12月と恋【水戸】
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いつの間にか降り出した雪も、騒がしい今日の街にはよく似合っていると思う。
わたしはこの時期めずらしくもなんともない赤いサンタクロース帽子を被って、店頭に立ちクリスマスケーキを売る。
さすが24日とあって、売れ行きは好調だった。
「高橋さん、今日はもうあがりでいいよ。」
用意していたケーキのほとんどが売れたのをみて、店長が声を掛けてくれた。
よかった、と心の中で思う。
正直、こんな雪の日に街頭に立ちっぱなしでいるのは、いくら体力有り余る高校生だからといってもキツい。
なにより寒い。寒いのはキライだ。
体中にカイロを貼りまくったって、靴下を重ねばきしたって、寒いものは寒いのだ。
「じゃあ、片付けてあがりますね。」
「うん、よろしくね。」
ホールケーキはもう残すところ数箱になっている。
時間も21時をまわってしまい、この先は夕方のような売り上げは見込めないだろう。
「クリスマスケーキあります」と書かれた手書きのポップを取り外し、設営を片付け始めたところだった。
「よっ、おつかれ。」
聞きなじみのある声が、頭上から降ってきた。
「あ、洋平くん。」
立っていたのは、同じクラスの洋平くんだった。
厚めのダウンジャケットに手をつっこんで、エリに顔をうずめている。
それでも寒いらしく、やはり鼻の頭が赤らんでいた。
洋平くんとは、とある理由でよく話すようになった。
放課後にアルバイトしている場所が近いらしく、ある日の帰り道、偶然出くわしたのだった。
なんでも、彼はバイトをいくつか掛け持ちしているらしい。
わたしもわたしで平日も休日も関係なくシフトを組んでいるため、バイトをしない日はほとんどない。
そんなハードワーカー的な部分が重なって意気投合し、仲良くなったのだった。
この冬休み、とくにクリスマスシーズンはどこも人出不足になるので稼ぎ時だという話を、二学期の終わり頃にした覚えがある。
その時たしか、このケーキ屋さんで短期バイトをすることを伝えていた。
洋平くんも洋平くんで、クリスマスは配達のバイトを入れたと言っていたような…。
「洋平くんもバイト終わり?」
「そーそ。んで、美奈子ちゃんがここで働いてるっつってたの思い出して、寄ってみた。」
「お疲れ様。わたしももう上がりなんだ、ココ片付けたら。…あ、もしかしてケーキ、買いに来た?」
わたしは片付けの手を止めて、尋ねる。
しかし洋平くんは小さく首を横に振った。
「いや、オレの用事はケーキじゃなくてさ。」
いきなり黙ったまま、ポケットから出した手をこちらに向ける。
そして、そっちも手を出して、といわんばかりに、その手をくいくいと数回動かした。
その仕草にせかされて、わたしも促されるままに手を差し出す。
そこに冷たい感触が触れた。
慣れない感触だった。
いきなり右手の薬指にはめられたのは、シルバーに光るリングだった。
よく状況のわからないわたしは、ただオロオロとするばかりだ。
「え、あの、これ…。」
「美奈子ちゃん、この前話してたじゃん。クリスマスプレゼントもらうなら、絶対アクセサリーがいいって。」
「い、言ったけど…。なんでわたしに。ってか高いんじゃ…!」
「…実はそれ、パチンコの景品なんだよね。だからまったく高価なもんじゃなくて、悪いんだけど。」
歯切れが悪そうに、彼にしてはめずらしく視線をそらす。
パチンコの景品だとか、値段だとか、そんなことは正直どうでもよかった。
洋平くんに指輪をもらったという事実が、大変なことなのだ。
今日はイブで、おまけにホワイトクリスマスときている。
そんな日に指輪をもらうなんて、何か特別な意味を感じずにはいられない。
「なんかこう、それが景品棚にあるってわかったときから、美奈子ちゃんに渡してーなって思っててさ。」
「…洋平くん、それ勘違いしちゃうよ?わたし、都合がいいから。」
「んー、それもちっとは期待してる。」
白い息を吐きながら、屈託のない笑みを浮かべる洋平くんに、はじめてドキリとした。
洋平くんはたぶん、校内でも真面目と言われる類いではない。
売られた喧嘩は買ってしまうし、たまに授業もサボったりする。
だけど知っていた。洋平くんが誰よりも優しくて、その笑顔が素敵なことを。
いつしかその姿を目で追っている自分には気づいていた。
だけど、それが恋だとは自覚していなくて…。
じわじわと広がっていく鼓動を、胸の奥に感じる。
「美奈子ちゃん上がりなんだろ?」
「う、うん。」
「一緒に帰ろーぜ。残りの時間だけでも、美奈子ちゃんとイブ過ごさせて。」
…ずるいなあ、と思う。
そんな言い方されたら、断れるわけもない。
もっとも、断るという選択肢はわたしの頭には存在しないのだけれど。
「わ、かった。ちょっと時間かかるかもしれないけど、待っててくれる?」
「うん、いくらでも待ってる。」
そう言って洋平くんは、照れ隠しのように肩をすくめてみせた。
その仕草はなんだか、いきなり指輪なんて渡してくるような男の子には決して思えなくて、可愛らしくてドキドキしてしまった。
わたしは大急ぎで、片付けに注力する。
きらり、と光る指が視界に映る。
まだ止みそうにない雪の中、自覚したばかりの恋心が、だんだんと胸の中を占領していくのを感じた。
ーーーーーー
人生100巡くらいしてそうな大人なミトヨもいいけど、年相応でシャイボーイなミトヨも見たい。。
みなさんどちらがお好みですかね。
むしろそのギャップが同居した感じが良いのか…なるほど。
メリークリスマス!
