nonsense
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「三井、負けは負けだぜ。
例のヤツ、ちゃんとやれよ!」
仲間たちが、どっと大きな声で盛り上がる。
「まじかよ…。」
まさか負けるとは思わなかった。
まだ太陽が高いところにいる、昼下がり。
クラスの数人で授業を抜け出し、いつもの屋上で時間をつぶす。
学校からも煙たがられている俺たちは、暇を持て余した結果、とあるゲームをすることにした。
『ポーカーで負けたら、クラスで一番ブスな女に告白して付き合う。』
もちろんその後に、罰ゲームだったと暴露して捨てる。
あまり人道的な賭けではなかったが、まわりの奴らがすでに盛り上がっていたし、
5人もメンバーがいてまさか自分が負けるとは思わなかったから、話に乗った。
が、結果はどうだ。
俺の負けだった。
明らかに機嫌の悪そうな態度で、ゲームの企画者に尋ねる。
「で、どいつに告んだよ。」
ゲームを面白くするために、どの女を対象にしたかは秘密にされていた。
あらかじめこのゲームを思いついたヤツが紙に書いておき、誰にも見せず隠していたのだ。
「これ見てみ。」
折りたたんだ紙切れを渡される。
ゲームに参加した全員が、それをのぞき込む。
「…高橋美奈子…。」
読み上げると、皆一斉にうわーと声を上げて遠ざかる。
「って誰だよ。」
本当に同じクラスのヤツか?
名前をきいても全くピンとこない俺に、外野はヒートアップする。
「すげーブスな女だぞ、そいつ!メガネ掛けてて、髪もボサボサ。スカートも長くてよ…。
なんていうかお化けっぽいっていうか…。」
「そうそう、肌も白くて、細くて…ってそれだけ聞くといい女を想像するかもしれねーが、
とにかくおとなしくて、誰かとしゃべってるの見たことないぞ。いっつも一人なんだよ。」
正直クラスの連中なんてどうでも良くて、名前も覚えていない。
コイツらのことも、たまたまサボる時間が被るだけで、別に友達でいるつもりもない。
なんとなく一緒に過ごしているだけだ。
「ドンマイ三井~!今更やめるってのはナシだぜ!!絶対やってもらうからな!」
「ッチ。めんどくせーな。」
俺は本当に面倒くさいことになったと、ここ最近で一番力を込めた舌打ちをした。
放課後になり、クラスの奴らがバラバラと教室から出て行く。
高橋美奈子は、俺の席から一番遠い、最前列の廊下側だった。
近眼なのか、分厚いメガネを掛けていて、黒板の一番見える場所に座っている。
アイツらの言うとおり、誰とも仲が良くないようで、俺が観察し始めてから本当に一言も、人としゃべっていない。
「じゃあ三井、ちゃんとやれよ!」
「わかったようるせーな。」
こう答えはしたが、本当に告白なんてするつもりはなかった。
明日の朝適当に、したことにして話を合わせれば良いと思っていたのに…。
駅に向かう帰り道、偶然にも高橋はずっと俺の前を歩いていた。
歩きながら、文庫本を広げて読んでいる。
メガネにバサッとかかった長い前髪で、本当に文字が読めているのか心配になる。
ついつい危なっかしくて目が離せず、一定の距離を保ちながらうしろを歩いて、ずいぶん経った。
(くそ、なんでこうずっと目の前にいんだよ、コイツは…。)
目障りに感じて、追い抜かそうとスピードを上げたときだった。
前方からくる、大きめのトラック。
道路には、昨日の雨でつくられた大きな水たまりがそこかしこに。
そして、それにまったく気づかずにフラフラと本を読んでいるバカ。
…瞬時に状況判断できてしまう自分に嫌気がさした。
それよりも先に、なぜか身体が動いていた。
「危ねぇ…ッ!」
「え?」
彼女が振り返るよりも早く、俺は彼女に覆い被さる。
背中に、トラックが跳ねた泥水が大量にかかったのが、確認しないでもよくわかった。
「…。」
「あ、あの…。」
ビン底メガネが呆けた顔でこちらを見上げている。
「このバカ!どこ見て歩いてんだ!」
「えっと、本です…けど。」
「はあ?」
素っ頓狂な返事に、つい間抜けな声が出る。
どうも人をいらつかせるのが得意らしい。
「あの…もしかして…。
助けてくれたんですか?」
おそるおそる俺の背中に周り、制服の泥を確認している。
「あの、なんといっていいか…すみません。」
「いや、別に助けたわけじゃねー…。
危ねーから本読みながら歩くな。」
それだけ言って、早歩きで歩を進める。
つい勢いでバカと言ったことを謝ろうかと思ったが、格好がつかないのでやめた。
俺は学ランの上着を脱ぎ、泥のシミを確認する。
自分でもなんであんな行動を取ったのか、見当が付かない。
今日は本当にツイてないと、うなだれてため息をついた。
次の日、俺はいつも通りに家を出た。
学校に着くのはいつも2限目だ。
誰もいるはずのない通学路を歩いていると、珍しく校門前に人が立っている。
教師かと思いながら近づくと、見えたのはあのビン底メガネだった。
例のヤツ、ちゃんとやれよ!」
仲間たちが、どっと大きな声で盛り上がる。
「まじかよ…。」
まさか負けるとは思わなかった。
まだ太陽が高いところにいる、昼下がり。
クラスの数人で授業を抜け出し、いつもの屋上で時間をつぶす。
学校からも煙たがられている俺たちは、暇を持て余した結果、とあるゲームをすることにした。
『ポーカーで負けたら、クラスで一番ブスな女に告白して付き合う。』
もちろんその後に、罰ゲームだったと暴露して捨てる。
あまり人道的な賭けではなかったが、まわりの奴らがすでに盛り上がっていたし、
5人もメンバーがいてまさか自分が負けるとは思わなかったから、話に乗った。
が、結果はどうだ。
俺の負けだった。
明らかに機嫌の悪そうな態度で、ゲームの企画者に尋ねる。
「で、どいつに告んだよ。」
ゲームを面白くするために、どの女を対象にしたかは秘密にされていた。
あらかじめこのゲームを思いついたヤツが紙に書いておき、誰にも見せず隠していたのだ。
「これ見てみ。」
折りたたんだ紙切れを渡される。
ゲームに参加した全員が、それをのぞき込む。
「…高橋美奈子…。」
読み上げると、皆一斉にうわーと声を上げて遠ざかる。
「って誰だよ。」
本当に同じクラスのヤツか?
