long time no see!
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姉貴のアパートに明かりがついていたら、インターホンを押してまず何を言おう、と一日中考えていたのに、それは全て無駄に終わった。
部活終わりの、もうあたりも暗くなった校門の外に、見慣れたハンドバッグを持った彼女が立っていたのだ。
「姉貴…」
「やっほ、お疲れ様。こんな遅くまで部活なんて気合い入ってるね。」
「えっと…もしかして、ウチの学校になんか用事でもあんのか?」
「うん、あるよ。」
そう言いながら、細い指は俺自身を指す。
月明かりに吸い込まれるように、俺たちは二人無言のまま歩き出した。
「これ、花のでしょ?」
おもむろにハンドバッグとは別に持っていた紙袋から、昨日俺が着ていたTシャツを取り出した。
わざわざ洗濯したのか、きちんとアイロンがけされているのがわかる。
しかし俺は、やっぱり起きていたのか?とドギマギして、落ち着かない。
「実は、昨日の記憶がまったくなくてさ。朝起きたらこのTシャツがベッドにあって…。
誰のだろうって考えたんだけど、こんなに大きいサイズのTシャツ着てる知り合いって、花しか思いつかなくって。」
なるほど、コイツは昨日、俺と会った記憶すらないのか。
昨日唇を触ったとき、もしかして姉貴が起きていたのではないか?と勘ぐっていたのだが、その不安はたちまち消えていった。
これで変に意識しないで会話できそうだ。
しかし、服のサイズだけで俺だと推測するというのは、なんだかおかしな気がした。
姉貴がまず思い浮かべるのは、彼氏であろう存在の「カガミ」ではないのだろうか。
「カガミって奴の可能性は考えなかったのかよ?」
「え?」
その瞬間、姉貴が足を止め、一瞬で空気が凍りついたのがわかった。
(やべ、つい安心して、思ったままを口に出してしまった…!)
ここまできたら、ついでに聞いてしまえ!と会話をつづける。
「カガミって…昨日寝言で言ってたんだよ。んで、姉貴が俺のシャツつかんで離さねーから…。
行かないでとかって言ってたし…
そいつ、彼氏かなんかなのか?」
「…花には関係ないじゃん。」
「え、」
これまでの柔和な口調の彼女からは想像できない、冷たい言い方だった。
その言葉を聞いた瞬間、自分の心臓がえぐられたようにだんだんと重く沈んでいくのが分かった。
頭の中がぐるぐるとして、自分の立っている場所が平面なのかどうかもよくわからなくなってくる。
「…んだよ、それ。」
そんな反応をされるような事を聞いたつもりはない。
俺はただ、なりゆきで酔った姉貴を介抱しただけで…。
たしかに寝言を聞いたのは悪かったかもしれないが、聞いてしまったら気になるのは当然だ。
ただ純粋な質問として聞いただけで、内緒にしたいなら別にそれでよかった。
それなのに…
「んじゃ、俺ももう知らねぇ。」
自分でも驚くほど低い声が出た。
うつむいて立ち尽くす姉貴を残し、先ほど2人で来た道を引き返す。
相手から思ったような返事がなかったから、拗ねて立ち去るなんて、洋平に言ったら「ガキかよ」なんて言われそうだと思った。
だけど、優しくて家族のような存在だった姉貴に突き放されたことで、自分が本当に孤独になってしまったように感じたのだ。
求めても突き放されるくらいなら…はじめから求めない方がいいのかもしれない。
これ以上、姉貴に家族のような温かさを求めるのは、良くない気がする。
洋平の言うとおり、姉貴が好きなわけではない。
これまで10年もの間会っていなかったのだし、今だって数えるほどしか再会していない。
これから先また会えなくなっても、なんの問題もなく生きていける。
そう自分に言い聞かせる。
姉貴には彼氏がいて、幸せで、それでいいじゃないか。
