番犬【桜木】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ルカワのヤツ、いいとこでばっかりシュート決めやがるしさ、それでハルコさんは、ルカワばっかり応援するしさ…
俺の方がカッコいいし、ハルコさんのこと好きなのだって俺の方がぜってー勝ってるのに!!」
「まぁ、恋しちゃったらその人しか目に入らないもんなのよ、女ってのは。
それに流川くんは文句なしにかっこいいし?」
「んだよーお前も結局はルカワルカワ…
あの狐目のどこがいいんだか。」
女は見る目ねーぜ。
と酒をあおる花道。
「お前もやっぱ好きな奴とかいんの?」
「え…!?」
「人の世話ばっか焼いてないで、自分はどーなのよ。」
何よ、今までそんなこと、一度も聞いてこなかったくせに。
「ま、まぁ、いる…かな。」
「へー、お前がねえ…」
面白いおもちゃを見つけたというように、ニヤニヤと笑う。
「なによ…」
「いやー別に?そいつにフラれたら教えろよ!
今までのお返しでめちゃくちゃ笑ってやるから!」
「絶対、イヤ!」
そのときはたぶん、花道は笑えない状況になってると思うけど…。
と、心の中でつぶやく。
「やっぱお前も、ルカワみてーな奴がいいわけ?
なんかこう…無口っつーか、クール系っつーの?」
「まぁわたしは…花道みたいなのもかっこいいと思うけど。」
少しドギマギさせてやりたくて、わざと本気っぽく言ってみる。
それなのに、
「だろ?このにじみ出る天才の知性、分かるやつには分かるんだよ。
なーっははは!」
なんて、大きな口を開け、いつもの調子で笑っている。
「わたしはさ、バスケしてる花道かっこいいと思うよ。
本当にそう思う。
だから、夢中になれるバスケを教えてくれた晴子さんには、とっても感謝してるんだ。」
「お、おう、なんだよ急に。」
笑っていた花道が、急に畏まる。
「喧嘩ばっかりしてた花道が、ほんとはちょっと心配だったんだ。
そんなあんたが、今はまぁまじめなスポーツマンだし。たまに危うい時もあるけど…。」
お酒が回ってきて、なんだか普段は言えないようなこともスラスラと口から出てくる。
「だからさ、わたし、晴子さんには感謝してるけど…
わたしは晴子さんと流川くんとの恋を応援したい。」
「ってオイ!なんでだよ。俺を応援しろよ、友達だろ!」
ノリツッコミの要領で、わたしの頭を小突く。
友達…か。
それでも昔は良かったんだ。
この関係が居心地が良くて、ずっとそばにいられるなら、友達のままでいいかなって。
だけど…。
ごくたまに、その一線を越えてしまいたい日があるのだ。
特に、晴子さんが現れてから。
いつか花道が、晴子さんのものになってしまうんじゃないかって、不安で堪らない日があるのだ。
あと先なんて考えず、花道を自分のものにしてしまいたいっていう日が。
運悪く、洋平のいない今日が、「その日」だったようだ。
気づいた時には、花道の唇を奪っていた。
軽く触れるだけのキス。
わたしも初めてしたけど、なんだか現実感がなくてふわふわする。
ほんの数秒間、思考がなくなる。
ただ、そのふわふわした思考の中をさまよっているような感覚。
お互いの唇が離れると、戸惑った表情の花道がいる。
「…お、おい、酔ってんのか?」
こんなにうろたえてる花道は初めてみるかもしれない。
なんだか耳まで赤い気がする。
「…晴子さんのものにならないで」
「お前…もしかして俺が好きなの?」
「…ばか、うぬぼれすぎ。」
「…いつから?」
「…だから、ノーコメントで。」
「否定しないってことは、好きなんじゃねーのかよ?」
「…。」
花道なんかに誘導尋問されて墓穴掘ってしまいそうだ。
昔からこういうとき、急に勘が良くなるんだよなぁ。
「…わたしは友達には全然キスしていくスタイルだから。これくらいなんともないよ。」
かなり強引に言い訳してみる。
「洋平とかとも、全然できるし。」
とつづける。
「え?洋平ともこんなことしたのか?」
今度は少し悲しそうな顔になる。
そんな顔見たことなくて、きゅっと胸が締め付けられる。
「…さあ、どうかな?」
「おい、洋平とは…絶対すんなよ!」
花道は、まっすぐわたしの目をみて力強く言う。
「…なんで?」
「なんでって…。
なんでかはわかんねーけど、さっきみたいなのを…
洋平とするのはなんか嫌だ。」
ずっとだだの幼馴染だった花道が、
初めて独占欲をみせてくれたようで、わたしは素直にうれしい。
「さっきまで、好きな奴に告白しろって言ってたじゃん。
わたしに彼氏できたら、こういうこともするんだけど?」
「ぬう、それは、たしかに…」
「それも、嫌?」
「…。」
「…それって花道くん、わたしを好きって事なんじゃないの?」
うつむいていた花道が、ぱっと顔を上げてわたしを睨む。
「ちが…っ
とにかく、誰にでもするのはおかしいって事で…」
「うーん、考えておくね。」
にこっと笑ってみせると、はぁ、と大きなため息をつく花道。
「もうこいつに酒を飲ませるのはやめよう。」
と、頭を抱えていた。
・
・
・
次の日から、花道はわたしが洋平たちと話していると、必ず現れるようになった。
そして、わたしが誰かと二人きりになろうとすると…
「俺も行く!」
と言ってついてくるようになった。
「洋平と購買行くだけだし、欲しいものあるなら買ってくるよ?」
「いや、それが危ねーんだよ。お前らを二人にするのは…」
ブツブツ言いながらついてくる花道は、大きな番犬みたいだ。
「花道、最近なんかおかしくね?」
洋平がこそっと耳打ちする。
「…ね、おかしいよね。」
わたしもおかしくて吹き出しそうになるのを必死にこらえる。
「オイそこ!なに話してんだよ?」
「ふふ、何でもないよ!」
今は番犬みたいな花道だけど…
前よりはわたしのことを意識してくれてるのかな?
晴子さんにはかなわなくても…
今はまだ、この関係を続けるのもいいかもな、なんて思った。
2/2ページ