名前をきいても全くピンとこない俺に、外野はヒートアップする。
「すげーブスな女だぞ、そいつ!メガネ掛けてて、髪もボサボサ。スカートも長くてよ…。
なんていうかお化けっぽいっていうか…。」
「そうそう、肌も白くて、細くて…ってそれだけ聞くといい女を想像するかもしれねーが、
とにかくおとなしくて、誰かとしゃべってるの見たことないぞ。いっつも一人なんだよ。」
正直クラスの連中なんてどうでも良くて、名前も覚えていない。
コイツらのことも、たまたまサボる時間が被るだけで、別に友達でいるつもりもない。
なんとなく一緒に過ごしているだけだ。
「ドンマイ三井~!今更やめるってのはナシだぜ!!絶対やってもらうからな!」
「ッチ。めんどくせーな。」
俺は本当に面倒くさいことになったと、ここ最近で一番力を込めた舌打ちをした。
放課後になり、クラスの奴らがバラバラと教室から出て行く。
高橋美奈子は、俺の席から一番遠い、最前列の廊下側だった。
近眼なのか、分厚いメガネを掛けていて、黒板の一番見える場所に座っている。
アイツらの言うとおり、誰とも仲が良くないようで、俺が観察し始めてから本当に一言も、人としゃべっていない。
「じゃあ三井、ちゃんとやれよ!」
「わかったようるせーな。」
こう答えはしたが、本当に告白なんてするつもりはなかった。
明日の朝適当に、したことにして話を合わせれば良いと思っていたのに…。
駅に向かう帰り道、偶然にも高橋はずっと俺の前を歩いていた。
歩きながら、文庫本を広げて読んでいる。
メガネにバサッとかかった長い前髪で、本当に文字が読めているのか心配になる。
ついつい危なっかしくて目が離せず、一定の距離を保ちながらうしろを歩いて、ずいぶん経った。
(くそ、なんでこうずっと目の前にいんだよ、コイツは…。)
目障りに感じて、追い抜かそうとスピードを上げたときだった。
前方からくる、大きめのトラック。
道路には、昨日の雨でつくられた大きな水たまりがそこかしこに。
そして、それにまったく気づかずにフラフラと本を読んでいるバカ。
…瞬時に状況判断できてしまう自分に嫌気がさした。
それよりも先に、なぜか身体が動いていた。
「危ねぇ…ッ!」
「え?」
彼女が振り返るよりも早く、俺は彼女に覆い被さる。
背中に、トラックが跳ねた泥水が大量にかかったのが、確認しないでもよくわかった。
「…。」
「あ、あの…。」
ビン底メガネが呆けた顔でこちらを見上げている。
「このバカ!どこ見て歩いてんだ!」
「えっと、本です…けど。」
「はあ?」
素っ頓狂な返事に、つい間抜けな声が出る。
どうも人をいらつかせるのが得意らしい。
「あの…もしかして…。
助けてくれたんですか?」
おそるおそる俺の背中に周り、制服の泥を確認している。
「あの、なんといっていいか…すみません。」
「いや、別に助けたわけじゃねー…。
危ねーから本読みながら歩くな。」
それだけ言って、早歩きで歩を進める。
つい勢いでバカと言ったことを謝ろうかと思ったが、格好がつかないのでやめた。
俺は学ランの上着を脱ぎ、泥のシミを確認する。
自分でもなんであんな行動を取ったのか、見当が付かない。
今日は本当にツイてないと、うなだれてため息をついた。
次の日、俺はいつも通りに家を出た。
学校に着くのはいつも2限目だ。
誰もいるはずのない通学路を歩いていると、珍しく校門前に人が立っている。
教師かと思いながら近づくと、見えたのはあのビン底メガネだった。
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