あなただけ見つめてる
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
橘兄妹を連れたなまえが再び集積場へ向かう頃、傷どころか埃ひとつ制服に付いていない伊武は校舎の影からひょっこりと現れた。最悪の事態を想定していたなまえは安堵のあまり思わず杏の腕にしがみつく。桔平が前に進み出て伊武の肩に手を置いた。
「無事か、深司」
「はい。あいつには丁重に帰ってもらいました」
「あまり無茶はするなよ。急にどこかへ行ってしまうから驚いたぞ」
「帰ろうとしたらソイツが絡まれてるの見かけたんで、男テニがまた面倒な事に巻き込まれる前になんとかしようと思っただけです」
“ソイツ”と言ったところで伊武は目線をチラリと一瞬なまえに向ける。
その目線を受け、なまえは自身の胸の鼓動が高鳴る事に気付いてしまった。
「じゃあ、暗くならない内に帰るか!」
桔平が歩き出し、杏と伊武もそれに続く。けれどなまえの足は動くことがなくて、ふと振り返った伊武が苛立たしげに口を開いた。
「何ぼーっと突っ立ってるんだよ」
「あ、いえ、えっと……」
「早く行かないと、最終下校時刻に間に合わなくなるんだけど」
「今、行きます」
「あっそ」
それからまた小声でぶつぶつと何か呟く彼の後ろを、なまえはそそくさと着いて歩く。彼女の視線が遠慮がちに、けれどしっかり自分の背中を追っていた事など、伊武は気付く由もなかった。