わたしはこの時期めずらしくもなんともない赤いサンタクロース帽子を被って、店頭に立ちクリスマスケーキを売る。
さすが24日とあって、売れ行きは好調だった。
「高橋さん、今日はもうあがりでいいよ。」
用意していたケーキのほとんどが売れたのをみて、店長が声を掛けてくれた。
よかった、と心の中で思う。
正直、こんな雪の日に街頭に立ちっぱなしでいるのは、いくら体力有り余る高校生だからといってもキツい。
なにより寒い。寒いのはキライだ。
体中にカイロを貼りまくったって、靴下を重ねばきしたって、寒いものは寒いのだ。
「じゃあ、片付けてあがりますね。」
「うん、よろしくね。」
ホールケーキはもう残すところ数箱になっている。
時間も21時をまわってしまい、この先は夕方のような売り上げは見込めないだろう。
「クリスマスケーキあります」と書かれた手書きのポップを取り外し、設営を片付け始めたところだった。
「よっ、おつかれ。」
聞きなじみのある声が、頭上から降ってきた。
「あ、洋平くん。」
立っていたのは、同じクラスの洋平くんだった。
厚めのダウンジャケットに手をつっこんで、エリに顔をうずめている。
それでも寒いらしく、やはり鼻の頭が赤らんでいた。
洋平くんとは、とある理由でよく話すようになった。
放課後にアルバイトしている場所が近いらしく、ある日の帰り道、偶然出くわしたのだった。
なんでも、彼はバイトをいくつか掛け持ちしているらしい。
わたしもわたしで平日も休日も関係なくシフトを組んでいるため、バイトをしない日はほとんどない。
そんなハードワーカー的な部分が重なって意気投合し、仲良くなったのだった。
この冬休み、とくにクリスマスシーズンはどこも人出不足になるので稼ぎ時だという話を、二学期の終わり頃にした覚えがある。
その時たしか、このケーキ屋さんで短期バイトをすることを伝えていた。
洋平くんも洋平くんで、クリスマスは配達のバイトを入れたと言っていたような…。
「洋平くんもバイト終わり?」
「そーそ。んで、美奈子ちゃんがここで働いてるっつってたの思い出して、寄ってみた。」
「お疲れ様。わたしももう上がりなんだ、ココ片付けたら。…あ、もしかしてケーキ、買いに来た?」
わたしは片付けの手を止めて、尋ねる。
しかし洋平くんは小さく首を横に振った。
「いや、オレの用事はケーキじゃなくてさ。」
いきなり黙ったまま、ポケットから出した手をこちらに向ける。
そして、そっちも手を出して、といわんばかりに、その手をくいくいと数回動かした。
その仕草にせかされて、わたしも促されるままに手を差し出す。
そこに冷たい感触が触れた。
慣れない感触だった。
いきなり右手の薬指にはめられたのは、シルバーに光るリングだった。
よく状況のわからないわたしは、ただオロオロとするばかりだ。
「え、あの、これ…。」
「美奈子ちゃん、この前話してたじゃん。クリスマスプレゼントもらうなら、絶対アクセサリーがいいって。」
「い、言ったけど…。なんでわたしに。ってか高いんじゃ…!」
「…実はそれ、パチンコの景品なんだよね。だからまったく高価なもんじゃなくて、悪いんだけど。」
歯切れが悪そうに、彼にしてはめずらしく視線をそらす。
パチンコの景品だとか、値段だとか、そんなことは正直どうでもよかった。
洋平くんに指輪をもらったという事実が、大変なことなのだ。
今日はイブで、おまけにホワイトクリスマスときている。
そんな日に指輪をもらうなんて、何か特別な意味を感じずにはいられない。
「なんかこう、それが景品棚にあるってわかったときから、美奈子ちゃんに渡してーなって思っててさ。」
「…洋平くん、それ勘違いしちゃうよ?わたし、都合がいいから。」
「んー、それもちっとは期待してる。」
白い息を吐きながら、屈託のない笑みを浮かべる洋平くんに、はじめてドキリとした。
洋平くんはたぶん、校内でも真面目と言われる類いではない。
売られた喧嘩は買ってしまうし、たまに授業もサボったりする。
だけど知っていた。洋平くんが誰よりも優しくて、その笑顔が素敵なことを。
いつしかその姿を目で追っている自分には気づいていた。
だけど、それが恋だとは自覚していなくて…。
じわじわと広がっていく鼓動を、胸の奥に感じる。
「美奈子ちゃん上がりなんだろ?」
「う、うん。」
「一緒に帰ろーぜ。残りの時間だけでも、美奈子ちゃんとイブ過ごさせて。」
…ずるいなあ、と思う。
そんな言い方されたら、断れるわけもない。
もっとも、断るという選択肢はわたしの頭には存在しないのだけれど。
「わ、かった。ちょっと時間かかるかもしれないけど、待っててくれる?」
「うん、いくらでも待ってる。」
そう言って洋平くんは、照れ隠しのように肩をすくめてみせた。
その仕草はなんだか、いきなり指輪なんて渡してくるような男の子には決して思えなくて、可愛らしくてドキドキしてしまった。
わたしは大急ぎで、片付けに注力する。
きらり、と光る指が視界に映る。
まだ止みそうにない雪の中、自覚したばかりの恋心が、だんだんと胸の中を占領していくのを感じた。
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人生100巡くらいしてそうな大人なミトヨもいいけど、年相応でシャイボーイなミトヨも見たい。。
みなさんどちらがお好みですかね。
むしろそのギャップが同居した感じが良いのか…なるほど。
メリークリスマス!
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