long time no see!
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(ちょ、ちょっと、待って!!落ち着けわたし!!)
花のアパートを出たわたしは、一目散に走り出した。
お気に入りの黒いハンドバッグを胸に抱え、バクバクと波打つ自身の心臓の音を聞く。
こんなに音がするのは、決して走っているからでらない。
今まで弟としか思っていなかった花に、抱きしめられて、告白されて、
キス、されそうになって…
いつのまに可愛かった弟は、あんなに大人になってしまったんだろう…。
高校1年生にしては身体も大きくて、言ってることはおバカっぽいのに、たまにみせる真剣な顔がすごく大人びていて…
…わたしのために、加々見先生にあんなに怒ってくれた。
わたしは花が、自分のことのように怒ってくれたことが、とても嬉しかった。
それにわたしのことを一生懸命探してくれたんだって、抱きしめられた時に痛いほどわかった。
だから花が望むことは、なんでもしてあげたいって思ったんだ。
それは本気だった。
だけど…まさか交際を望まれるとは考えてもいなかった。
おまけに、花は同級生のハルコちゃんが好きだと思っていたから…。
いやいや!
もしかすると、二人っきりのシチュエーションで、わたしが手なんて握っちゃったから、花もなんというか男の子特有のアレな気分になっちゃって、勢いで言っちゃったとかかもしれないし…?
1人になったら案外冷静になって、次に会ったときには
「わりい、あれ勢いで言っただけで、姉貴のこと好きとかねーから。忘れてくれ。」
なんて言われるかもしれないし…?
「そうよね、いくらなんでもわたしなんて…。」
うんうん、と自分自身を納得させるように頷く。
5歳も上だし、姉貴なんて呼んでいる私を今更…。
『美奈子…って呼んでもいいか?』
ふいに花道の言葉が、頭の中で繰り返される。
(いつも声が大きいくせに、絞り出すような声で言ってくれたよね…)
(すごい心臓の音も聞こえてて…顔も真っ赤だったし…。)
今まで付き合ったことのある人とは明らかに違う、ウブすぎる反応にこちらまで赤面してしまう。
「…っ」
耳まで赤くなっているのが、自分でも分かる。
「だめ、花は…花は弟なんだから。」
お父さんやお母さんの代わりに、わたしが花を守ってあげなきゃ。
自分に言い聞かせるように、頬をぺちぺちと叩いた。