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番犬【桜木】

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「ルカワのヤツ、いいとこでばっかりシュート決めやがるしさ、それでハルコさんは、ルカワばっかり応援するしさ…

 俺の方がカッコいいし、ハルコさんのこと好きなのだって俺の方がぜってー勝ってるのに!!」



「まぁ、恋しちゃったらその人しか目に入らないもんなのよ、女ってのは。
 それに流川くんは文句なしにかっこいいし?」



「んだよーお前も結局はルカワルカワ…
 あの狐目のどこがいいんだか。」



女は見る目ねーぜ。

と酒をあおる花道。

「お前もやっぱ好きな奴とかいんの?」

「え…!?」

「人の世話ばっか焼いてないで、自分はどーなのよ。」

何よ、今までそんなこと、一度も聞いてこなかったくせに。

「ま、まぁ、いる…かな。」

「へー、お前がねえ…」

面白いおもちゃを見つけたというように、ニヤニヤと笑う。

「なによ…」

「いやー別に?そいつにフラれたら教えろよ!
 今までのお返しでめちゃくちゃ笑ってやるから!」

「絶対、イヤ!」

そのときはたぶん、花道は笑えない状況になってると思うけど…。
と、心の中でつぶやく。

「やっぱお前も、ルカワみてーな奴がいいわけ?
 なんかこう…無口っつーか、クール系っつーの?」

「まぁわたしは…花道みたいなのもかっこいいと思うけど。」

少しドギマギさせてやりたくて、わざと本気っぽく言ってみる。



それなのに、

「だろ?このにじみ出る天才の知性、分かるやつには分かるんだよ。
 なーっははは!」



なんて、大きな口を開け、いつもの調子で笑っている。



「わたしはさ、バスケしてる花道かっこいいと思うよ。
 本当にそう思う。

 だから、夢中になれるバスケを教えてくれた晴子さんには、とっても感謝してるんだ。」



「お、おう、なんだよ急に。」


笑っていた花道が、急に畏まる。


「喧嘩ばっかりしてた花道が、ほんとはちょっと心配だったんだ。

 そんなあんたが、今はまぁまじめなスポーツマンだし。たまに危うい時もあるけど…。」



お酒が回ってきて、なんだか普段は言えないようなこともスラスラと口から出てくる。



「だからさ、わたし、晴子さんには感謝してるけど…
 わたしは晴子さんと流川くんとの恋を応援したい。」


「ってオイ!なんでだよ。俺を応援しろよ、友達だろ!」

ノリツッコミの要領で、わたしの頭を小突く。



友達…か。

それでも昔は良かったんだ。

この関係が居心地が良くて、ずっとそばにいられるなら、友達のままでいいかなって。



だけど…。



ごくたまに、その一線を越えてしまいたい日があるのだ。



特に、晴子さんが現れてから。

いつか花道が、晴子さんのものになってしまうんじゃないかって、不安で堪らない日があるのだ。

あと先なんて考えず、花道を自分のものにしてしまいたいっていう日が。

運悪く、洋平のいない今日が、「その日」だったようだ。





気づいた時には、花道の唇を奪っていた。



軽く触れるだけのキス。

わたしも初めてしたけど、なんだか現実感がなくてふわふわする。

ほんの数秒間、思考がなくなる。
ただ、そのふわふわした思考の中をさまよっているような感覚。

お互いの唇が離れると、戸惑った表情の花道がいる。


「…お、おい、酔ってんのか?」


こんなにうろたえてる花道は初めてみるかもしれない。

なんだか耳まで赤い気がする。



「…晴子さんのものにならないで」



「お前…もしかして俺が好きなの?」



「…ばか、うぬぼれすぎ。」



「…いつから?」



「…だから、ノーコメントで。」



「否定しないってことは、好きなんじゃねーのかよ?」



「…。」



花道なんかに誘導尋問されて墓穴掘ってしまいそうだ。
昔からこういうとき、急に勘が良くなるんだよなぁ。



「…わたしは友達には全然キスしていくスタイルだから。これくらいなんともないよ。」



かなり強引に言い訳してみる。



「洋平とかとも、全然できるし。」

とつづける。



「え?洋平ともこんなことしたのか?」

今度は少し悲しそうな顔になる。
そんな顔見たことなくて、きゅっと胸が締め付けられる。

「…さあ、どうかな?」

「おい、洋平とは…絶対すんなよ!」

花道は、まっすぐわたしの目をみて力強く言う。

「…なんで?」



「なんでって…。

 なんでかはわかんねーけど、さっきみたいなのを…
 洋平とするのはなんか嫌だ。」

ずっとだだの幼馴染だった花道が、
初めて独占欲をみせてくれたようで、わたしは素直にうれしい。


「さっきまで、好きな奴に告白しろって言ってたじゃん。
 わたしに彼氏できたら、こういうこともするんだけど?」

「ぬう、それは、たしかに…」

「それも、嫌?」

「…。」

「…それって花道くん、わたしを好きって事なんじゃないの?」



うつむいていた花道が、ぱっと顔を上げてわたしを睨む。


「ちが…っ
 とにかく、誰にでもするのはおかしいって事で…」


「うーん、考えておくね。」


にこっと笑ってみせると、はぁ、と大きなため息をつく花道。


「もうこいつに酒を飲ませるのはやめよう。」
と、頭を抱えていた。







次の日から、花道はわたしが洋平たちと話していると、必ず現れるようになった。

そして、わたしが誰かと二人きりになろうとすると…


「俺も行く!」

と言ってついてくるようになった。



「洋平と購買行くだけだし、欲しいものあるなら買ってくるよ?」

「いや、それが危ねーんだよ。お前らを二人にするのは…」

ブツブツ言いながらついてくる花道は、大きな番犬みたいだ。

「花道、最近なんかおかしくね?」

洋平がこそっと耳打ちする。

「…ね、おかしいよね。」

わたしもおかしくて吹き出しそうになるのを必死にこらえる。

「オイそこ!なに話してんだよ?」

「ふふ、何でもないよ!」



今は番犬みたいな花道だけど…

前よりはわたしのことを意識してくれてるのかな?

晴子さんにはかなわなくても…

今はまだ、この関係を続けるのもいいかもな、なんて思った。
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