「…もう姉貴には会わない。考えたりしない。」
1人になった帰り道、自分自身に聞かせるように何度か声に出してつぶやいた。
部活終わりの、もうあたりも暗くなった校門の外に、見慣れたハンドバッグを持った彼女が立っていたのだ。
「姉貴…」
「やっほ、お疲れ様。こんな遅くまで部活なんて気合い入ってるね。」
「えっと…もしかして、ウチの学校になんか用事でもあんのか?」
「うん、あるよ。」
そう言いながら、細い指は俺自身を指す。
月明かりに吸い込まれるように、俺たちは二人無言のまま歩き出した。
「これ、花のでしょ?」
おもむろにハンドバッグとは別に持っていた紙袋から、昨日俺が着ていたTシャツを取り出した。
わざわざ洗濯したのか、きちんとアイロンがけされているのがわかる。
しかし俺は、やっぱり起きていたのか?とドギマギして、落ち着かない。
「実は、昨日の記憶がまったくなくてさ。朝起きたらこのTシャツがベッドにあって…。
誰のだろうって考えたんだけど、こんなに大きいサイズのTシャツ着てる知り合いって、花しか思いつかなくって。」
なるほど、コイツは昨日、俺と会った記憶すらないのか。
昨日唇を触ったとき、もしかして姉貴が起きていたのではないか?と勘ぐっていたのだが、その不安はたちまち消えていった。
これで変に意識しないで会話できそうだ。
しかし、服のサイズだけで俺だと推測するというのは、なんだかおかしな気がした。
姉貴がまず思い浮かべるのは、彼氏であろう存在の「カガミ」ではないのだろうか。
「カガミって奴の可能性は考えなかったのかよ?」
「え?」
その瞬間、姉貴が足を止め、一瞬で空気が凍りついたのがわかった。
(やべ、つい安心して、思ったままを口に出してしまった…!)
ここまできたら、ついでに聞いてしまえ!と会話をつづける。
「カガミって…昨日寝言で言ってたんだよ。んで、姉貴が俺のシャツつかんで離さねーから…。
行かないでとかって言ってたし…
そいつ、彼氏かなんかなのか?」
「…花には関係ないじゃん。」
「え、」
これまでの柔和な口調の彼女からは想像できない、冷たい言い方だった。
その言葉を聞いた瞬間、自分の心臓がえぐられたようにだんだんと重く沈んでいくのが分かった。
頭の中がぐるぐるとして、自分の立っている場所が平面なのかどうかもよくわからなくなってくる。
「…んだよ、それ。」
そんな反応をされるような事を聞いたつもりはない。
俺はただ、なりゆきで酔った姉貴を介抱しただけで…。
たしかに寝言を聞いたのは悪かったかもしれないが、聞いてしまったら気になるのは当然だ。
ただ純粋な質問として聞いただけで、内緒にしたいなら別にそれでよかった。
それなのに…
「んじゃ、俺ももう知らねぇ。」
自分でも驚くほど低い声が出た。
うつむいて立ち尽くす姉貴を残し、先ほど2人で来た道を引き返す。
相手から思ったような返事がなかったから、拗ねて立ち去るなんて、洋平に言ったら「ガキかよ」なんて言われそうだと思った。
だけど、優しくて家族のような存在だった姉貴に突き放されたことで、自分が本当に孤独になってしまったように感じたのだ。
求めても突き放されるくらいなら…はじめから求めない方がいいのかもしれない。
これ以上、姉貴に家族のような温かさを求めるのは、良くない気がする。
洋平の言うとおり、姉貴が好きなわけではない。
これまで10年もの間会っていなかったのだし、今だって数えるほどしか再会していない。
これから先また会えなくなっても、なんの問題もなく生きていける。
そう自分に言い聞かせる。
姉貴には彼氏がいて、幸せで、それでいいじゃないか。
「…もう姉貴には会わない。考えたりしない。」
1人になった帰り道、自分自身に聞かせるように何度か声に出してつぶやいた。