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「一緒にいるだけで幸せ」なんて有り得ないと思ってた。
相手の言動や挙動、そのすべてが愛しく思えるだなんて事も。
「……なに見てんだよ、うん」
「や、別に……」
歯切れ悪く返事をしながらも一挙一動から目が離せない。こちらを訝りながらもスプーンで皿をつつく手は止めないデイダラに釘付けだ。
信じられる? シリアルを食べているその姿すら愛おしいだなんて……。私は未だに信じられない。自分のことなのに。
「なんかお前、最近変だぞ……うん」
「そうかな。デイダラは今日もかわいいね」
私に見つめられ続けたせいか居心地悪そうなデイダラ。私は返す言葉に困って、苦し紛れに話を逸らす。逸れてなかったけど。
「かわいくねーって言ってんだろ、うん。誤魔化してんじゃねー」
そうすれば今度は不満げに口を尖らせた。やっぱりかわいい。
暁のメンバー内でも仲が良いとは言えなかった私とデイダラ。事あるごとに年下(とはいえ二歳程度だ)の彼に突っ掛かられ、それを往なしたり……たまに往なしきれず乱闘じみた騒ぎになったり。
それでも互いに慣れたのか絆されたか、喧嘩は軽口の応酬程度になり、次第にそれも減って。こうしてアジトのダイニングルームで向かい合って、仲良く朝食を摂るぐらいには仲良くなった。
私がデイダラを意識し始めたのはそれからだ。粘土の造型が上手くいった時の笑顔、任務でやらかしてサソリに怒鳴られた時のしょぼくれ顔、喧嘩したときの怒った顔……全てがきらきらしく見える、と思ったときにはもう手遅れだった。
「な、なんだよ……うん」
「いや、好きだなぁ、と思っ……」
――あ。
思わず溢してしまった言葉にはっとして口を抑えるが、もう遅い。
熱い顔はきっと朱に染まっている。言い訳すらできず、けたたましい音と共に椅子から立ち上がり、脇目も振らずに走り出す。三十六計逃げるに如かずとはよく言ったものだ。
ああ……でもこれからどんな顔をして彼に会えばいいんだろう。寝惚けてたとか思っててくれないかな……。
私は廊下で頭を抱えながら、とぼとぼと自室へ戻った。
一人残されたデイダラは唸り声を上げた。脳内でリフレインされる彼女の言葉と、赤く染まった驚きの表情。
やり場のない思いをスプーンを握りしめて発散しようとするが、失敗。頬が火照り、耳まで真っ赤になっていく。
「……どう考えてもお前の方がかわいいだろ、うん……!」
確かに恋だった 様
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