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「じゃ、戸締りよろしく」
「へーい」
ブン太に投げられた鍵を受け取り、部室へ入る。
今日の練習もキツかった。幸村と真田のコンビは相変わらずやべえ。
深く息を吐きながら着替えようとして、手を止める。隣のロッカーに置きっぱなしにされていた、仁王のユニフォームの上下が目に付いたから。どうやら忘れていったみたいだ。
明日も明後日も部活あるし、家まで届けた方がいいかな。いや、流石にそれはやりすぎか。届けたい、ちょっとでも仁王と喋りたいのは山々だけど。
どちらにせよそれが、あまりにもぐしゃぐしゃだったから。ただ、畳んでやろうと思っただけだ。
本当にただそれだけ。他意は、…なかったはずなのに。
持ち上げて埃を払うと、服に付いた匂いまでが香って。
すん、と鼻を鳴らす。整髪料と汗と、他にも色々な匂いが混ざり合って不思議な匂いになっている。
だけど、不快感はない。仁王のものだからか。
むしろ、いい匂いだと思えるあたり…もう末期なんだろう。
辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
少し躊躇ったけれど、こんな機会滅多にあるもんじゃない。
だから俺は、仁王のジャージをユニフォームを脱いだ素肌の上に羽織った。
途端に彼の匂いに包まれる。
「あー…幸せ…」
思わず言葉が漏れて苦笑する。
おかしいな、匂いフェチじゃなかったはずなんだけど…
嬉しさに浸っていると、ふとユニフォームのハーパンが目に付く。
…これ、とかどんな匂いがするんだろう。
好奇心には勝てず手を伸ばす。
そうっと顔を近づけて匂いを嗅いだ。
「ぅ、あ…」
これは、やばい。凄く、やらしい匂いがする。
蒸れるから汗とそして、精液みてーな…こう、ナニかの汁の匂い。
堪らず胸いっぱいに吸い込めば、下腹のあたりがずくりと疼いた。
うわ、やべ…これは。
「勃ってるよ…」
ハハ、と再度苦笑を零す。自分でもまさかここまでとは思っていなかった。
明らかに隆起し、布の下からでも存在感を示しているそれ。
匂いだけでフルボッキかよ…マジで自分ながら引くわ。
試しに少し撫でてみれば、そこはびくりと震える。
「っん、ぅ」
吐息が漏れる。手は、止まらない。
揉み込むように動かしていたが、次第に布越しの刺激では物足りなくなる。
我慢できずにズボンとボクサーパンツを下ろした。
外気に晒されたそれは完全に勃ちきっており、先端から蜜を零している。
ベンチに座って足を伸ばし、根元からゆっくり扱き上げた。
「っふ、ぁあ…にお」
仁王の匂いを感じながら、彼を想いながらする自慰は格段に…気持ち良くて。チームメイトのハーパンを嗅ぎながら扱くなんて最低だ、とは思うけど、手は止まってくれない。
「にお、う…仁王、ぁ」
限界が近い。声に熱が籠り、手のスピードが速くなる。
「イっ、ぁ…仁王っイ――」
「何、しとるんじゃ」
熱に浮かされた脳内に響いたその声は、ここに居るはずのない、彼の声だった。
一気に頭が冴え冴えとし、息が出来なくなる。
ゆっくりと顔を上げて視線を彷徨わせる。
部室のドアの近くに、冷たい目でこちらを見据える仁王がいた。
まさか。
「あ、や…っちが」
見られていた?
彼の物をオカズにシコる、この浅ましい姿を?
「違う、ごめ…っ、仁王、」
「人の名前呼びながらオナニーしとった癖に、何が違うんかのう?」
こちらに近づいてきた仁王が、底冷えするような目で俺を睨めつける。
さっきまで優しく笑っていた、その目で。
「や、ぁ…ごめん、なさい」
重圧に耐えきれず、ぼろぼろと涙が零れる。
こんな筈じゃなかった。だけど後悔しても、もう遅い。
「いつもこんなことしとるんか?」
「ちが…これは、仁王がジャージとか忘れてってたから…それで、ぁ」
言ってから顔を青ざめさせる。
何言ってんだ、俺。更に気持ち悪がられるようなこと…
ほら、仁王が目を細めた。
「き、気持ち悪いよな…っ、ごめん、ごめんな」
「ナマエ、」
「もうしねぇ、から…悪かった」
仁王の声を遮って無理やり口角を上げてみせる。笑えている気はしないけど。
「はぁ…人の話、聞きんしゃい」
「っ!?」
ぺしり、と頭をはたかれる。
びっくりして目を瞬かせれば、ため息を吐かれた。
「別に怒っとるわけじゃなか。ただ…びっくりした、っちゅーか」
…怒って、ない?どうして?
だって俺は、あんな、あんな浅ましいことを…
続きません