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月の光がぼんやりと射し込む裏路地。古びたビルの間をひた走る。セットした巻き髪を振り乱し、高いヒールで地面を踏みつけて。
追われている。誰でもない、あの憎たらしい蝙蝠に。
どうやら“仲間”と立てた計画が漏れていたらしい。ビルを一棟まるごと燃やし尽くすという、素敵なプランが。
中に入っている施設や私を利用している組織…今回のお仲間に興味はない。私は人がたくさん入った箱を燃やすことができればそれでいい。燃え盛る炎の中、逃げ惑い・泣き叫び・助けを求める人々を眺められれば、それで。
ひたすら足を動かしながら、どこから露見したのかと思考を巡らせる。裏切り者が出たか、それとも準備する姿を見られた奴がいたのか。いずれにせよ阻止されたのは事前に嗅ぎつけられたからに違いない。流石、世界最高の探偵だ。苛立って一つ舌打ちを零す。
足が縺れ、倒れそうになるが何とか持ち堪えて。また一歩踏み出した、その時。
「――どこへ行く?」
耳元で囁く声に、背筋が粟立った。後ろから抱きすくめられたと思えば、抵抗する間もなく地面から引き上げられて。瞬く間にビルの屋上へと拉致される。
「離、せ…っ!」
太い腕を振り払い、私を攫った男――バットマンに対峙する。闇に紛れていた互いの姿が、月光を浴び濡らされて顕になった。
乱れた髪を掻き上げ、彼を睨みつける。蝙蝠男はいつもと同じ闇色のスーツ姿で、唯一見える口許には笑みを湛えていて。余裕げなそれがまた、腹立たしい。
「しつこいのよ、毎回毎回!」
「それが私の使命だ」
「何が使命!? せっかく楽しくなりそうだったのに…!」
この日のために準備していたのに、いつも邪魔されるフラストレーションをやっと晴らせると思ったのに。全て台無しだ。それもこれも全て、闇の騎士様のせい。
苛立ちが最高潮になり、衝動に衝き動かされるまま拳銃を構え、引き金に指を添える。狙いはまっすぐ心臓へ。
…命を狙われているというのに、彼は。呆れたようにため息をついた。
「やれやれ…悪い子には仕置が必要だな」
「ふざ……ッ」
「ナマエ」
息を呑んだ。マスク越しに細められた瞳があまりに冷酷な光を放っていたから。これ以上の抵抗は危険だと、今までの経験が脳内に警鐘を鳴らす。
何度も何度も、躾と称して行われる責め苦が頭をよぎる。苛まれ、辱められ、涙ながらに懇願しても決してやめてはもらえない。
植え付けられた恐怖が蘇り、震える手から銃が滑り落ちた。
一歩また一歩と蝙蝠が近づいてくる。私は青褪めて動けず、その腕の中に逆戻りとなった。ねっとりと腰を撫でるその手つきには、明らかに性的な熱が込められていて。これから執行される“お仕置き”を思うと気が遠くなりそうだった。
――しんしんと更けゆく夜。朝はまだ来ない。
BGM : 狂おしいほど僕には美しい / majiko
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